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今週半ばの小ネタ:HIITの脳機能アップ効果、瞑想で腸の機能を改善、読書の能力はどこまで 遺伝に左右される?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

HIITの脳機能アップ効果がすごいかもしれない件

「HIITは脳にめちゃいいかも!」と思わせるデータ(R)が出ておりました。HIITは当ブログの頻出ワードで、よく知らない方は「ランニングより体力がつきまくる!いまさら聞けない『HIIT』超入門」をどうぞ。簡単に言えば、「超キツい運動を短時間やろうぜ!」っていう運動法のことです。

 

 

この研究では、参加者を何日か研究室に呼んで、ある日は「エアロバイクを90分間こぐ」という軽いワークアウトを行い、別の日には、「エアロバイクで6分間のHIIT」を行ったんだそうな。そのうえで、各運動のあとにみんなのBDNFを計測したとのこと。BDNFも当ブログの頻出ワードで、くわしくは「頭を良くする物質「BDNF」の量を増やすための運動ガイドライン」をご覧ください。超ざっくり言えば、脳の認知や記憶を向上させてくれる、ありがたい物質です。

 

 

でもって、結果について、研究チームはこんなことを言っております。

 

長時間(90分)の軽いサイクリングは、摂食・絶食に関係なく、体内のBDNFを増加させた。(中略)6分間の高強度サイクリングインターバルは、長時間の低強度サイクリングよりも、BDNFのあらゆる指標を4~5倍も増加させた。

 

ということで、わずか6分間のHIITによって、90分間の有酸素運動よりも大量のBDNFが放出されたらしい。4〜5倍ってのはすごいもんですねぇ。

 

 

この結果をベースに、研究チームは、

 

6分間の激しい運動は、脳を健康に保つのに役立ち、低強度の運動よりも加齢に伴う神経変性のリスクをより効率的に相殺する可能性がある。

 

と推測しておられます。まー、これだけBDNFが急増するなら、確かに「脳を守るためにもHIITはやったほうがいい!(かも)」とは言えるでしょうね。

 

 

ちなみに、この研究チームは、HIITと断食を組み合わせると、さらにBDNFが増えるかもしれないと考えてるそうで、今後もそのあたりを調べていくつもりとのこと。こりゃ期待できるぜ……。

 

 

 

 

瞑想が腸の機能を改善するかもね!

瞑想が腸の機能を改善するかもね!」という話(R)が出ておりました。このブログではおなじみのマインドフルネス瞑想が、腸内最近を豊かにしてくれるかもしれないというんですよ。

 

 

こちらは上海精神衛生センターのテストで、チベット仏教の僧侶56人に協力をお願いして、みんなの糞便サンプルを収集。これの腸内細菌の遺伝子を調べ、瞑想をしない人との腸内細菌を比べたんだそうな。もちろん、僧侶と一般人は、年齢、血圧、食生活をマッチングさせております。

 

 

で、結果はこんな感じです。

 

  • 長期的に深い瞑想を行っている僧侶ほど、腸内細菌叢が充実している。

 

不思議なもんで、瞑想の経験が長い僧侶ほど腸内細菌が豊かだったらしいんですよ。研究チームいわく、

 

僧侶の便サンプルでは、バクテロイデーテス(俗に言う痩せ菌)が有意に濃縮されており(29%対4%)、プレボテラも豊富に含まれ(42%対6%)、メガモナスや フェーカリバクテリウムも大量に含まれていた。

 

長期的な伝統的チベット仏教の瞑想は、心身の健康にプラスの影響を与える可能性がある。(中略)僧侶の微生物叢が充実していることは、不安、うつ、心血管疾患のリスク低減と関連し、免疫機能を高める可能性がある。

 

ってことで、理由はよくわからんですが、瞑想をしてる人は腸内細菌が整ってる傾向があったらしい。まぁ小規模な試験だし、因果関係も謎な話ではありますが、マインドフルネス瞑想によってストレスが減り、そのおかげで腸内細菌がダメージを受けずに済む可能性はあるのかなーとか思ったりしました。

 

 

ちなみに、研究チームは、「仏教僧でなくても、定期的に瞑想をしている人々にも同じ効果が得られるかも?」と推測しておられますが、これもまだ謎ですね。とりあえず、お腹の調子をよくするためにも瞑想はいいかも?ぐらいに思っておくといいでしょう。

 

 

 

 

読書の能力はどこまで 遺伝に左右されるの?のメタ分析

読書の能力にはどこまで遺伝が重要なのか?」ってのを調べた、メタ分析(R)が出ておりました。これはオハイオ州立大学などの調査で、135人の一卵性双生児と、179人の二卵性双生児を対象に、「読書スキルはどこまで遺伝に左右されるか?」を調べたもの。具体的には、参加者が幼稚園児の時点で90分のリー ディングテストを行ったうえで、それから2年ごとに追試を行ったんだそうな。双子のテストの成績を比べて、その成績の伸びを遺伝で説明できる部分と、環境要因で説明できる部分を統計的に分析したわけですね。

 

 

その結果、どんなことがわかったかと言いますと、

 

  • 単語と文字の識別については、遺伝はテスト結果の約3分の1を説明し、環境は3分の2を説明した。
  • 文字の認識スピードについては、遺伝が4分の3を占めた。

 

って感じだったそうです。ここでいう「環境」ってのは、親の子育てのし方、読み聞かせの量、住んでいる地域、栄養、学校での指導など、子どもたちが経験するすべてのことを指しております。

 

 

で、これを見ると、「読書って生まれつき決まるとこが大きいのか!」みたいな気になりますが、実際の数値を見るとそうでもないようで、

 

  • 「読解力の伸び」に関しては、環境の方がはるかに重要だった

 

だそうです。トレーニングなどで成長する読解力については、ほぼ完全に環境が成長をになってまして、読書における音の認識については成長の約80パーセントが環境によって説明されたんだそうな。

 

 

研究チームいわく、

 

読解力のスタート地点や、遺伝や環境が初期能力に与える影響にかかわらず、読解力の発達の速さや遅さには環境が影響する。

 

とのことで、読書の能力については、もちろん遺伝の重要性は無視できないながらも、環境を整えるほうが大事かもしれないっすね。大人でも同じような傾向が出るかは不明ですが(遺伝率は大人のほうが高いことが多いんで)、個人的には良い話かなーと。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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