「アイデアは制限から生まれる!」はどこまで本当かを確かめた実験の話
よく「アイデアは制限から生まれる!」みたいなことを言うわけですが、そこらへんが本当かを調べた話(R)が出ておりました。
これはイリノイ大学など研究で、95人の学生にエッセイを書くように指示したんですが、その際に全体を3グループに分けてます。
- 制限コンディション:「お金や物がない環境で育つとはどういうことか?」ってテーマで文章を書く
- 豊富コンディション:「お金や物がありあまった環境で育つとはどういうことか?」ってテーマで文章を書く
- コントロール群:普通のエッセイを書いてもらう
ってことで、事前に「貧しい暮らし」について思いをめぐらしてもらって、脳内に「リソース不足」のイメージをすり込んだわけですね。
で、そこからどんな実験をしたかと言いますと、
- みんなにレゴみたいなおもちゃを渡して、「クリエイティブなものを作ってみて!」と指示
- 完成品を15人の審査員が7点満点で採点する
といった感じでクリエイティビティを審査したところ、
- 制限コンディションは豊富コンディションより成績が良かった!(3.72 vs 3.04)
との結果だったそうな。ちなみにコントロール群はM = 3.17ポイントでして、豊富コンディションの成績がもっとも悪かった模様。
この研究ではほかにも5つの実験をしてるんですが、そのデザインはだいたい同じで、まず被験者に「リソース不足」のイメージをすり込ませたあとで、
- レンガのいろんな使い方を考えてくださーい
- 余ったプチプチシートの有効な使い方を考えてくださーい
みたいな指示を出したところ、やはり全体的に「制限コンディション」のほうが目新しいアイデアを思いつくケースが多く、アイデアを出す絶対量も多かったんだそうな。要するに、
- 実際にリソース不足でなくとも、「なにかが足りない!」ってイメージだけで人間の創造性は上がる!
ってことでして、なかなかおもしろいもんですな。
研究チームいわく、
ここでわかったのは、豊富な資源が創造性にはマイナスの影響を与えるかもしれないということだ。逆に使えるリソースが少ない場合、私たちはより創造的にリソースを使おうとする。
それどころか、豊富さを強調することは裏目に出る可能性も高い。デザイナーや消費者の創造性を低下させてしまうかもしれないからだ。マーケッターは、豊富さよりもむしろ希少性の感覚を活性化すべきだろう。
受動的な消費者であることに慣れきってしまうと、創造性の筋肉は衰えていくように思える。これは将来の世代にとって良いことではない。
とのこと。この研究では、過去5年間の思考能力テストの事前分析もやってるんですが、なんでも全体的なIQのスコアは上昇しているものの、クリエイティブ思考のスコアは1990年から下がり続けてるんだそうな(特に子供の創造性低下がいちぢるしい)。
まぁこのデータだけを持って「リソースの豊富な現代社会が我々から創造性を奪っているのだ!」と言い切るのは無理だし、過去には「貧しさは実際にIQを大幅に減らしてしまう」って傾向も確認されてますんで、なんでもかんでも制限がいいってわけではない点はご注意ください。また、制限を創造性に活かす方法については、「ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法」あたりが非常に参考になりますんで合わせてご参照あれ。