甘酒が美容と健康に効くとはとても思えない件
甘酒に関するご質問をいただきました。
最近甘酒を勧められ、気になっています。麹のみで砂糖やアルコールが入っていないタイプの物もあるようですが、高い糖質に勝るメリットはあるのか分からず手が出せません。
とのこと。確かに甘酒は流行ってるみたいですねー。
ってことで、ざっくりネットで甘酒の効能を調べてみたところ、
- 病院の点滴と同じぐらい栄養価が高い!
- 100種類の酵素でダイエットに!
- 必須アミノ酸がすごい!
- 食物繊維でお腹の調子が改善!
- コウジ酸で美白効果が!
みたいな主張が代表的っぽいですね。甘酒の成分については「日本食品標準成分表」(1)にまとまってますんで、これをベースにいろいろ見てみましょう。
1.「甘酒は飲む点滴である」問題
「甘酒は病院の点滴に成分が近い!つまり体にいい!」って話ですけど、この主張の問題は、そもそも別に点滴の栄養価が高いわけじゃないとこでしょうね。
基本的に、点滴ってのは病気中の脱水を防ぐ目的がメイン。腸炎なんかで「何も食べられない!」って人が使うものであって、一般人の栄養補給に役立つアイテムじゃないんですよ。
確かに甘酒の構成は「点滴にそこそこ似てるなぁ」って感じですが、「だから?」ってのが正直なところであります。最初に「飲む点滴」ってフレーズを考えた人のセンスは凄いと思いますが。
ちなみに、甘酒のビタミンやミネラルをみてみるとこんな感じ(100gあたり)。
- カロリー 81kcal
- タンパク質 1.7g
- チアミン 0.01 mg
- リボフラビン 0.03 mg
- ナイアシン 0.2 mg
- ビタミンB6 0.02 mg
- カリウム 14 mg
- マグネシウム 5 mg
- 亜鉛 0.3 mg
これに対して、たとえば卵はこんな感じ(100gあたり)。
- カロリー 162kcal
- タンパク質 12.3g
- チアミン 0.08 mg
- リボフラビン 0.48 mg
- ナイアシン 0.1 mg
- ビタミンB6 0.12 mg
- カリウム 120 mg
- マグネシウム 10 mg
- 亜鉛 1.4 mg
このへんは好みですけど、私だったら甘酒を飲むなら卵を食べちゃうかなぁ。
2.「甘酒は酵素がたっぷり!」問題
続いて、甘酒にはダイエットに役立つ酵素が入ってるよ!みたいな話について。
こちらの問題点については、前に「なぜ酵素ドリンクにお金を払ってはいけないのか?」で書いたことと同じです。要するに、
- 酵素はタンパク質でできている
- タンパク質で胃で溶けてアミノ酸になる
- 甘酒の酵素もアミノ酸に分解される
- 無意味!
みたいな流れになっております。うーん、せつない。
3.「甘酒は必須アミノ酸がたっぷり!」問題
「甘酒はアミノ酸たっぷり!」って話もよく見かけました。確かに甘酒には必須アミノ酸が入ってるようなんですが、なんせ100gあたりのタンパク質量が1.7gなんで、たかが知れてると言いますか。
それに、甘酒の原料になるお米のアミノ酸スコア(必須アミノ酸のバランス)は65ですからねぇ。しかもお米のプロテインは消化吸収率も悪く、果たして甘酒のアミノ酸がどれだけ体で使われるかは不明。
ってことで私だったら、甘酒分のカロリーを増やすぐらいならやっぱり卵を食べますかねぇ。アミノ酸スコアも100ですし。
4.「甘酒は食物繊維がたっぷり!」問題
「甘酒は食物繊維が多いのでお通じの改善にも!」という主張もメジャーなようなんですが、「日本食品標準成分表」(1)によれば100gあたりの分量は、
- 水溶性食物繊維 0.1 g
- 不溶性食物繊維 0.3 g
とのこと。試しに他の飲料とくらべてみますと、
- ココア 水溶性6g 不溶性18g
- 緑茶 水溶性3g
- 豆乳 水溶性0.2g
といった感じ(すべて100gあたり)。とくに甘酒が目立ってすごいってことはないかなぁ、と。個人的には、ココアだと一杯分(4グラムぐらい)でも1gの食物繊維が摂れるし、ポリフェノールは豊富だし、カロリーは10kcalぐらいだしで、こっちのほうを選びますかねぇ。
5.「甘酒に美白効果が!」問題
甘酒にはコウジ酸って成分が入っております。コウジ酸はメラニンの生成をおさえる働きがあり、肝斑とかに効くと言われてるんですね。
実際、研究データもそこそこありまして、2013年の実験(2)では60人の女性にコウジ酸クリーム(0.75%)を12週間使ってもらったところ、ハイドロキノンほどじゃないものの肝斑の減少がみられたとか。
が、これはあくまでお肌に塗ったときの話。コウジ酸をいくら飲んだところで、美肌になるってデータはないんですよね。
さらに2003年の薬事・食品衛生審議会(3)によれば、
製麹時にコウジ酸が産生されたとしても醸造中に微生物、酵素などの影響により分解されるため、最終製品中にコウジ酸が残存する可能性は少ない
とのこと。そもそも本当に甘酒にコウジ酸が入ってるのかもかなーり疑問だったりします。
6.なぜここまで甘酒が持ち上げられたか問題
いろいろと甘酒をディスってみましたが、もともと発酵したお米を水で薄めた飲み物なんで、そんなに栄養価が高いはずはないんですよね。
にも関わらず「甘酒すごい!」って話が根強いのは、おそらく森永製菓さんががんばってるからではないかと。たとえば、
みたいな感じ。毎年のように何らかのプレスリリースを出してるんですよね。
ただ、これに関しては、
- 査読論文ではない(他の専門家のチェックを受けてない)
- 大半はマウスの実験がメイン
- ヒトを対象にした場合は参加者が少ない(17人ぐらい)
って問題がありまして、正直「よくわからん」としか言いようがないところです。
まとめ
そんなわけで以上の話をまとめると、
- 別に甘酒は栄養豊富なわけではない
- 甘酒の機能を調べた研究はほとんどない
って感じです。くり返しになりますが、私だったら甘酒を飲むなら卵を食べるかココアを飲みますね。
もしかしたら、今後「甘酒のエルゴチオネインに凄いアンチエイジング効果が!」みたいな話が出てくるのかもですが、なかなか難しいでしょうねぇ。