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相手になにかして欲しい!と思ったらこの手法だ!という研究の話


  

他人を説得する方法!」みたいな話はたくさんあって、「影響力の武器」とか「逆転交渉術」あたりが定番でしょう。こないだパレオチャンネルのほうでも「親戚がワクチンを打ってくれないので説得したいのですが……」みたいなご質問を頂いたりしまして、根強いニーズがあるんだろうなぁとか思うわけです。

 

 

で、ヨーク・セント・ジョン大学などの新しいデータ(R)は、「相手を説得したいならこの方法でしょ!」って話が紹介されてておもしろかったです。

 

 

まずは研究の概要をざっくりメモって起きますと、

 

  1. イギリスで働くセールスマン(通信事業系)の人たちに協力をお願いする
  2. みんなが1カ月間に行った飛び込みの営業電話150件を記録する
  3. すべての通話をチェックして、「どんなフレーズを使った場合に営業が成功しやすいか?」を分析する

 

って感じです。飛び込みの営業電話といえば断られまくるのが当たり前ですけど、それでも成功する電話はなにが違うのかを調べたわけっすね。

 

 

でもって、分析の結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • 説得に成功したセールスマンは、とにかく「ノー」と言えないような言葉づかいを徹底している

 

みたいな感じです。これだけだとよくわからないので、文中の例を上げておくと、こんな感じです。

 

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セールスマン:こないだまた連絡しようと約束したのでお電話さしあげました!こないだの電話は12月の下旬ぐらいで、私たちがホスピタリティの専門家として、いろんなホテルやレストランと取引をしていることをお伝えしましたよね!(※ まずは自分の会社がホスピタリティの専門家であるって点を強調する)

:あー

セールスマン:それで今回は、弊社のエキスーパートと時間を作って、あなたのお手伝いをしたいと思ってるんですよ(※あくまで「自分が思ってるだけ」ってスタンスで話しているので、相手は「ノー」と言いづらい)

:いいですね(※ これは別に相手の申し出を受けたわけではないが、なんとなく承諾したような雰囲気が生まれる)

セールスマン:なにかご都合のよいミーティングの日とか頭に浮かんでますか?(※ いきなりスケジューリングに入って、相手が承諾したような前提で話を進める。また、時間を聞くだけなので、商品を売ろうとしている印象は避けられる)

:えーと、次の木曜とか……

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というわけで、まずは前置きの中で「自分たちはの交流の歴史」をさらっと述べつつ、ついでに「自分がホスピタリティの専門家だ!」ってのをぼんやりとアピールし、さらには「自分はこうしたいんですよー」と言うだけの話法で相手の「ノー」を封鎖しつつ、さらにはいきなりスケジュール設定を切り出すことで「もう私たちは会う前提ですよね!」ってことで話を進めていくわけですな。もちろん、最初からセールスに否定的なお客さんには通じないでしょうが、ちょっと迷ってる人なら背中を押されるでしょうね。

 

 

ちなみに、この原文では「ミーティング」の前に「the」がついてまして、これによって「このミーティングは漠然としたものじゃなくて、私とあなたが会うミーティングですよ!」って雰囲気をかもし出してるんだそうな。細か!

 

 

研究チームいわく、

 

ここに登場するセールスマンは、見込み客がミーティングに向けて特定のスタンスを取る機会を制限することで、ネガティブな結果のリスクを最小限に抑えている。彼らは見込み客の行動を変えようとしているのではなく、その代わりに「不一致の反応を出すのが難しくなる」ように受け手を管理する。

 

とのこと。セールスの場面では相手の行動をコントロールをするのは無理だけど、会話の持っていき方によって相手の否定的な封じるわけですね。これって恋愛の世界とかでもよく見かける話法ですな(いきなり「どのレストランに行く?」ってところからスタートして、デートを前提にしたりとか)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。