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オンラインでの学習は対面のリアル学習に負けるのか?問題



外出自粛が続いてるもんで、「ここらでちょいとオンラインで勉強するかー」なんて人も多いんじゃないでしょうか。最近はカーンアカデミーみたいに優良なオンラインコースも多いですからね。


が、そこで気になるのが「オンライン学習って役に立つの?」ってとこじゃないでしょうか。教師が差し向かいで教えてくれる学習と比べて、オンラインを使った勉強には効果があるのか?って問題であります。


この問題についてはすでに多くの研究がありまして、例えば有名なのは2010年に出たメタ分析(R)で、

  • 実はオンライン学習の方が対面の学習よりも良い成果がある

なんて報告が出てたりします。というと最終的な結論が出たように思っちゃうかもですが、上記の内容には少し問題もありまして、

  • モチベーションが高くて優秀な大学生に焦点を当てている
  • 社会人の再勉強やもっと普通の学生への効果は良くわからない

ってとこが悩みどころだったりします。優秀な学生を対象にしてたら、そりゃあオンライン学習でも効果が出やすいでしょうからね。


ってことで新しい研究(R)は、「より一般的な学生でもオンライン学習には意味があるのか?」ってポイントを調べてくれております。


この実験はロシア国立研究によるもので、ごく一般的な大学の工学部2年生325名を対象にしてまして、みんなにロシアが主宰するのオープンエデュケーション・プラットフォーム(R)から2つのコースを受講しもらったらしい。その際に全体を3つのグループに分けてます。

  1. 所属大学の講師と対面で勉強する
  2. オンラインで講義を視聴した後、インストラクターと対面でディスカッションをする
  3. オンラインで講義を視聴した後、インストラクターとオンラインでコミュニケーションをする

って感じで、オンラインコースの履修後にどんな違いが出るのかを調べたんだそうな。


そこでどんな違いが出たかと言いますと、

  • 習得した知識のレベルについては、3つのグループで目立った違いはなかった
  • テストの点数については、オンラインで学習した学生の平均点がやや高かったが、一方で学習に対する満足度は、対面で学習した学生よりもやや低かった
  • オンライン講義+対面ディスカッションは、学生1人当たりの指導コストが15~19%低くなり、全てオンラインで完結した場合はコストが79~81%低くなる

だったそうで、上述のメタ分析と違ってオンライン学習に目立った優位性があるわけじゃないものの、特に対面学習よりひけをとってるわけでもないって感じっすね。特にオンラインはコスト削減になる分だけメリットが大きそう。


研究チームいわく、

本研究に照らせば、質の高いオンラインコースについては、もはや十分な指導方法のひとつと考えて差し支えないだろう。

ってことでして、確かに今後も新型コロナのような事態は起きるでしょうし、教育機関はオンラインサービスを整備しとくのが良さげっすね。


ちなみに、この研究ではオンライン学習をした学生の満足度が低い傾向が出てますが、この現象については「多分、オンライン環境での経験や関連する学習スキルがまだ定まってないからじゃないかなぁ」と推測されております。ここらへんは在宅勤務でも言えることでして、これから整備されていくんでしょうな。


そんなわけで、全体的な傾向としては「オンライン学習は既存の教育スタイルと変わらぬ効果を持つ!」って可能性は高そうなので、自宅学習に取り組むモチベーションになるんじゃないでしょうか。個人的には、すべてオンラインで完結して学位がもらえる大学とか出てきてもいいんじゃないかとすら思うわけですが。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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