今週の小ネタ:HIITと普通の有酸素運動はどちらが健康に良いのか?健康に最高の食事法はどれか?クルクミン サプリメントはどこまで体に良いのか?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
HIITと普通の有酸素運動はどちらが健康に良いのか?
毎度おなじみ“最強のトレーニング”こと「HIIT」に 関する最新研究(R)のお話です。 この研究が何を調べたのかというと、
- 「HIIT」と「継続的な有酸素トレーニング」は どっちが痩せる?
一定のペースで走り続ける普通のランニングと、 細かく運動の強度を変え続けるHIITを比べた場合に、 どちらの方がダイエット効果が高いのかをチェックしてくれたわけです。
具体的には、11のRCTをメタ分析したもので、過体重または肥満の男女379人が対象(19〜51歳)。 全体的にどのような運動が チェックされたのかと言いますと、
- HIIT=最大心拍数または最大酸素摂取量の85%~120%で運動し、平均時間27分のセッションを週3~5回行う。
- 継続的な有酸素運動=最大心拍数または最大酸素摂取量の50%~75%で運動し、平均時間44分のセッションを週3~5回行う。
って感じです。 実験の期間は5~16週間で、 参加者の体脂肪率と内臓脂肪がどう変化するかを調べたんだそうな。
その結果がどうだったかと言うと、
- HIITは、継続的な有酸素運動と同じぐらい体脂肪率と内臓脂肪量を減少させた。
- HIITは、体重、BMI、 中性脂肪を減少させるのに、継続的な有酸素運動と同じぐらいの効果があった。
- HIITは、継続的な有酸素運動よりもVO2max(体力の指標)を増加させ(効果量小)、空腹時グルコース(効果量中)と総コレステロール(効果量小)のレベルを低下させた。
みたいになります。体型の変化に関しては、HIITと普通の有酸素運動のあいだに差はないんだけど、 体力や健康レベルの改善と言う点においてはHIITの方が優秀っぽいですね。 個人的には両方やってみればいいと思いますが、 目的に応じて使い分けてみるのもありですね。
健康に最高の食事法はどれか?
続いては、「最強の食事法とは何か?」について 調べたデータ(R)です。 従来の研究では、「糖質制限食だろうが低脂肪食だろうが 大した差は無いので、好きなものを選びなさい」って結論が出ているわけですが、最新の調査ではどうなったのか気になるところです。
これは1年間のRCTの二次的な観察分析で、だいたい以下のようなデザインになってます。
- 参加者はBMI28~40の448人(平均40歳、女性258人、男性190人)
- 参加者を「糖質制限食」(1日の糖質量を103.2g以下に減らす)か「低脂肪食」(1日の脂肪摂取量を29.7g以下に減らす)のいずれかを続けてもらう。どちらの食事も健康的(野菜を重視し、砂糖、精製小麦粉、トランス脂肪酸を最小限に抑える)な内容にデザインされている。
- どちらの食事のほうが健康レベルが改善したのかをチェックする。
というわけで、低糖質または低脂肪のどちらが、より大きく体重が減り健康が改善するかどうかを見たわけっすね。
すると、結果はこんな感じになりました。
- どちらの食事でもBMIは同じぐらい減った。どちらの食事法においても、食事の質が高い参加者の方が体重の減り方が大きかった。
- どちらの食事においても、ちゃんと食事でズルをせず、食事の質が高い参加者は、そうでない参加者よりも最高血圧と最低血圧、空腹時の血糖値、インスリン、LDL-Cが改善した。
ということで、 どのような食事だろうが、食事の質にこだわって、ちゃんと同じ内容を続けていれば、 健康レベルは 同じように改善するって結論です。 糖質制限や低脂肪にこだわるよりは、質の高い食品を、自分が 続けられる方法で食べることの方が重要だってことで、このブログを読んでいる方なら、おなじみの結論ですね。
ちなみに、この研究では、食事の質「Healthy Eating Index-2010(HEI)」に従って定義してまして、果物、野菜、緑黄色野菜、豆類、全粒穀物、乳製品、総タンパク質食品、魚介類、植物性タンパク質の摂取量が多く、不飽和脂肪と飽和脂肪の比率が高く、精製穀物、ナトリウム、エンプティカロリー(アルコールや精製砂糖など)の摂取量が少ないものを「質が高い食事」と定めてます。 このような内容を、自分のできる範囲で続けていただけるといいんじゃないでしょうか。
クルクミン サプリメントはどこまで体に良いのか?
最後に、こちらもブログでは定番のクルクミンに関するデータです(R)。 カレーのスパイスとしておなじみな ターメリックの有効成分ですね。
こちらは31件のRCTをメタ分析 したもので、日本、中国、イタリアなど 世界各国で行われた研究をまとめています。 実験の期間は4~36週間で、「クルクミンがどこまで健康に良いのか?」といったあたりを 深掘りしてくれたんですね。 クルクミンと言えば、 かつてニュースサイトなどで「健康効果がない!」 という記事も出た成分なので、 信頼性が高いデータが出てくるのは非常にありがたいですね。
軽くデータの内訳を示しておくと、
- 4つの試験ではナノクルクミン(吸収率の高いクルクミンの一種)を1日量80mg投与
- 14の試験では 吸収率が高い他のクルクミン製剤(クルクミンフィトソームやクルクミン+ピペリンなど)を使用
- 13の試験では吸収率が低いクルクミン製剤(ウコン粉末やクルクミン粉末など)を使用
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参加者は、合計2,462人の男女(平均年齢35~70歳)で、うち1,455人が血糖コントロール障害(糖尿病前症または2型糖尿病)、701人がメタボリックシンドローム、306人が高脂血症だった。
みたいになります。クルクミンは吸収率が低いので、 ナノクルミンなどの サプリメントを扱ってくれているのはありがたいですね。
では、結果を見てみましょう。
- プラセボと比較して、クルクミンのサプリメントは、体重(-0.94kg)、BMI(-0.40)、空腹時グルコース(-0.50mg/dL)、HbA1c(-0.42%)、インスリン(-1.70μIU/mL)、インスリン抵抗性、hs-CRP(-1.11mg/L)を減少(改善)させ、HDLコレステロール(+1.73mg/dL)を増加(改善)させた。
- バイアスのリスクはすべての試験で不明。
ということで、 この結果を見ると、そこまで劇的な変化と言うわけではないものの、 やはりクルクミンは試す価値のあるサプリなのかもしれません。 ちなみに、この研究では、用量反応解析を 行ってますが、「どのタイプのクルクミンが 効くのか?」や「 どれぐらい飲めばいいのか?」 などの問題については答えが出ておりません。 その点はご注意いただきたいですが、個人的にはやはり良い成分だなぁという印象ですね。