「牛乳を飲むと骨がスカスカの骨粗しょう症になる!」の嘘
牛乳と発がん率についていろいろ書いてたら、今度は骨粗しょう症に関するご質問をいただきました。
牛乳についての記事、面白かったです。ただ牛乳については、ほかにも骨粗しょう症の原因になるという意見を見かけますが、これについてはいかがお考えでしょうか?最近も、ハーバードの研究で牛乳を飲むと骨折のリスクが上がるといった記事を見かけたのですが。
とのこと。「牛乳で骨粗しょう症に!」という話は、 確かに昔からありますねー。日本では「病気にならない生き方」で広まった説かと思います。
骨折率が上がるのはタンパク質が原因?
著者の新谷弘実医師によれば、実は牛乳には体内のカルシウム量を下げる作用があり、その結果として骨がもろくなっちゃうんだとか。恐ろしい話ですねぇ。
この説のネタ元は、1997年のハーバード論文(1)。7万人以上の女性を12年にわたって追跡調査した研究で、新谷氏いわく、この論文に「たくさん牛乳を飲む女性は骨折のリスクが1.45倍に上がる」と書かれているんだとか。
で、確かにこの論文には、
- 牛乳を1日2杯以上飲む中年女性は、
- 股関節骨折のリスクが1.45倍!
- 前腕骨折のリスクが1.05倍!
といった傾向が出ております。ただし、このデータは、あくまで34~59才の間の女性に限った話。10代の女性の場合は、
- 牛乳を1日3杯以上飲むと、
- 股関節骨折のリスクが0.53倍!
- 前腕骨折のリスクが0.96倍!
といった予防効果も出ているんですよ。おもしろいですねぇ。
こういった現象が起きる理由として、研究者は「タンパク質のせいじゃね?」との仮説を立てております。一部を引用すると、
乳製品のカルシウムが骨折リスクを高めるという証拠はない。しかし、乳製品を多くとる女性は、同時にタンパク質の摂取も多い傾向があり、そのせいで骨折が増える可能性はある。なぜなら、タンパク質は体外に排出されるカルシウムの量を増やすからだ。
みたいな感じ。つまり、乳製品をよく食べる女性は、同時に肉や卵などからもタンパク質をとってるケースが多く、そのせいで体内のカルシウムが減る傾向があるんじゃないか、と。
もちろんこれは仮説に過ぎませんが、少なくともこの論文が「牛乳が骨折の原因!」とは言ってないのは間違いなし。あくまで「牛乳が骨折の予防になるってのはウソだよ」と主張してるだけなんですね。
牛乳を飲むと背が高くなるから骨折が増える
ちなみに、この論文の研究者は2014年にも似た研究(2)をしてまして、国内のメディアでも取り上げられたりしてました(3)。
アメリカのハーバード大学が10万人近くの男女を対象に行なった22年間の調査の結果、同大学の研究チームは、10代で一日にグラス1杯の牛乳を飲むごとに、大腿骨頸部骨折リスクが9%増加するという衝撃的な発表をしています。
が、これまた研究者の意図が正しく伝わってないケースかと思います。論文の一部を引用すると、
子どもの頃にたくさん牛乳を飲むと、骨密度が増えて身長も高くなりやすい。しかし高身長は、大人になってから大腿骨頸部骨折のリスクを増やす重要な要素なのだ。
これはコーホート研究からも裏付けられた事実で、身長が1センチ伸びるごとに骨折のリスクは5%高くなる。
みたいな感じ。つまり、
- 牛乳を飲む
- 背が高くなる
- 転びやすくなる
- 足を骨折!
みたいな流れであります。この説が正しいかはまだ不明ですが、どちらかといえばハーバードの研究者は「牛乳を飲むと骨が強くなる説」のほうを支持してるわけです。
まとめ
そんなわけで、ハーバード大は「牛乳で骨粗しょう症になる!」とは言ってないし、牛乳が悪いとも考えてないんですよーって話でした。
以前にも書いたとおり乳製品にはメリットとデメリットの両方がありますんで、お好きな方は、同時に大量の野菜とフルーツをとっていただければと思います。