他人の心を読みたきゃ相手の視点を考えよう!はどこまで正しいのか?
「他人の心理を読みたきゃ相手の視点を考えよう!」みたいなアドバイスがあるわけです。「もし自分が相手の立場だったらどのように考えるか?」と想像してみる手法で、「パースペクティブ・テイキング(視点取得)」などと呼ばれております。
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もし自分が女性だったらこの映画は好きだろうか?
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自分が友人だったら誕生日に何が欲しいだろう?
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自分がもっと貧しかったらどう感じるだろう?
みたいに、他人の身になって考える作業は誰でもしたことがあるでしょう。
なかなか説得力があるアドバイスですが、「果たしてこの考え方はどこまで正しいのか?」を調べたデータ(R)が発表されておりました。著者のニコラス・エプリーさんは「人の心は読めるか?」で有名な先生で、ずっと読心術の研究をしてることで有名ですね。
で、ここでは25種類もの実験をしてるんで、いちいち詳細を書くのはやめておきますが、おおよその実験はこんな感じです。
- みんなにいろんな人の動画を見せて「他人の立場になってくださいねー」と指示する
- 「この人は本当に笑っているか?」「この人は嘘をついていないか?」などと質問をして、その精度を確かめる
ってことで、いろんなパターンで「他人の身になって考える」テクニックの有用性をチェックしてくれてます。
でもって、その結果がどうだったかと言いますと、
当初、ほとんどの参加者は、他人の視点に立つことで、より正確に他人を思考や感情を洞察ができると考えていた。
しかし、テストの結果、他人の視点に立つことで自分の判断に自信が持てるようになり、自己中心的なバイアスが減少する効果は得られたが、参加者の予測はおおむね正確ではないことがわかった。
だったそうです。視点取得を実践しても、必ずしも他人の心を読めるわけではないんですねぇ。
その理由について、エプリーさんはこう言ってます。
視点取得の弱点は、相手の視点を正確に想像できるかどうかにかかっていることだ。
病に苦しんでいたり、落ち込んでいたり、会社での地位が低かったり、収入がなくなったりといった状態がどんなことなのかを実際にわからないのであれば、他人の立場になったところで正確性が増すわけではない。むしろ、精度が下がる可能性もある。
自分が同じ経験していない限り、いくら他人の身になっても想像力が追いつかないんだ、と。めちゃくちゃ正論っすね。
さらにエプリーさんは、視点取得の問題点として「そもそも自分が歪んだ視点を持っていたら最悪だ」と指摘しておられます。例えば、自分が「宗教なんて全てインチキだ!」と思っていたら、どんなに崇高な教義もうさん臭く見えちゃって、「もしあの信者の立場だったら?」と考えても正しい判断には向かわないでしょうからね。
もし相手の視点に関するあなたの信念が間違っていたら、その人の視点を考慮しても間違いが拡大するだけだ。これは特に紛争時に起こりやすく、対立するメンバーはお互いに不正確な見解を持っていることが多い。
どんな人にも特定の信念がある以上、純粋な状態で相手の視点に立つのはかなり難しいのではないか?ってことですね。これまたド正論すな。
では、どうすればいいのかってことで、エプリー先生は「相手の視点を取得(パースペクティブテイキング)するのではなく、相手の視点を獲得(パースペクティブゲッティング)せよ!」と言っておられます。なんだか難しそうな言葉が出てきましたけど、言ってることはめちゃくちゃ単純で、
- どう考えているのかを相手に直接聞け!
ってことです。うわー、シンプル。
再び博士いわく、
最初に相手の考えを聞く人は、何もしない人と比べて全体のミス率が半分近くになり、相手の視点になって考えた人と比べてもそれ以上の結果が得られた。
相手が何を考えているのか、何を感じているのかを正確に理解したければ、推測せずに聞いてみるべきだ。
とのことで、何周もしてすごく基本的なとこに落ち着きましたね(笑
ただし、過去にエプリー先生が行った別のテストでは「他人の表情から感情を読もうとするよりは、他人の視点に立つ方が正確性は高い」って結果も出てますんで、「他人の視点に立つ」ってアドバイスが完璧にムダなわけじゃないところはご注意ください。いまんとこの状況をまとめると、
- 他人の表情を読む<<他人の視点に立つ<<<<超えられない壁<<<他人に聞く
みたいな感じになるんですかねぇ。