今週半ばの小ネタ:HIITで人生の質が上がる、イチゴでアルツハイマー病のリスクが減る、オメガ3で若くなる
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
HIITで人生の質が上がるんじゃないか?説
このあいだ「HIITでメンタルが改善する!」といった話を書いたわけですが、新たな研究(R)でも「HIITの実践で人生の質が向上した!」と結論づけていて良い感じでした。「HIITってなに?」って方は、くわしくは「ランニングより体力がつきまくる!いまさら聞けない『HIIT』超入門」をご覧ください。
これはニコシア大学などの研究で、35人の男女を3つのグループにわけております。
- 週3のHIITを行う(60秒の全力サイクリングを10セット)
- 週2のHIITを行う
- 運動をしない
そのまま、みんなに8週間のHIITを続けてもらって、最後にみんなのメンタルをチェックしたんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 週3でHIITをやったグループは、最も人生の質が向上した(+10.5)
- 週2でHIITをやったグループも、人生の質が向上した(+7.7)
- HIITをしなかったグループは人生の質がほとんど変化しなかった
- HIITをやったグループは、みんな運動の楽しさを感じていた(7点満点で6点ぐらい)
とのこと。HIITってのは「自分の人生は良いなぁ」と「自分は良い人生を送れているなぁ」と思わせるような働きがあるらしい。なんでも、HIITは短時間でキツい運動を行うため、「おれはやったぜ!」みたいな感覚を得やすく、それが自信につながって人生の質が上がるらしい(健康が改善するのも大きいんでしょうが)。
このメカニズムを見ると、おそらくHIITじゃなくても、キツめな運動を定期的に続けていれば同じような効果は得られそうっすね。とりあえず、人生の質の改善のためにもキツい運動は効くかもよーってことで。
イチゴでアルツハイマー病のリスクが減るんじゃないの?説
このブログではベリー類をめちゃくちゃ推してまして、ポリフェノールが豊富なアンチエイジングフードとして推奨しております。特にブルーベリーは優秀なんですよねー。
でもって、新しい研究(R)はイチゴに関する話で、まずは結論から言ってしまうと、
- イチゴで脳の劣化を予防できるかも?
みたいになります。イチゴにふくまれるペラルゴニジンっていう生理活性物質は、脳内のタウタンパク質のもつれを少なくしてくれるかもしれないんだそうな。タウタンパク質のもつれってのはアルツハイマーの兆候のひとつでして、こいつが少なくなるってのは、なかなか良いニュースなんですよ。
続いて研究チームのコメントを紹介しておくと、
我々は、ペラルゴニジンの抗炎症作用が、神経炎症全体を減少させ、サイトカインの産生を減少させるのではないかと考えている。
ペラゴニジンが高齢者の脳の健康維持に役立つかは、さらなる検討が必要だが、イチゴを食べるぐらいなら、誰もが食生活に簡単に取り入れられるだろう。
とのこと。サイトカインってのは体内の炎症をコントロールするタンパク質で、脳に炎症が起きてしまうと、アルツハイマーにつながったりするんですよね。
で、死後に脳を検査した男女575人の食事日記を分析したもので、みなの普段のライフスタイルを調べたところ、イチゴを多く食べていた人ほど脳内のタンパク質のもつれが少なかったんだそうな。まー、食事日記を使った観察研究なので、どうにも信頼性は低いところがありますけど、ペラルゴニジンにはちょっと注目しておきたいっすね。
オメガ3は「生物学的な年齢」を若くなるんじゃない?説
魚の油で体が若くなるのでは?って話(R)が出ておりました。これはポーランド科学アカデミー遺伝学・動物バイオテクノロジー研究所などの調査で、こちらも結論から言いますと、
- オメガ3脂肪酸でテロメアの劣化が防げる!
みたいになります。テロメアってのは「不老長寿メソッド」でも書いたとおり染色体の両端にある保護キャップみたいなもので、老化するにつれて短くなる傾向があるんですよ。これが短くなると、細胞が複製される時に、細胞の染色体が互いに融合しちゃったり、癌が起きやすくなってしまうんですな。
でもって、テロメアってのは、酸化ストレスや炎症の影響を強く受けるので、野菜や運動みたいに健全なライフスタイルを送ることで修正が可能だったりするんですね。その点で、オメガ3脂肪酸は炎症をやわらげる作用が大きいため、テロメアの劣化を防げても不思議ではないんですよ。
ということで、研究チームは、過去に行われた7つの観察研究をチェックしたうで4つのRCTを実施。すべてをまとめて、以下のような知見をピックアップしてくれております。
- オメガ3脂肪酸はテロメアの改善に役立つ可能性がある。ただし、このような結果は単に相関を示しているだけで、因果関係を示すものではないので注意が必要ではある。
- 研究チームが行った調査では、母親とその乳児、慢性腎不全患者、軽度認知障害に苦しむ高齢者、健康で太り気味の中年および高齢者など、さまざまな人々を対象にした4つの試験を実施。1日1グラム強から4グラムのオメガ3脂肪酸を飲んでもらったところ、「効果が期待できる!」と思われる結果もあれば、「効果が認められないもの!」という結果もあり、どうにも結果はまちまちだった。
そんなわけで、オメガ3のサプリにはテロメアを保護する可能性があるものの、実際にテストを行ってみたところ、効果があるともないとも言えない結果になってしまったんだ、と。
このような食い違いが起きる理由はよくわからんのですが、オメガ3の種類、由来、投与量、投与のタイミング、被験者の健康状態などで意味合いが違ってくるのかもですな。実際、「オメガ3を摂り過ぎると一気に老化が速まっちゃう」なんて話もありまして、注意が必要な案件だとは申せましょう。
とはいえ、研究チームはオメガ3に期待を寄せてまして、
オメガ3脂肪酸を使用することでテロメアの減少を抑え、その結果、早期老化に対抗し、加齢性疾患のリスクを低減させる減少には、大きな期待を抱かせる。
とのこと。まー、この研究については、サンプルサイズも小さいし、研究で主に使用されている白血球のテロメア長は、他の組織のテロメア長とは異なる可能性もあるんで、まだまだ予断は許せない感じではあります。
また、このブログで過去にも指摘したとおり、市販のオメガ3サプリは酸化レベルが非常に高いって報告も出てますので、個人的にはサプリはあまり推奨しておりません。できるだけ魚を食べていただく方向でよろしくお願いいたします。