「断食すると宿便が出て健康に!」は都市伝説
近ごろ、某ブログで「断食すると宿便が出て健康に!」って記事を見かけて驚きました。宿便が都市伝説だってのはいまや常識だと思っていたので。
どうやらネタ元は甲田光雄医師の本で、このなかに「宿便は万病のもと!」なる主張がなされているみたい。腸の壁にこびりついた便が毒素を放って、体に悪影響をおよぼすって理屈。
が、主流の医学では「宿便」はほぼ完全に否定されてまして、2012年11月放映の「ためしてガッテン」によれば、
便秘で悩まされている方の大腸を、内視鏡で調べてみると・・・大腸の中はとてもキレイでした。
しかも専門家によると、皆さんが気にするような“宿便”は通常ありえないとのこと。
大腸の壁は、常に粘液が分泌されているため、便がこびりつきにくい上、細胞の入れかわりがとても早いので、便が壁にいつまでもこびりつき続けることはないと考えられるそうなのです。
とのこと。この番組に登場された大腸肛門病消化器内視鏡専門医の黒田敏彦氏も、「1万人以上の腸を見てきたけれど、いわゆる「宿便」のある人はいなかった」と明言されておりました。大腸壁は粘膜がガンガンに入れ替わってまして、便がこびりつくスキはないわけですね。
ところで、Amazonのレビューには、
「宿便」といえばその存在に疑問を抱く人もいるでしょう、私自身も当初は半信半疑でした。しかしいざ断食を実践してみると「食べないのにとにかく出る、ものすごく沢山出る」という有様だったので、もう信じないわけにはいきません。
なんて体験談もありますけども、そもそも便の大半は大腸からはがれた粘膜でできてまして、食事をしなくてもお通じはあるんですよね。
ちなみに、西洋医学による宿便の定義は「2〜3日出てこない便」のことで、要は便秘と同じ。(1) 当然ながら便秘は体に悪いわけですが、断食が腸内環境にいいって主張も誤りでして、腸内細菌研究の第一人者である辨野義己氏いわく、
断食で胃腸を休め、腸内環境を改善する、という考えがありますが、腸は自律神経で動く臓器です。つまり、断食しても腸が休まることはないのです。腸内環境をよくするには、むしろ積極的に腸を動かしてあげることが大切なのです。
また、断食によって、食べかすを腸に送り込まないようにすると、腸内環境は悪化します。腸のなかの食べかすがなくなると、腸内細菌は腸粘膜を分解し、壊してしまうこともあります。
「腸をダマせば身体はよくなる」より
とのこと。断食しようが腸は休まらないんですねぇ。
もちろん、プチ断食がダイエットやアンチエイジングに効果があるのはまず間違いないところですが、それはあくまでも宿便とは関係のない話。まどわされないようにしたいものです。