年収900万円が幸福のマックスだ!説をあらためて調べたら……
お金でどこまで幸せになれるのか問題を再考する
「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 」で有名なカーネマン博士は、「年収75,000ドルで人間の幸福は頭打ちになる!」って有名な研究を発表してたりします。物を買って得られる幸福には限度があるんで、それ以上はいくら稼いでもムダじゃないの?みたいな話ですね。
で、新しく出た論文(1)は、この有名な研究をさらにくわしく調べてておもしろいです。これはアメリカ・パデュー大学の研究で、ギャロップ社が164カ国から集めた約170万人のデータを使ったもの。
ざっくり言えば、全員に「人生にどれぐらい満足してますか?」とか「幸福ですか?」と聞きまくったうえで、それぞれの年収と比較。これを各国の購買力でならして最終的な結論を出しております。ちなみに、上のカーネマン論文は45万人ぐらいが対象なんで、サンプル数はだいぶ増えてますね。
年収1千万が人生の満足度のリミット
それではまず結論を申しますと、
- 感情の幸福は年収60,000〜75,000ドルで上限に達する!
ということで、これはカーネマンの結論とほぼ同じ。1ドル105円で考えると、だいたい630万〜790万円ぐらいが幸福のマックスってことですな。
が、この論文では別の結論も出てて、
- 人生の評価は年収95,000ドルで上限に達する!
って結果も出ております。だいたい1,000万円ですね。
お金で買える幸福には2種類ある
「幸福と評価って何が違うの?」と思われた方もいるでしょうが、要するに、
- 感情の幸福=「幸福だ!」とか「悲しい!」とか「興奮してる!」などの、毎日味わう感情の動き。当然、ポジティブな感情が多いほど幸福度も高い。
- 人生の評価=「自分はうまく生きてる」や「より大きな目標に向かって生きている」や「他人よりも良い人生だ」のように、自分の人生をポジティブに過ごせているかどうか。
みたいな感じです。毎日を楽しく暮らすには年収700万円もあれば十分なんだけど、自分の人生への満足度を高めるには1千万が必要ではないのか、と。
さらに年収が上がると幸福度は逆に下がる
さらに、ここではもっと別のデータも出ていて、
- 以上の上限を超えると、今度は逆に人生の評価も幸福度も下がる傾向があった!
だったそうな。このような現象が起きる理由はよくわからんですが、
- 基本的な衣食住がちゃんと満たされるまでは金で幸福が上がっていく
- いったん暮らしの基本ラインが満たされると、今度は「物質の追求」や「他人との比較」が気になり出すので、結果的に幸福度は下がる
って感じなのかも。研究者いわく、
年収が95,000ドルを超えたあたりから、多くの人は「自分の人生はどんな感じだろう?」や「他人よりいい人生だろうか?」といった疑問を抱き始める。
ってことで、年収が1千万を超えたら、いよいよ「足るを知る」が大事になってくるんじゃないか?ってことですな。ストア派哲学みたいですな。
まとめ
ただし、今回の数字は「個人の幸福」についてなので、世帯で考えた場合の幸福度がどうなのかは不明。単純に世帯の人数でかければいいのかはよくわからないので、そのへんはご注意ください。
そんなわけで、とりあえず年収1千万までは人生の評価が上がるようなんで、そこまでは頑張って目指すのもアリ。いっぽうでその額を超えた場合は、「心理学的に正しくお金を使うための8つのポイント」などを参考に、お金の使い道を考え直す必要があるかも。