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スマートウォッチの測定値は本当に信頼できるのか?をガッツリ調べたデータの話



近ごろApple Watchからガーミンに乗り換えまして、あらためて心拍変動や睡眠の質などを測り直しているわけです。

 

その流れで、またフィットネストラッカーに関する調査をいくつか読んでみましたんで、勉強になったところを簡単にまとめときます。「スマートウォッチで日々の体調をチェックしたいぜ!」という方には、ちょっと参考になるかもしれません。

 

 

1.スマートウォッチのセンサーは汗で割と狂う

2022年に研究(R)を見てたら、汗はスマートウォッチの測定値に影響を与えるとのこと。これは17人の手首に生理食塩水(汗を模したもの)を垂らしつつスマートウォッチを着けてもらった実験で、偽の汗でも心拍数の誤差が確認されたそうな(ただし運動負荷が激しい時のみ)。

 

これは、汗がセンサーを狂わせるだけでなく、高強度の運動をするとスマートウォッチがずれて、皮膚とセンサーの間に太陽光が差し込むのも原因らしい。そう考えると、スマートウォッチは割とキツめに着けたほうが良いんでしょうが(まぁ締め付けすぎると血流に影響が出てまた測定値が狂いそうですが)。

 

ちなみに、他の研究でも同じ結果が出ていて、2023年の調査(R)によると、汗に含まれるタンパク質や脂質がセンサーに蓄積し、センサーをブロックしちゃうのはスマートウォッチによくある問題だと結論づけております。一般的なトラッカーってのは、センサーが皮膚に光を照射して血液の動きを見るので、汗、ローション、クリーム、虫よけなどはセンサーを混乱させる可能性があるみたいっすね。 

 

もちろん、汗の量をコントロールするのは難しいんだけど、安定した測定値を得たい時は、センサーをできるだけ清潔で乾いた状態に保つ事を心がけるしかないでしょうな。言われてみれば、Apple Watchとか、そんなにマメに拭き掃除をしてなかったな……。

 

 

2.スマートウォッチの結果はどこまで信頼できるの?

続いて、「スマートウォッチの精度について調べたぞ!」って文献(R)のお話です。スマートウォッチが計測する、歩数、心拍数、HRV、ストレス度といった数値は、専用マシンで厳密に測った場合とどれぐらいズレがあるのか?って問題ですな。

 

この研究は、過去のスマートウォッチ実験をまとめて大きな結論を出したアンブレラレビューで、複数のデータをまとめて大きな結論を出してくれております。その結論をまず一言で言っちゃうならば、

 

  • スマートウォッチの精度はさっぱり評価できん!

 

みたいになります。なにせ、それぞれの実験で扱ってるメーカーがバラバラだし、Apple Watchを調べるにしても、昔のバージョンを使った研究なので、ここで得られた知見を最新モデルにも適用できるかはわからないし……って感じみたいなんですな。

 

さらに言えば、それぞれの研究も比較するデータの基準が異なるので、どうにも統一した見解を出すのは不可能らしい。まぁそりゃそうっすよね。

 

が、そんな状況でも、多くのスマートウォッチにおいて「信頼度が高めな指標」と「信頼度が低めな指標」の傾向はあるみたいなんで、そこらへんをチェックしておきましょう。

 

  • 信頼度が高めな指標


    • 心拍数:これは割と計測が簡単なので、スマートウォッチの数値も信頼できるケースが多め。誤差は±3%以内だったそうで、激しい運動をすればするほど数字の間違いも大きくなるとのこと。ちなみに私の体感では、スマートリングなんかは、もっと誤差が大きい印象がありますね。


    • HRV(心拍変動)ストレスレベルの計測に使われることで有名な指標ですね。安静時のHRVについては割と優秀で、運動中の測定だと誤差が出やすくなったとのこと。ストレスの測定などにHRVを使っているメーカーは多いので、このへんについては割と信頼がおけるんかな……。

 

  • 信頼度が低めな指標


    • 歩数:歩数は簡単に計れそうなので精度が高いかと思いきや、意外と10%前後の誤差が出るものらしい。言われてみれば、加速度計で「人間が歩いているかどうか?」を判断するのは、そんな簡単じゃないですもんね。


    • 睡眠時間:どれだけ寝たかについては、多くのスマートウォッチが、実際よりも多めに計測する傾向があったとのこと。また、寝床に入ってから眠るまでの時間は、実際よりも少なめに計測する傾向があったそうな。確かに、ここらへんも加速度センサーで判断するのはムズいっすな。

 

ということで、簡単にまとめてみましたが、「心拍数とHRVがそれなりに正しければOK!」と考えている私としては、「それなら今後もスマートウォッチを使っていこう!」と思わせる結果でした。とりあえず心拍数とHRVを参考にすれば、運動の負荷設定とかも判断しやすいですからね。

 

まぁ、この研究を見て、「スマートウォッチの精度って当てにならないんだ…」と思った方もいるでしょうが、個人的には「長期的に自分の肉体がどう変わっているのかがざっくりわかればいいやー」ぐらいに考えて使っております。長い目で見て、ストレスレベルが大幅に変動してなかったり、自分の運動能力がジワジワ上がっているかをチェックするために使ってる感じですね。

 

その意味では、「実際の数値にどれだけ近いか?」よりも、安定して傾向を把握できるほうが大事なので、現在のスマートウォッチが悪いもんだとも思ってなかったりします。この手のデバイスは、いったん「これを使う」と決めたら、長年にわたって使い続けてみるのが大事だと申せましょう(とか言いつつ、私は買い換えたわけですが)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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