科学的に正しく「不安の良さを活かす」ための3つのポイント
誰でも「不安」にはなりたくないもんですが、不快な感情を避けてばかりもいられないのが現実であります。
実際わたしも不安傾向が強い性格で、そのせいでマインドフルネス瞑想や認知行動療法を実践してるわけですが、やはり上手くいかないときもあるわけです。そんなときに、わりと手っ取りばやく効果が出るのが「本当は不安は良いものなんだ!」と思い直すってシンプルな方法。
その効果は実験でも確認されてまして、2013年のハーバード論文(1)によれば、不安なときに自分をリラックスさせようとしてもムダで、「不安は自分がやる気になってる証拠!」と言い聞かせたほうが、人前で行うスピーチの出来がよくなったとか。ネガティブな感情を上手い方向に解釈するのが大事なわけですね。
ちなみに、アフリカやインドの人たちは、統合失調の症状を「神の声だ!」と解釈するため、西洋人のように「誰かが俺の悪口を言ってる!」といった妄想に取りつかれずにすむんだそうな(2)。これも解釈の重要さを示す一例っすね。
ただし、なんの根拠もなく「不安は良い!」と思い込むのは無理なんで、やっぱり科学的な証拠は必須。いまの時点でデータが多い「不安のメリット」を以下にならべておきます。
1 不安は決断の能力を激しく高める
もっともデータ量が多いのが「不安と決断力」に関する研究(3)。不安傾向が強い人ほど上手くリスクを避け、最終的にはより多くの利益を得やすいことが、いろんな実験で明らかになってるんですな。
これは、不安のおかげで「もっと周辺情報を集めなきゃ!」って気分が高まり、結果としてより客観的な選択ができるのが原因。研究者いわく、
不安は状況に適したモチベーションを高め、わたしたちの選択と行動をより良い方向に導いてくれる。これは、しばしば見過ごされがちな事実だ。
とのこと。もちろん一か八かの決断を迫られる場面では逆効果なこともありましょうが、だいたいの場面においては不安が高まったほうが良い選択ができる可能性は高いわけですね。ほかにも、不安が強い人ほど交通事故で死なないとか(4)、不安な投票者ほど選挙では良い選択をするなんてデータ(5)もありまして、なかなか面白い研究分野であります。
2 不安な人ほど実は本番に強い
不安には集中力や警戒感を高める機能があることが、多くの研究でわかっております。そのおかげで空気を読む力が高まったり(6)、予期せぬ事態にすばやく反応できるようになるんですね(7)。
また、不安な人ほど本番前の準備と練習をくり返す傾向が高く、実は楽観的なタイプよりも面接やテストには強いことも明らかになっております。不安のせいで事前の準備が万全になり、さらに本番中は不安のおかげで危機回避能力が高まるため、事態がスムーズに進むわけですね。
3 不安は「知性が高い」証拠
頭が良い人ほどクールで物事に動じないイメージもありますが、実際は不安を抱きがちな人ほど知性は高め。ここ数年でも、「不安障害を持つ人ほど知性を計るテストの成績が良い」って結果がいくつか出ております(8,9)。とくに不安が強い人は、言葉を操る能力が高いらしい。
その理由は、知性が高い人は未来の出来事を考える能力が高いから。当然、悪い未来のイメージも具体的に思い描けるため、そのぶんだけ将来に対する不安も増しちゃうんですな。どうしても不安は知性につきものなわけです。
目指すべきは「健全な神経質」
というわけで、不安の代表的なメリットを見てみましたが、そのうえで目指したいのが「健全な神経質」であります。
これはロチェスター大のニコラス・チュリアーノ博士が提唱する考え方で、不安と誠実性を兼ね備えた人ほど体内の老化レベルが低い傾向があるんだそうな(10)。つまり、
- 不安が引き起こす警戒機能が トラブルを未然に防ぐ
- 不安によるストレス反応を誠実性がやわらげる
って感じで、不安のいいとこ取りができるわけですね。ちなみに、誠実性に関しては、ある程度トレーニングで鍛えられることがわかってますんで、不安のメリットを活かすべく精進していきたいところであります。