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今週半ばの小ネタ: 別れるカップルの特徴、リコピンの効果、イチゴで認知力がわずかに向上?

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ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

 別れるカップルは3ヶ月前から言葉づかいが変わる?

別れるカップルは数ヶ月前から言葉づかいが変わる!」みたいなデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは海外のオンラインフォーラムのユーザーを対象にした調査で、

 

  1. 「r/BreakUps」という人間関係に特化したフォーラムを観察

  2. 6,800人から100万件以上の投稿を集め、仲が悪いカップルの言葉づかいを調べる

 

みたいになってます。すると、別れるカップルはその3ヶ月ぐらい前から言葉の使い方に変化が見られまして、

 

  • 「私」という言葉の使用量が増える
  • 「欲しい」「思う」「必要とする」「気づく」「決める」「推測する」「頼る」などの、認知処理を示す言葉の量が増える

 

って傾向があったそうな。研究チームいわく、

 

これらの変化は、その人が重要な認知的負荷を背負っているサインだ。彼ら彼女らは、何かを深く考えたり、何らかの問題に取り組んだりして、より自己に意識を向けるようになっている。

 

昔から、「私」という言葉の使用量が増えるごとに、うつ病や悲しみの感情も増えると報告されてきた。一般的に、落ち込んだ人たちは自分自身に集中する傾向があり、他の人と良い関係を持つことができづらい。

 

とのこと。人間関係で何らかのトラブルがあると、その問題について考える回数が増えるせいで「思う」や「必要」といった単語の量が増え、さらに意識が自分に向かいまくるせいで「私」の使用量も増えるんだ、と。あくまで英語圏の研究なんで日本でも同じかどうかはわからんですが、ここらへんの心理は同じような気がしますなぁ。

 

 

 

リコピン本当に心臓に良いのか悪いのか

リコピンといえばトマトに多く含まれるカロテノイドで、「抗酸化パワーが強いから心臓や欠陥に良い!」みたいなことは昔から言われてきたわけです。

 

 

そこで、新しいメタ分析(R)では、リコピンに関する合計43のRCTから2306 人のデータを系統的レビューし、29件でメタ分析を行っております。リコピンの投与は、トマトのホール缶を使ったり、サプリを使ったり、トマトを丸ごと食べたりと、いろいろなパターンを使用。その上で、血中脂質、炎症性マーカー、高血圧、酸化ストレスのマーカーへの効果をチェックしております。

 

 

結果をざっとまとめると、こんな感じです。

 

  • 11の試験中5つでリコピンの血圧低下が見られた

  • 18の試験中10で血中脂質の改善が認められた

  • 19の試験中13で、少なくとも1つの酸化ストレスまたは炎症マーカーの有意な改善が報告された
  • が、質が悪い研究を除外したメタ分析では、リコピンは血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、または中性脂肪への影響が確認されなかった(酸化ストレスマーカーについてはメタ分析は行われず)

 

ってことで、最初は「おっ」と思ったものの、質の高いデータだけをまとめたら目立った効果が見られなかったようで、どうにも残念な感じですね。

 

 

ただ、ちょっと前に出た別のメタ分析(R)では、「リコピンの摂取量が多いほど脳卒中、CVD、死亡率、うっ血性心不全の発生率の減少と相関」って結果も出てるんで、ここらへんの食い違いは謎。2017年のメタ分析(R)でも、トマトのサプリでLDLコレステロール、動脈流量、炎症関連血液マーカーのレベルが改善したって報告も出てますしねぇ。

 

 

まー全体的にはこの最新版のほうが質は高い印象なので、まだリコピンには大きな可能性がありつつも、そこまで期待せずに見守るぐらいの感じでしょうか。

 

 

 

 

イチゴで認知力がわずかに向上?

高齢者の認知改善にイチゴがいいかも?みたいな話(R)が出ておりました。

 

 

昔からイチゴと老化の関係を調べた動物実験はいくつかありまして、イチゴの摂取で神経細胞や認知機能が改善した!って話はそこそこあったんですよ。イチゴには抗酸化作用や抗炎症作用を持ついくつかのフィトケミカルが含まれてるんで、とりあえず体に良いのは間違い無いんですよね。ただし、ヒトに関する実験はまだ少なかったんで、そこそこ貴重な内容になっております。

 

 

で、この二重盲検RCTでは、60歳から75歳までの男性22名と女性15名を対象に、

 

  1. フリーズドライのイチゴを1日24g摂取(新鮮なイチゴ2カップ分)

  2. プラセボのフリーズドライフルーツを摂取

 

って感じで分けて、実験スタートから45日後と90日後の2つのポイントで、バランス、歩行、認知機能を評価するためのテストを行ったそうな。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • イチゴを食べた参加者は、プラセボと比較して、3次元の空間の位置関係を把握する能力と、エピソード記憶の増加を示した
  • ただし、どちらのグループも歩行やバランスなどの身体機能の改善は認められなかった

 

だったそうです。まぁどちらもかなり軽微な改善なんで、「偶然の結果では?」って疑惑は否定できないとこなんですけど、イチゴは体に良い成分が多いんで、とりあえず食べ続けてみるのもいいんじゃないかと思う次第です。

 

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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