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「ココナッツオイルはホルモンバランスを崩すから使ってはいけない!」はどこまで本当か?

Coconut

読者さんから、ココナッツオイルのデメリットに関するご質問をいただきました。要点を抜粋しますと、


ネットで「ココナッツオイルは危ないから使ってはいけない」という記事(1)を見ました。かなり怖くなっています。どう考えればいいのでしょうか?

とのことです。


で、実際に記事を拝見しますと、

ココナッツオイルなどに含まれる5αリダクターゼを阻害する成分は、テストステロンからジヒドロテストステロンへの代謝を乱します。もしこの代謝を阻害し、著しくジヒドロテストテロンの産生を遮断してしまうと、生理学的に大きな変化を見ることになってしまうでしょう。

性ホルモンが正常に働かなくなると、性分化疾患(両性具有者)、性同一性障害、精子減少などさまざまな症状や事態が考えられるのです。

とのこと。なかなか難しそうな話ですが、要するにココナッツオイルは男性ホルモンの働きを乱すから危険なんだ、と。確かに、ジヒドロテストステロンは全身に活力を与える大事なホルモンでして、このへんのバランスは非常に大事であります。


実際のところ、ココナッツオイルが5αリダクターゼを阻害するって論文もいくつかありまして(3,4)、この記事の前提には一理ある感じ。


ただ、おもしろいもんで、5αリダクターゼを阻害する成分って、ココナッツオイルのほかにも山ほどあるんですよね。代表的なのは、

  • 白米(5)
  • 緑茶(6)
  • タンパク質(7)
  • ビタミンE・D(8)
  • 大豆(9)
  • γリノレン酸(10)
  • αリノレン酸(11)
  • オレイン酸(12)

などなど。つまり、白米と大豆製品と緑茶の消費量が多い日本人は、昔から男性ホルモンが乱れまくっててもおかしくないわけですが、現実的はそういった事態にはなっておりませんで。他の飽和脂肪酸とくらべてみても、ココナッツオイルのほうが5αリダクターゼを阻害しやすいってデータもありませんしねぇ。


もっとも、ココナッツオイルは、オリーブオイルなどに比べてまだ研究の歴史が浅いもんで、今後の臨床試験ではデメリットが見つかる可能性もあり得るかも。ただし、スリランカや狩猟採集民を対象にした疫学研究(13,14)では、これといった悪影響は見つかってないようで、いまのところココナッツオイルに有利なデータのほうが多い感じではあります。


まぁ、確かに、いまの「ココナッツオイルは万能薬!」みたいな扱われ方には違和感がありますし、まだ臨床データがない段階で「アルツハイマーに効く!」とか宣伝しちゃうのはどんなもんかと思いますけども、かといって無闇に怖がるのもなーと思う次第。個人的には、今後も1日に小さじ1〜2杯ぐらいの量を使っていく予定であります。


credit: Phú Thịnh Co via FindCC
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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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