腸内細菌は大事だが「口内細菌」も超大事!みたいな話
腸内細菌は大事だが口内細菌も大事
よく「腸内細菌って大事よねー」みたいな話を書いてますけど、今回は「口内細菌」の話でも。文字どおり口のなかに住む細菌ですね。
というのも、ここんとこ口内細菌と病気に関する論文をいろいろ読んでまして、あらためて「口のなかのバクテリアも大事だなー」と思いまして。たとえばオハイオ州立大のレビュー(1)によれば、口のなかに住む細菌たちには悪いタイプがいて(P. gingivalisとかStreptococcus mutansとか)、こいつが増えると歯周病になるのはもちろん、
- 糖尿病
- 大腸がん
- 膵臓がん
- リウマチ性関節炎
- 心疾患
といった病気を引き起こす原因になるんだそうな。口内細菌が乱れただけで、どえらい悪影響が起きるもんなんですねぇ。
口内で起きた炎症が全身に広がっていく
このような事態が起きる理由は多岐にわたるんですけど、せんじつめれば当ブログではおなじみの「慢性炎症」がデカそうな感じ。悪い細菌が炎症を起こし、それが全身に広まっていくイメージであります。
もうひとつおもしろいのがアデレード大学の2013年論文(2)で、こちらは古代人の遺体から石灰化したプラークを採取して分析したんですね。これによって、各時代ごとに口内環境がどのように移り変わったかがわかるわけです。
それでわかったのが、人類は過去に2度にわたって、口内細菌が大きく悪化する時代を経験してたって事実です。そのタイミングってのが、
- 狩猟採集から農耕に移動した時代
- 産業革命で食品の大量生産が可能になった時代
の2つ。この時期をさかいに人類の口内には、虫歯の原因になるバクテリアが激しく増加したんだそうな。
現代人の口内フローラは種類が激減しちゃった
研究チームいわく、
近代人の口内細菌のエコシステムは、過去の人類よりも明らかに多様性が減っている。これが慢性的な疾患のもとになっている。
とのこと。腸内細菌だけでなく、口内細菌も多様性が減っちゃってるんだ、と。過去に紹介したアボリジニーの調査でも、狩猟採集民は虫歯が極端に少ないって結果が出てますし、原因の一端は口内細菌の変化にもありそう。
ってことで、現代人にとっては、口内細菌の復旧も大事なポイントのひとつ。おおまかなガイドラインとしては「なぜパレオダイエットで虫歯が改善するのか?」を参考にしていただければと思いますが、ここでは上記のオハイオ州立大のレビューをベースに、もうちょい細かいポイントを。
口内細菌を守るための基本ガイドライン
- 口内細菌の保護:とりあえず加工食品を減らすのは基本として、殺菌成分が入ったマウスウォッシュや歯磨き粉を使わない(というか、そもそもオーラルケアの殺菌成分は無意味)
- 生野菜で細菌を取り込む:ときどき生キャベツを食べて乳酸菌を補給する。ただし、生野菜ばっかだとフィチン酸の摂取量が増えちゃうんで週一ぐらいでOK
- 口内細菌の活動時間に注意:口内細菌は時間によって活動状態が変わり、だいたいは日中に活動的になり、夜中は休憩状態に入る。そのタイミングは食事の摂取量で判断しているので、深夜に大量のカロリーを摂ると、口内細菌がいつもの働きをしてくれなくなる。基本的には、日中に大きな食事をしておくのが吉
- 食事は定期的に:上記と同じ理由で、食事はいつも同じ時間にしておくのが基本。口内細菌は体内時計の変化に弱く、不定期な食事や時差ボケなどで環境が悪化してしまう
- ストレスでの削減:ストレスは腸内細菌によくないが、同じように口内細菌にもよくない。残念ながら、まだヒトに行われた研究はないが、いくつかの動物実験では、慢性的なストレスで口内の良いバクテリアが減る現象が確認されている
まとめ
ってことで、口内細菌を健やかに保つための基本をまとめてみました。 個人的には「口内細菌は夜になると休む!」ってのを知らなかったんで、あらためて「決まった食事と睡眠時間を守る!」ことの大事さを痛感しております。
まぁ基本的な食事は「パレオダイエット」のガイドラインを守ってれば問題ないはずなんで、あとは「歯磨きしすぎない」とか「口のなかを殺菌しようとか思わない」みたいなとこがポイントになってきそうな感じですかねー。