今週の小ネタ:コーヒーでアルツハイマーが防げる? 抜け毛を防ぐハーブがある? アルコールでどれぐらい癌になる?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
コーヒーでアルツハイマーが防げる?
「コーヒーは良いよー。健康飲料だよー」みたいな話はずっと書いてますが、今度は「コーヒーはアルツハイマーに効くか?」を調べたメタ分析(R)が出てて、よろしゅうございました。
これは、コーヒーの効果を調べた過去の観察研究から11件をピックアップしたもので、
- 米国で4件、フィンランドで2件、カナダ、イタリア、ポルトガル、スウェーデン、日本で各1件の研究が行われた。
- コーヒーの消費量は、それぞれに自己報告式のアンケートで回答してもらった。タダし、カフェイン入りコーヒー、カフェインレスコーヒーによって効果が異なるかはチェックしていない。
- 合計6,121人の参加者が、アルツハイマー病を発症していた。
みたいになります。個人の記憶にたよったアンケートで調べているで、いまいち正確性には欠けるんですけど、それでも結果は参考になるのではないかと。
でもって、結果はこんな感じでーす。
- コーヒーをまったく飲まない場合に比べ、1日1〜2杯のコーヒーを飲んだ場合、アルツハイマー病のリスクが32%低下した。
- それ以上のコーヒー摂取量には、目立ったメリットは認められなかった。
ということで、いままでもさんざん高い評価を受けてきたコーヒーに、またもや新たな報告が加わった形であります。
当然ながら、この研究にはかなりの限界があって、個人的には「一杯のコーヒー」が具体的にどれだけの量を意味するのかがよくわからないのが残念なところ。おそらく150ccぐらいだと思うんだけど、すべて自己申告なので、いまいち判断しづらいところです。
また、摂取したコーヒーの種類によって結果が異なるかを評価するためのサブグループ分析もされてないので、果たしてカフェインレスでも似たような結果が出るのかは謎だったりします。そこは留意しつつ、今後も毎日コーヒーと緑茶は飲んでいきたい所存です。
アシュワガンダは抜け毛に効果がある?
ストレスに効く可能性が高いことで有名なハーブと言えばアシュワガンダ。疲労やら睡眠に良いなどと言われてますが、新たに「頭皮に塗るとハゲに効くかも!」と示唆するデータ(R)が出ておりました。そういえば、アシュワガンダを塗り薬として使ったことはないなぁ。
こちらは脱毛の治療をしていない軽度から中等度の脱毛患者68名が対象で、このうち女性が16名で平均は32歳だったとのこと。男性型脱毛症にかかっている人だけ選び、頭皮の疾患による脱毛は除外したそうです。
実験の期間は75日間で、参加者を2つのグループに割り振っています。
- アシュワガンダの塗り薬を使う(KSM-66という有名なアシュワガンダを使用)
- プラセボの塗り薬を使う
両グループとも、毎日1~2滴の液体を頭皮に塗るよう指示されたとのこと。その上で、みんなの毛髪量を調べたら、結果はこんな感じになりました。
- プラセボに比べ、アシュワガンダのグループは、毛髪の密度、毛髪が成長する速度、毛髪の太さが増加し、60秒間のヘアコームテスト中に抜けた毛髪の本数も減少した。
ちなみに、ヘアコームテストってのは、被験者が櫛やブラシで60秒間髪を通しまくり、抜け落ちた髪の本数を測定するというもの。毛髪密度、毛髪直径、毛髪成長速度の測定には、トリコスキャン分析が使われている。
なんでアシュワガンダで頭髪に良い影響が出たのかはよく分からんのですが、このハーブには昔から良い報告が多いので、そういうこともあるのかなーってところです。まだまだ研究としては初歩ですけども、いちおう液体のアシュワガンダは市販されているので、試してみたい方はどうぞー。
アルコールでどれぐらい癌になる?
酒は発がん率を上げる!ってのはよく聞く話で、日本の観察研究だと「ほんの少しの酒でもガンになる確率は上がるかもよー」みたいな結果も出てたりするわけです。怖いですねぇ。
では、その悪影響のレベルは具体的にどれぐらい名のかってことで、「酒と癌」の関係を掘り下げたメタ分析(R)が出ておりました。その内容をすごーく簡単にまとめてみると、
- 酒と癌に関する前向きコホート研究を106件のピックアップし、アルコールを飲む量によるがんリスクを検討した。
- アルコール消費量は4段階に分類している。
- 軽度(0.01~12.4グラム/日:標準的な「酒1杯」ぐらいの量)
- 軽度〜中程度(12.5~24.9グラム/日:酒2杯ぐらいの量)
- 中程度(25.0~49.9グラム/日)
- 重度(≥50.0グラム/日)
みたいな感じです。上記の分類ごとに発がん性のリスクをチェックしたわけですね。
では、分析の結果を見てみましょうー。
- すべてのがん:軽度のアルコール摂取はがんリスクと関連していなかった。軽度〜中程度、中程度〜重度、および重度のアルコールは、それぞれ8%、19%、および39%のがんリスク上昇と関連していた。
- 食道がん:軽度、軽度〜中程度、中等度〜重度、重度のアルコール摂取は、それぞれ食道がんのリスクを39%、83%、168%、312%上昇させた。
- 胃がん:軽度および軽度〜中等度のアルコール摂取は胃がんリスクと関連しなかった。中程度のアルコール摂取と重度のアルコール摂取は、胃癌のリスクをそれぞれ20%と22%アップさせた。
- 肝臓がん:軽度のアルコール摂取は、肝臓がんのリスクを9%低下させた。軽〜中程度のアルコール摂取は胃がんリスクと関連しなかった。中重度および重度アルコール摂取は、肝臓がんリスクを、それぞれ14%と36%アップさせた。
- 膵がん:軽度、軽度〜中程度、中程度〜重度のアルコール摂取は、膵がんリスクと関連しなかった。重度のアルコール摂取は膵癌のリスクを29%アップさせた。
- 大腸がん:軽度、軽度〜中程度、中程度、重度のアルコール摂取は、それぞれ4%、9%、20%、48%ずつ大腸がんリスクをアップさせた。
- 肺がん:軽度、軽度〜中程度のアルコール摂取は、それぞれ肺がんリスクを10%、5%低下させた。中程度のアルコールは肺がんリスクと関連しなかった。重度のアルコールは肺癌のリスクを8%高めた。
- 甲状腺がん:軽度のアルコールは甲状腺がんリスクと関連しなかった。軽度〜中程度、中程度、重度のアルコールは、それぞれ甲状腺がんリスクを26%、31%、27%低下させた。
ということで、一部のがんについてはリスク低下のメリットがあるものの、結局は飲まないに越したことはないイメージですね。飲んでも1杯ぐらいまでってのは、酒好きには辛い結論かもですが……。