このブログを検索




年を取ったら筋トレのやり方は変えるべきか?問題

  


年齢を重ねるといろいろなことが変わってくるもんでして、テレビの音量がどんどん上がったり、階段で息が切れはじめたり、昔より回復に時間がかかったりとか、どうにも困ってしまうわけです。

 

その中でも、私とご同輩からよく聞かれるのが「筋トレのやり方は年齢で変えるべきか?」って問題であります。「年を取っても若い頃と同じようにバリバリ筋トレやっていいのか?」「それとも、年を取ったら関節に優しい運動にシフトすべきか?」といった疑問っすね。

 

ここは個人的にも気になる問題なんですが、幸いにも近年のメタ分析(R)がかなり明確な答えを出しつつあるので、そのへんをざっくりまとめていくことにします。

 

で、「加齢と筋トレ」に関して理解するために、まず前提として「サルコペニア」って現象を押さえておきましょう。これは、加齢によって筋肉の量と機能が落ちていくことを指す医学用語で、だいたい60歳を過ぎたあたりから年間3%ぐらいの筋肉が失われていくというデータがあったりします。

 

このサルコペニアの主な原因のひとつが「アナボリック・レジスタンス」だと言われてまして、こいつは運動やタンパク質摂取による筋タンパク合成の反応が鈍くなる現象のことです。簡単に言うと、若い人は、筋トレしてプロテインを飲めばしっかり筋肉が作られるんだけど、高齢になると「同じ刺激」でも筋肉が増えにくくなるわけですね(R)。

 

実際、「年齢を重ねると筋肉痛が長引く」とか「疲れが抜けない」みたいな話はよく聞くところでしょう。生理学的にも、加齢によって筋繊維の再構築や修復の効率が落ちることがわかってまして、それならば身体の変化に合わせて筋トレも変えていくべきじゃないかと思ってしまうわけです。

 

では、高齢者は筋トレの方法を変えるべきかってことなんですが、結論から言えば、「筋トレそのもののやり方は若者と大きく変える必要はないが、量(ボリューム)は少なめでOK」という感じになるんじゃないでしょうか。と言いますのも、最近の研究を見ていると、「トレーニングの基本原則は年齢によって大きくは変わらない」ものの、一部の変数については、ちょっとした工夫が必要かも?って感じなので。

 

ここらへんを確認するために、いまんとこどんな研究があるのかを見てみましょう。

 

 

1. ボリューム(週あたりのセット数)

一般に、若者の筋肉は「週あたり20セット前後で最大になる」とされてるんだけど、2024年のメタ分析(R)だと、65歳以上の被験者を対象に「週13セット以上 vs 未満」で比較したところ、筋肥大への効果に明確な差はなかったらしいですよ。

 

さらに、2025年のネットワーク・メタ分析(R)(151試験、6,000名以上)によりますと、高齢者は低ボリューム(おおよそ週30セット=全身トレ)の方が長期的には効果的かも?とすら示されてたりします。こうしてみると、高齢者では週あたり1部位あたり12〜13セットくらいが効果と持続可能性のバランスが取れてて良いのかなーと。

 

 

2. ロード(重量)

「高齢者は軽い重量でやった方がいいのか?」という話ですが、筋力向上には高負荷(1RMの80%前後)が効くのは間違いないところ。しかし、筋肥大に関しては負荷の違いによる差は少なく、ボリュームと追い込み度(セットをどれだけ限界近くまでやるか)の方が重要とされております(R)。

 

なので、「筋力を上げたいなら高重量」「筋肉を増やしたいだけなら軽くてもOK(でもちゃんと追い込む)」という考え方が良さそうっすね。

 

 

3. 頻度(週のトレーニング回数)

続いて筋トレの回数ですが、NSCAのポジションスタンド(R)では、週2〜3回の筋トレが高齢者にも推奨されています。実際に、サルコペニアの高齢者を対象にした2025年のメタ分析(R)では、週3回の筋トレが週2回よりも握力や筋量の改善に効果的だったと報告されてますんで、このあたりの知見を踏まえると、仮に1部位あたり週12セットを目指すなら、

 

  • 週2回で各6セットずつ
  • 週3回で各4セットずつ

 

って配分が現実的かもしれませんな。

 

 

ということで、全体としては「高齢者はそこまでボリュームはいらないよー」って感じですが、その他にも気をつけたいポイントがあるので、最後にそこを見ておきましょう。高齢者の方は、筋トレの際に以下の点にも気を配っておいてくださいませ。

 

  • セットの追い込み度:「限界までやる vs 限界手前で止める」のどっちが良いかについては、まだ決定的な差は見つかっていないので、あんま考えないでOK。ただ、1セットの負荷が軽いなら「限界まで追い込む」、重いなら「少し余裕を残してもOK」ぐらいの感覚で良さげ。

 

  • 継続性(アドヒアランス):どんなに科学的に優れたプログラムでも、続けられないと意味がないのはここでも同じ。その点で、高齢者は、「時間がない」「ほかにやりたいことがある」「金銭的な負担」といった理由で継続率が低くなる傾向があるので、自分にとって「楽しめる」「負担が少ない」「やった後に気分が良い」メニューを探すのが、なにより重要になりそうっすね。

 

 

ということで、ここまでの話をまとめると、

 

  • 加齢により筋タンパク合成の効率は落ちるが、筋トレの効果はしっかりある

  • 高齢者は若者より少ないボリュームでも十分な効果が得られそう
  • 筋力アップには高重量が有効だが、筋肥大は低重量でもOK

  • トレーニング頻度は週2〜3回が理想

 

って感じですね。年を取ってからのトレーニングは、やり方さえちょっと調整すれば、少ない量でしっかり成果を出せるわけですから、ある意味でおトクでいいのかもですなぁ。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM