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そもそも「病気」ってなんのためにあるの?問題

Sick

 

仕事の関係で「病気はなぜ、あるのか」を再読しておりました。20年も前に「病気の原因は進化から考えようぜ!」って見方を広めた名著で、私がパレオダイエッターになったきっかけでもあったりします。

 

 

その内容は、タイトルどおり「そもそも病気ってなんなの?」について考えたもの。ホルモンバランスや炎症といった体内のしくみではなく、病気がなんのために存在しているのかを解き明かしてるんですな。

 

 

で、本書では、病気の原因を次の6つにまとめております。

 

  1. そもそも進化はヒトの健康を気にしない
  2. 体の防御反応を病気だと誤解
  3. 遺伝と環境のミスマッチ
  4. 他の生き物との軍拡競争
  5. あちらを立てればこちらが立たず
  6. 進化の自転車操業

 

それぞれを説明すると、こんな感じです。

 



 

1.そもそも進化はヒトの健康なんて気にしてない

そもそも人間がなぜ進化するかといえば、遺伝子を残すためであります。

 

 

なので進化の目標は「産めよ、増えよ、地に満ちよ」が優先順位のトップで、「個人の健康」はその次。さらにいえば「個人の幸福」なんかはさらに下。

 

 

たとえば、野生の獲物が少ない状況では、小麦に強い遺伝子を持っていたほうが生存には有利ではあります。なんだけど、そればっか食べてたら栄養不足で体を壊しやすくなるのも間違いないところ。

 

 

つまり、遺伝子を残す確率を高めるために、あえて病気になりやすい状況を選ぶケースもあり得るってことですね。こればかりはどうしようもないんで、とりあえず「進化はヒトの健康を気にしてくれない」ってとこだけ押さえとくといいかも。

 

 

2.カラダの防御反応を「病気だ!」と誤解

熱とか下痢とか痛みとか炎症とかだけを見て、「病気になった!」と誤解しちゃうパターン。

 

 

いずれもウイルスや体のエラーを取り除くための防衛メカニズムなのに、下手に解熱剤などを飲んで症状を長引かせちゃうのはよくある話かと思います。せっかくセコムが働いてるのに、犯人じゃなくて警備員を押さえつけてる状態といいますか。

 

 

病源や感染に目を向けずに、表面の症状だけに対処するのはありがちなミスなんで、気をつけたいところです。

 

 

3.遺伝と環境のミスマッチ

これは「パレオダイエットの教科書」でさんざん書いたのと同じことです。基本的に生物の進化はゆっくり進むんで(例外もあるけど)、環境の変化が激しすぎると体がついていかないんですよね。オフロード車が公道の走行に向いてないみたいなもんで。

 

 

具体例としては、

 

  • 糖尿病=ヒトの体は食料が少ない環境で適応したので、カロリー過多をうまくさばけずに起きる
  • 虫歯=ヒトの歯は砂糖と小麦がない状態で進化したので、加工食品が多いと歯垢に悪性のバクテリアが増える

 

といったところ。このミスマッチの数は膨大ですけど、個人が意識して直していけるポイントでもありますね。

 

 

4.他の生き物との軍拡競争

当然ながら、生き抜くために進化を重ねているのはヒト以外の生物も同じ。その一部には、他の生物にタダ乗りを決め込むように進化した種も少なくないわけです。

 

 

代表例は「微生物」で、なにせヒトのような真核生物とは進化のスピードがケタ違い。お肌や腸を守ってくれるナイスガイも多いいっぽうで、悪さをするやつらも多かったります。これも遺伝と環境のミスマッチの一種ではありますね。

 

 

とくに現代では、知らぬうちに慢性的な感染症にかかっているケースも多いんで、謎の不調にみまわれたら疑っておくのが吉。

 

 

5.あちらを立てればこちらが立たず

「何かを得るには何かを失わなければならない」とよく言いますが、これは進化でも同じこと。よく例にあがるのは「クジャクの羽」で、キレイな羽を持ったおかげでメスにモテるようになったはいいけど、目立つせいで敵に襲われやすくなったりとか。

 

 

ヒトの例で言いますと、

 

  • 粘液が正常に働かない遺伝病(CF症)を持った人は早死にしやすいが、いっぽうで腸チフスの発症をブロックする作用も持っている
  • 遺伝性の貧血病にかかった人は、マラリア感染をふせぐ能力が高い

 

みたいなところです。特定の病気をふせぐために備わった機能が、別の病気を呼び込んじゃうわけですね。これまた簡単な対策はないんですよねぇ。

 

 

6.進化の自転車操業

環境の変化に応じて、適した機能を手に入れていくのが生物の進化。なので、新しい能力をゼロから設計するのではなく、「とりあえず使えるものを使う!」って方針でヒトの体は作られております。

 

 

具体的な例だと、両生類のアゴの骨がヒトの耳に変わったり、魚のヒレが人間の手足になったりとか。いわば、必要に応じてその場しのぎの自転車操業をくり返してきたので、それにともなってシステムエラーも出やすくなるわけですね。

 

 

代表的な例としては、

 

  • 椎間板ヘルニア=本来は4足歩行に適していた背骨を強引に立ち上がらせたせいで、脊柱のクッションがはみ出しやすくなった
  • 足の故障=本来は木に捕まるための器官だった、長く歩くためにカカトや扁平足で強引に適応させたせいで骨折や捻挫が多発するようになった

 

みたいなところ。「あちらを立てればこちらが立たず」問題と重なるポイントですね。

 

 

まとめ

いろいろ書きましたが、このあたりを押さえとくと、自分の不調についてコントロールできそうなところと、コントロールが効かないところの区別がついて有用かと思われます。

 

 

いま読んでも「病気はなぜ、あるのか」はためになりますので、ダーウィン医学に興味のある方はどーぞ。ただし、いくつかのポイントはさすがに古いんで、いまから読むなら「進化医学 人への進化が生んだ疾患」のほうがいいかもです。 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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