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燃え尽きる前に試すべき「心拍変動」を鍛えてストレスに強くなる方法


 

ぐったりして何もする気が起きない!」って状態は、誰でも味わったことがあるはず。

 

これは専門的には「消耗感」と呼ばれ、エネルギーを使い果たして、体と心が分離しちゃった状態を意味しております。いわゆる燃え尽き症候群の一要素で、例えば、

 

  • 毎日長時間の残業を続ける会社員が、ふと作業中に「自分は何をやっているのか」「なぜこの作業をしているのか」という感覚に襲われ、自分が機械になったような感覚になる。

 

  •  高齢の家族を長期間にわたって介護している人が、体を動かしながらも頭では「何も考えられない」状態になる。

 

  • 数か月にわたって長時間勉強を続ける学生が、ふいに勉強していても頭が働かず、ただノートを眺めるだけになる。

 

みたいなメンタルになったら、それは消耗感かもしれません。この状態を何もケアしないままだと、たいていの人は燃え尽き症候群に移行し、悲観的なことが頭に浮かび続けたり、仕事や勉強をする気が消えてしまったりするんですよ。

 

が、そうは言っても、世の中には「消耗しやすい人と、消耗しにくい人」がいるのも事実であります。同じような逆境にさらされているにも関わらず、一晩寝たらどうにかなる人がいれば、完全な燃え尽きに至る人もいるんですよね。

 

では、このような違いはどこから生まれるのかってことで、新たな研究(R)では、「HRVが低い人は消耗感に悩みやすい!」って結論になってておもしろかったです。

 

HRVってのは、心拍数の間隔が時間や状況に応じてどう変化するのか測定した数値で、近年は個人のストレスレベルを把握するための良い指標と言われてたりします。

 

通常は、HRVの変動が少ない(=HRVが低い)ときほどストレスの影響を受けているとされてまして、これは「心臓の運動制御」ができておらず、慢性的なストレスにさらされて証拠とみなされるんですな。

 

事実、先行研究では、HRV が低い人ほど、仕事がつらい会社で燃え尽き症候群になっちゃう可能性が高いことが示されております。心拍変動について、さらに詳しくは「ストレスに勝ちたきゃ心拍変動を鍛えるべし!みたいな話」をご覧ください。

 

というわけで、研究チームは、271人の男女(平均41歳)を集めて、みんなの毎日の仕事ぶりを記録するように指示。ここで被験者に選ばれたのは、日常的に精神的な負荷が大きい仕事をしている人ばかりだったそうな(教師、ソーシャルワーカー、医師など)。

 

それと同時に、みんなの心拍をモニタリングしてHRVも測定し、さらには「神経質度」(「緊張することが多い」「不安になりやすい」など)や疲労度(「仕事で精神的に消耗することが多い」など)なども調べて、すべてのデータをまとめてみたらしい。

 

その結果は、以下のようになりました。

 

  • 予想通り、HRVが低い参加者ほど、感情的な疲労も大きかった(これは先行研究にもあったとおり)。

 

  • ただし、上述の関係は、神経症的傾向が高い人にのみ認められた(つまり、感情が安定しない人ほどHRVが低く、感情の消耗も激しかった)。

 

ということで、ビッグファイブにおける神経症傾向が強めで、なおかつHRVが低い人ほど、過酷な状況に反応して「消耗感」が起きやすくなってしまうんじゃないか、と。

 

研究チームいわく、

 

神経症傾向の人は、ネガティブな環境に反応して、否定的な感情を強く経験するため、このような性格特性は、よりストレスの悪影響を受けやすい。

 

この研究では、HRVが低く、さらに神経症傾向が強い人は、精神的なリソースが損なわれやすく、それによって疲労の増加も経験しやすいことがわかった。

 

とのこと。とにかく神経症傾向の人は、ストレスでメンタルを崩しやすいんだ、と。

 

そうなると、生まれつき神経症傾向が強い人は、ハードな仕事をこなした後の消耗感から逃れられないような気がしてきまして、私のように不安になりがちな人は困っちゃうわけです。が、このデータを見ていると、いくばくかの希望はある感じであります。

 

 

こんな感じで、自分の性格特性やHRVなどをコツコツとトレーニングしていくと、よろしい結果を得られるかもしれません。

 

そのためには、当然ながら自分の「消耗感」に気づけないといかんので、仕事で疲れ切っちゃうような方は、

 

  • 一日の間に仕事の負荷がどのように変化しているのか?
  • その仕事の負荷に対して、自分がどのように反応しているか?
  • 仕事の負荷に対して、自分の感情は無闇に上がったり下がったりしていないだろうか?
  • 負荷が多い仕事を終えた日には、どれぐらい消耗しているだろうか?

 

といったあたりをセルフモニタリングしておくと、適した対策を考えられることができるかもしれません。私もHRVをコツコツとトレーニングしていこう……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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