6週間のマインドフルネス訓練で運動のパフォーマンスが上がる!かもというカリフォルニア大学実験
マインドフルネスにはまだ賛否ありまして、「ダイエットや不安に効く!」という確度の高いデータがあるいっぽうで、「でも実は効果量が低くないか?」って指摘もあったりとか。
まだ研究が浅い分野なんでしかたないところですが、まぁ個人的にはさすがに「マインドフルネスでなんでも解決!」みたいなノリにはなれないものの、まず食事・運動・睡眠を正常にしたら、そのサポートとして採用するぶんには十分アリではないかと思っております。
といったところで、ここ数年ちょっと良い成果が出てるのが「マインドフルネスで運動のパフォーマンスが上がるんじゃない?」みたいな研究であります。一定期間マインドフルネスの訓練をすると、スポーツの成績がよくなるのではないか?というんですな。
で、実は最近もヨーロッパ・スポーツ科学会で発表(1)がありまして、これがちょっとおもしろい。
これはこれはカリフォルニア大学のサンディエゴ校の実験で、24人のプロハンドボール選手に「mPEAK」と呼ばれるマインドフルネストレーニングを指示したもの(Mindful Performance Enhancement, Awareness and Knowledgeの略)。
mPEAKはカリフォルニア大学のサンディエゴ校が採用しているメンタルトレーニングで、超ざっくりいえば「運動用に特化したマインドフルネス訓練」です。たんに呼吸瞑想を行うだけじゃなくて、スポーツには欠かせない「集中力アップ」や「完璧主義の克服」にテーマをおいた内容になってるんですな。
なぜ研究者が「マインドフルネスは運動に効く!」と考えているかと言いますと、
優秀なアスリートは、みな自分の体の状態をモニタリングするのがうまい。しかし、本当に大事なのは、肉体の限界に近づいたときに、自己をモニタリングできるかだ。
誰でも「息苦しくてもうだめだ!」と思う自分は認識できるだろう。これは表明的な認知だ。ところが、この感覚に対して自分がどう反応するかを決めるのは、もっと深い部分まで自己を認識しなければならない。
とのこと。優秀なアスリートはモニタリングがうまいってのは、以前にも「脳と体の最適化に欠かせない「内受容」の鍛え方とは?」に書いたとおりです。当然ながら、自分の体がどうなってるのかを正しく把握できないと、しっかり持ち前のパフォーマンスは発揮できませんからね。
mPEAKは6週間のコースになってまして、ざっくりと以下の4ポイントを鍛えていくんですな。
- 肉体への集中:自分の呼吸でも胸の動悸でもなんでもいいんですが、とにかく自分の体にどのような反応が起きてるかを観察するフェーズ。「ボディスキャン」なんかを使っていくみたい。
- 思考の認識:自分の脳内に展開する「ストーリー」を認識するフェーズ。いわゆる「ヴィパッサナー瞑想」に近い技法を使って「おっ、いま自分は『息が上がってもう動けない』と考えたぞ」と認めて、そのまま何もせずに受け流す態度を覚えていく感じ。
- 恐怖と遊ぶ:運動中に痛み、恐怖、ストレス、失敗への不安などが起きても強引に押さえつけたり無視したりせず、とりあえず痛みや不安を受け止めたまま体を動かすトレーニング。いわゆるアクセプタンスですな。
- 完璧主義を防ぐ:完璧主義な人は、一般的に自分の失敗を認められずに、ムダに自分を責めてしまいがち。これだとパフォーマンスはダダ下がりするので、セルフコンパッションの技法などで鍛えていくのがいい感じ。
って感じで、1日2〜3時間のプログラムをこなしていくらしい。なかなかハードっすねぇ。
さて、6週間後に参加者たちに認知テストと身体テストを行ったところ、
- 運動の最中に気がそれなくなった!
- なにか失敗しても立ち直りが早くなった!
- 状況が変わっても柔軟に対応できるようになった!
- 反射神経がよくなった!
みたいに、あらゆる面で良い変化が起きたらしい。うーん、なかなか凄いもんですな。
もちろん、この成果が現実の試合でも発揮されるかはわからんのですが、とりあえずマインドフルネスが運動にも良い可能性はありそう。そういえば、大昔にはシカゴ・ブルズもマインドフルネスを採用して良い成績を収めてましたしねぇ(くわしくは「シカゴ・ブルズ 勝利への意識革命 」などをどーぞ)。