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気が散るのは人間にとって当たり前の話。では、どうすればいいのか?#3「プレコミットメント」


 

このシリーズ(#1,#2)では、「現代で集中力を保つにはどうすべきか?」について書いた「気を散らさない(Indistractable)」って本をまとめてまして、今回はその最終回。集中力アップに欠かせない「プレコミットメント」やその他の観点について考えていきましょう。

 

 

ポイント4. プレコミットメント

プレコミットメントってのは、雑に言えば「事前に自分と約束しておく」って考え方で、昔からグーグルなんかも推奨しているド定番の手法です。グーグルが使ってるだけあって研究例はとても多く、集中力アップを狙う方は押さえておくべきでしょう。

 

 

では、具体的にどんなプレコミットメントがあるのかと言いますと、以下のようなパターンが存在しております。

 

  • 努力コミットメント

    「努力コミットメント」は、自分が悪い選択をしにくいように、あらかじめ設定しておこうぜ!って考え方でして、例えば、

    ・「同僚や友人と一緒に仕事をする」と決めて、社会的なプレッシャーで仕事に集中させる

    ・「SelfControl」や「コールドターキー」などのアプリを使って、SNSやニュースサイトなどをブロックしておく。

    みたいなのが代表的っすね。特に社会的なプレッシャーは効果が高いので、チャンスがあれば積極的にご利用ください。

 

 

  • 価格協定

    「価格協定」は、「集中力がなくなったら金を払う!」とあらかじめ決めておく手法です。人間は「いま気が散っても明日に取り返せるだろう」と思いがちなので、罰則を設けることでデメリットを現在の瞬間に引き戻すわけです。

    ・運動をしなかったら1万円を友人に支払う

    みたいに決めておくやり方が定番っすね。

 

 

  • アイデンティティ協定

    「アイデンティティ協定」ってのは、自分のアイデンティティに特徴を持たせることで、そのアイデンティティに沿った行動をとるようになる!って考え方です。例えば、

    ・「俺は"締切守る人間"なのだ!」と周囲に触れ回っておく(これは私がやってることですが)

    ・「私は運動好きなのだ!」と周りに言っておく

    みたいなやり方を意味します。人間はアイデンティティの一貫性を求める生き物なんで、いったん自分の新しい呼び名を他の人と共有すると、「アイデンティティを守るぞ!」って気分がブーストされるんですよね。個人的にもこれは割とおすすめ(まぁ完璧主義系の人が使うと消耗しちゃうケースもありますが)

 

 

その他、考慮すべきポイント

プレコミットメントの要点は以上ですが、その他にも大事なポイントがいくつかありますんで、簡単にまとめておきましょう。

 

  • 企業のコミットも重要だぞ!

    人間の集中力が低下する理由としては、職場の環境がダメなケースも多い。例えば、自分の意見を上司がひろってくれなかったり、社員同士の仲が悪い状況では、職場に恐怖、イライラ、退屈の感情がはびこり、集中力を下げる内的なトリガーとして働いてしまう。この問題を解決するには、

    ・「我が社はタスクの実行よりも、全てを学習のチャンスとして考えているぞ!」とアナウンスしまくり、社員に心理的安全を与えねばならない

    ・オープンな議論のための安全なフォーラムを提供し、社員の心配をすぐに吐き出せる場を作っておく(例えば、Slackなどに「フィードバック」チャンネルを設けておくとか)

    といった介入が考えられる。

 

 

  • 社会的伝染に対処しておく

    集中力が高い人と働くと自分の集中力も上がるのと同じく、集中力がない人のそばにいると自分の集中力も低下する。代表的な事例はスマホで、グループで仕事をしているときに一人がスマホを見始めるだけで、全体の集中力は下がってしまう。そのため、グループで作業をする際は、あらかじめスマホをカゴに入れておき、テーブルから離れた見えない場所に置くなどの処置をしておくとよい。

     

 

  • 自律性,有能感,関係性に注意する

    自己決定理論で言われる「自律性,有能感,関係性」の3つは、人間のモチベーションを高める心理的な「栄養素」。もし仕事へのモチベーションが低下したら、この3つから「いま自分に足りないものは何か?」と考えてみる。例えば、


    ・自律性がない場合:仕事のやり方やスケジュールを自分で決められるように労働環境を変える

    ・有能感がない場合:いったん自分が得意なタスクから取りかかり、自分への能力の信頼感を取り戻す

    ・関連性がない場合:仲の良い同僚と仕事をしたり、「この仕事は誰の役に立つのか?」を考えてみる

    といった介入が考えられましょう。この3つが満たされてないとモチベーションが上がりにくく、作業への集中度も下がっちゃうのでご注意ください。


ってことで、「現代で集中力を保つにはどうすべきか?」シリーズは以上です。いずれも重要な観点ばかりでしたけど、個人的には、

 

  • タイムボクシングを基本にしつつ、ときおり『自己決定理論の要件を満たしているか?』をチェックする

 

ってやり方が性に合ってる感じっすね。皆さまも、自分に一番しっくりくる組み合わせを見つけていただければと思う次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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