「ちょいデブ」が最も健康的!はどこまで本当か?
https://yuchrszk.blogspot.com/2019/04/blog-post_93.html
「デブのほうが健康なのでは?」って説に関するご質問をいただきました。
「「デブ=不健康」は大まちがい。身長170cmの理想体重は意外と重い」という記事が出てました。体重が重い人のほうが本当は健康だというのですが、鈴木さんは、肥満の弊害をよく書いてると思うのですが、どう思われますでしょうか?
とのこと。まずは記事から引用しますと、
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)がさまざまな人種の約288万人を対象に行ったレポート結果では、BMI値が「18.5~25未満の標準体重グループ」と「25~30未満の過体重グループ」では、過体重グループのほうが死亡リスクが6%も低いということが判明したのです。
実はこれ以前から「ちょいデブのほうが健康的である」というデータは多数発表されていたのですが、CDCの発表は300万人に近いサンプルを元に作成されたデータなので、その信頼性に医学界が揺れたのです。
って感じです。実は理想の体重よりも20kgはオーバーしたほうが長生きできるのではないか、と。
このネタ元は2013年にCDCが行ったメタ分析(R)で、上の引用どおり、288万人のBMIと早期死亡率をくらべたところ、「実はちょいデブのほうが長生き!」って結論が出てきたんだそうな。おもしろいもんですねぇ。
このような観察研究はほかにもいくつかありまして、「肥満のパラドックス」などと呼ばれております。その点では昔からある話で、めずらしいデータでもなかったりはするんですよね(サンプル数はバツグンに多いですが)。
で、このデータにどれぐらいの正当性があるかというと、正直わりと微妙です。というのも、これらの結果って、大事な変数を組み込み忘れた可能性が大きいものですから。
ここでいう変数ってのは、
- 病気になった人って痩せるよね!
- 年を取った人って痩せるよね!
みたいなことです。癌とか糖尿病にかかった人が激しく痩せていくのは周知の事実ですし、年を取った人ほど筋肉が減って体重が減るのも有名な話ですからねぇ。
そのような人たちを合わせて調整しないと、「痩せた人たち」の早期死亡率が実際よりも多めに出ちゃう可能性はかなり高め。 当然、太った人に有利な結果が出やすくなるんですよ。
そこで参考になるのが2018年のランセットに出た論文(R)で、約363万人を対象にした観察研究になっております。ご覧のとおり過去最大級の調査で、1998〜2016年にかけて各自のBMIを追っかけて、それぞれの死因や寿命と比較したもの。もちろん、上記で問題になった変数の問題も考慮ずみです。
さて、それでどんな結果が出たかと言いますと、
- BMIが30以上の人は、男性は4.2年、女性は3.5年ほど寿命が縮む
- おもな死因は癌と心疾患の2つで、その他にも糖尿病や肝臓病などが多い
というわけで、ここらへんは思わず納得の結果でありましょう。BMIが30以上ってかなりのもんですからね。
さらに、その他の結果はと言いますと、
- BMI25までの人が、もっとも心疾患リスクが低かった
- BMI25から5kg/m2 増えるごとに心疾患リスクは29%上昇する
- 発がんリスクがもっとも低いのは、BMI21までの人がだった
- BMI21から5kg/m2 増えるごとに発がんリスクは13%上昇する
だったそうです。つまり、結論は従来の常識とほぼ同じで、結局は標準体重がベストだってことです。
研究チームいわく、
今回の実験では、BMIと大半の死因につながりがあることがわかった。BMIは21〜25のレンジに収めるのが、ほとんどの病気リスクを下げるために役立つだろう。
とのこと。まったくもって普通の結論ではありますが、結局のところ「ちょいデブ」が健康的ということにはならなそうであります。
ちなみに、ちょいデブ健康説については他にもポイントがありまして、
といった話も出たりしております。あわせてご参照ください。