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今週末の小ネタ:「バカ歩き」はナイスな運動だ! コツコツやれる人はほんとうに幸せ? アプリでダメな性格は変えられる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

「バカ歩き」が実はナイスな運動法だった件

モンティ・パイソンの「バカ歩き」ってあるじゃないですか。コントの歴史に残るジョン・クリーズ先生のギャグでして、知らない方は以下をどうぞ。

 

 

で、新しいデータ(R)は、この動きにインスパイアされたもので、結論から言うと「バカ歩きはめっちゃ良い運動だ!」って感じ。具体的な実験の内容は、以下のようになります。

 

  1. 参加者にモンティ・パイソンの「バカ歩き省」を見せる

  2. みんなにバカ歩きを再現してもらい、その間のカロリー消費量、酸素摂取量、メッツを測定する

 

というわけで、バカ歩きの運動量はどれぐらいなのかを調べたわけです。実験中、みんなが取っていた動きは、下の動画みたいになります。

 

 

この動きを説明するのはムズいですが、不定期なハイキック、ランダムな屈伸、素早いホップ、ギャロップなどが組み合わさった謎運動でして、自分でも試してみたら意外と強度は高かったです。体感としては、階段を軽く駆け上がるぐらいの強度というか。

 

 

研究の結果について、チームはこんなことを言っておられます。

 

多くの成人は、1日約11分の「バカ歩き」を行うことで、激しい運動を週に75分行うのと同じ負荷の身体活動を達成できる。

 

1日11分も「バカ歩き」をするのは辛い気もしますが、これだけの効果を得られるなら、普段のエクササイズの気分転換に使ってみるのはいいんじゃないでしょうか。バカ歩きでHIITをするのもおしゃれでいいですね。

 

 

 

コツコツやれる人はほんとうに幸せなの?

グリットがある人って幸せなの?」というメタ分析(R)が出ておりました。ご存じの方も多いでしょうが、グリットは「やり抜く力」で有名になった概念で、くわしくは「成功するためにもっとも大事な要素?かもしれない「グリット」のお話」などをどーぞ。簡単に言えば、ひとつのことに地道に取り組める能力のことです。

 

 

で、グリットについては、近ごろはいろんな方向から異論反論も出ているんですけど、個人的には「それでもコツコツやることが良いことなのは変わりないから、やっぱ気にしておくにこしたことはないよなー」ぐらいの位置に落ち着いてます。

 

 

でもって、今回のメタ分析は「グリットと幸福」の関係を調べていて、合計6万6千人以上が参加した83の研究を収集して、大きな結論を出してくれてます。コツコツやるのはいいんだけど、それが行き過ぎたら、人生の喜びが失われてしまうケースはありそうですもんね。

 

 

が、実際のところ、グリットと幸福には関係性があるようでして、

 

  • 総合的なグリットや忍耐力と、主観的な幸福との間には強い関係があった。

 

  • 興味の一貫性(長期的な目標に対する情熱)は、主観的な幸福とそんなに関係がなかった。

 

との結論が出てたりしました。もちろん、これは因果関係を証明するものではなく、グリットが幸福をもたらすのではなくて、幸福な人のグリットが高まるだけかもしれんので、そこらへんは謎。また、この研究には含まれていないものの、グリットと幸福に関連する他の変数が存在する可能性も高いので、そこはご注意ください。

 

 

ただ、グリットは長期の目標達成に役立つ資質なので、個人的には、その点が幸福感の増加に役立つのかも?とは思っております。

 

 

 

アプリでダメな性格は変えられるか?

「性格を変えるアプリを開発したぞ!」って報告(R)がおもしろかったのでメモ。これはチューリッヒ大学などの試験で、チームが作った性格改善アプリを約1,500人に提供し、その後、参加者の性格がどのように変化したかを評価したんだそうな。

 

 

ここで使われたのは「PEACH」ってアプリで、だいたいどんな機能がついているかと言いますと、

 

  1. 現在の気分や行動を収集して、「どんな状況でどのような気分になるのか?」を理解する

  2. 日曜日に具体的な1週間の行動目標を決める(外向的になりたい!という人は、店員さんに話しかけてみる、とか)

  3. 毎朝と毎晩に、アプリのチャットボットと会話して、行動目標がうまく進んだかをチェックする

 

みたいになります。簡単に言えば、自分が望む性格の人が取りそうな行動を意識的に実践し、それを習慣化するサポートをしてくれるアプリになってるわけっすね。これはちょっと私も使ってみたい……。

 

 

でもって、3ヶ月後にどんな結果が出たかと言いますと、

 

  • アプリを使った参加者は、なにもしなかったグループに比べ、行動目標の達成に大きな成功を収めた

 

  • 周囲の人たち(親しい友人や家族)も、アプリを使った参加者の性格が変わった!と認識していた

 

だったそうです。研究チームいわく、

 

参加者もその友人も、介入終了の3ヶ月後には、アプリの使用によってもたらされた性格の変化が持続していたと報告した。この結果は驚くべきもので、私たちは、自分の性格の単なる奴隷ではなく、日常的な経験や行動パターンを意図的に変化することで、性格を変えられることができることを示している。

 

とのこと。確かに、この研究では、従来よりもスピーディに性格の変化が起きているようで、この点はちょっとおもしろかったですね。「自分がなりたい性格の行動を増やす」ってやり方は定番中の定番ですけど、アプリでも効果が得られるってのは希望が持てる結果ですねぇ。

 

 

ちなみに、このアプリで使われたテクニックは、新刊の「運の方程式」でも詳しく紹介してますので、気になる方はどうぞ(最後に雑な宣伝)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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