「他の人より運動してないなー」と思うと早死にする。本当は運動してても早死にする。
自分の運動量をどう捉えているか
「長生きには運動が不可欠!」と何度も書いてますけど、最近のデータ(1)では「自分が運動をどう考えてるか?も大事だよ!」って結論になってておもしろいです。
これはスタンフォード大学の研究で、61,141人のアメリカ人を対象にしたもの。米国民健康調査 や 米国民健康栄養調査といった大規模のデータセットを使って、全員の運動量をチェックした観察研究になっております。
このデータがおもしろいのは、
- 参加者の客観的な運動量(複数の質問から推定したもの)
- それぞれの参加者が「自分は他の人より多く(または少なく)運動している」と思っているかどうか
の2点を調べてるとこ。実際に体を動かした時間にくわえて、主観的な運動の量もチェックしたわけっすね。
他人より運動してないと思うと早死に
そして、21年後の違いを見たところ、
- 「俺は他の人より運動してないなー」と思ってる人は、そうでない人より71%も早死にする!
- この傾向は「実際の運動量」で調整しても残った。喫煙や肥満などの数値を調整しても残った
だったそうな。本当は他人より運動してる人でも、「自分は他人より下だ!」と思うと早期死亡リスクは高くなっちゃうらしい。うーん、衝撃。
なぜ認識だけで運動のメリットが減るのか
なんとも不思議な話ですが、こういった現象が起きる理由について、研究者はいくつかの推定をしております。まずひとつめは、
- 人より運動していると信じる → 自分に自信が出る → より健康的なライフスタイルになる!
みたいな経路。実際、いくつかの緯度研究でも、「自分は他人より不健康だ」と思ってる人は、1年後の活動量が減っちゃう傾向があったらしい。逆に他人より運動してる(と思ってる人)は、さらに健康になっていくのではないか、と。
で、もうひとつの経路としては、
- 人より運動してないと信じる → 自分は運動不足だ!というストレスがたまる → 健康にダメージが!
みたいな感じ。ノセボ効果に近い話で、こちらもありそうな気がしますなぁ。
思い込みだけでも運動の効果が上がることも
ちなみに、認知と健康の関係については2007年の研究(2)も有名で、こちらは84人のホテル清掃員を対象にしたもの。全体を2つのグループにわけて、いっぽうには「あなたたちの仕事は1日のエクササイズ推奨量を満たしています」と教え、もういっぽうには何も伝えなかったんですな。
すると、「自分の仕事はエクササイズの代わりになってる」と教えられたグループのみ体重が減り、血圧が改善し、体脂肪も減ったというんですな。他方で、何も伝えられなかったグループには何の変化もなかったというから凄いもんです。よくビジネス書なんかにも出てくる有名な話ですな。
といっっても、もちろんこの結果は「思い込めば運動の代わりになる!」って話じゃないのでご注意ください。あくまで他人と比較して考えないのが重要って話ですんで。にしても認知のパワーは凄いもんすね。