低糖質ダイエットをすると1日の総消費カロリーは増える!はどこまで本当か?のメタ分析
低糖質食で脂肪が燃えやすい体に!みたいな主張が昔からあるわけです。糖質を減らすことで体が脂肪を積極的に使うようになり、結果的に1日の消費カロリーが減るのだ!といった考え方ですね。
これが正しいかどうかは賛否ありまして、「低糖質で1日約100~200kcalほど消費カロリーが増えた!」って報告(R)があれば、逆に「高糖質な食事で1日約350kcalも消費カロリーが増える!」ってデータ(R)もあったりして、いまいちよくわからんとこだったんですよね。
といったところで、新しいメタ分析は「糖質の多い少ないで1日の総消費カロリーは変わるのか?」って問題を掘り下げてくれてて有用でありました(R)。
これは29の試験から合計617人のデータをまとめたもので、
- 実験の平均は13日(1日〜140日の間)
- 各試験で使われた糖質量は、総摂取カロリーの8~77%のあいだで変化
- 4つの試験では二重標識水を用いて総消費カロリーを測定し、25の試験では全室熱量測定を使っている
みたいな内容になってます。これでメタ回帰分析をして、「果たして糖質の量を変えれば本当に脂肪が燃えやすくなるのか?」をチェックしたわけですね。ちなみに、研究の質や出版バイアスについては明確な評価をしてませんで、そこらへんはちょっとマイナスポイントですかねー。
で、分析でわかったことを並べてみると、こんな感じです。
- 低糖質食は、短い期間の研究(17日以下)では1日あたりの総エネルギー支出が約50kcal減少したが、より長い期間の研究(17日より長い)だと1日あたりの総エネルギー支出が約135kcal増加した
- さらに層別化すると、短期の試験では糖質量が10%減るごとに平均で1日15kcalの減少が見られたが、長期の試験では糖質が10%減るごとに平均で1日50kcalの増加が見られた
そんなわけで、17日以下の場合は一時的に総消費カロリーは減る(≒痩せにくい体になってる)が、それより長い期間なら総消費カロリーは増える(≒痩せにくい体になってる)かも?って結論になっております。これは低糖質ダイエット好きにはうれしい結果かもっすねー。
とはいえ、やはり解釈を難しくしてるポイントはいくつかありまして、
- とにかく効果のバラつきが激しい:I2=81.6%なので、かなりの違いがあると思われる
- 厳密に管理された先行研究と矛盾する:たとえば2016年のテストでは、低糖質により短期間(17日未満)で総エネルギー消費量が1日あたり約80〜100kcalほど増加したが、この効果は28日後には無視できるレベルまで小さくなった(1日あたり50kcal未満)と報告されている(R)
- 長期研究の数字が大きく出てるかも:今回のメタ分析では、「長期的にエネルギー消費が増した!」と報告した研究6件のうち3件が二重標識水を使っている(二重標識水は低糖質食の総エネルギー消費量を過大評価しやすく、平均で1日あたり約150kcalの誤差が出る)
といったあたりは「どうなのかなー」ってところですね。もちろん、低糖質ダイエットが好きな人であれば、このデータをもとに「長く続ければ脂肪が燃えやすくなるのだ!」と奮起する材料にしても良いかもですが。
ただ、個人的には「普通の暮らしでダイエットする分には、やっぱ糖質がどうこうとか気にしても意味ないよなー」と思ってたりします。というのも、2020年に出た別のメタ分析(R)なんかでは、「12カ月の長期スパンで比べたら、低糖質と高糖質は1kgぐらいの差しか生まない」って結論な上に、その体重の差も「水分量の変化がメイン」って可能性が大きいもんですから。
ま、あとはお若い方におまかせして、みなさん自分のライフスタイルに適した、お好きな食事を選んでいただければってことでひとつ。