なぜ働きすぎるのか?オーバーワークの真実と解決策はこれだ!みたいな本を読んだ話
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『オーバーワーク(Over Work)』って本を読みました。著者のブリジット・シュルテさんは、有名なジャーナリストで、“働きすぎ”の問題に長く取り組んでいる方です。このブログでも過去に『Overwhelmed』って著作を紹介したことがありまして、こちらも“過労”の問題を扱ったナイスな本でしたな。
タイトルどおり、本作もオーバーワークの問題と克服を指摘する本で、特に「過重労働の解決は社会の責任だ!」「私たちの働き方には新しいトーリーが必要だ!」って視点が強調されておりました。素晴らしいですねぇ。
ってことで、いつものように重要なポイントをチェックしてみましょうー。
- 現代では、仕事を苦痛に感じる人が増えている。ギャラップ社の調査によると、現代の労働者の大半が仕事に熱中できず、不幸を感じていると報告されている。回答者は「常に働いている」と感じており、働いていないときも仕事のことを考えたり、働いていないことに罪悪感を抱くことが多かった。それなのに、過半数は、「自分は他人よりも遅れている」と感じていた。
- 1970年代以降、アメリカでは労働者の賃金はほとんど上昇していない。ところが、現在では平均的なCEOの報酬は、労働者の399倍以上にまで上昇している。ランド研究所の推定によると、1975年から2018年の間に、下位90%から上位1%に5兆ドルが移転し経済格差は大きく拡大。この意味で、労働者はもはや自分が行った労働の成果をちゃんと受けていないと言える。もし最低賃金がインフレ率と生産性上昇率と連動していたら、2021年には時給23ドルになっていたと考えられる。
- というと、一部からは「経済的に苦しんでいる人々は努力が足りない」「貧しい人は怠け者だ」といった批判も出るが、研究によると、アメリカの貧困層のほぼ4分の3はフルタイムで働いている。つまり、ほとんどの人は怠けているわけではないし、多くの仕事は人間の生活を支える役に立っていないのだと言える。
さらに、現代の労働者は、仕事によるストレスや燃え尽き症候群に襲われるケースが多く、米国では「仕事のストレス」が死因の第5位だとのデータもある。
- 近年、多くの職場では、長時間働いている人ほど優秀だと見なされやすい。そのため、家事やその他のプライベートな義務については、誰かが代わりにこなすことが期待される。労働者の多くは、いつでも呼び出しに応じられるよう待機し、即座に仕事に向かうために、何事にも手を付けないでいることを、暗黙のうちに求められている。
しかし、研究によると、長時間労働は質の高い仕事をする上で逆効果であることが分かっている。それどころか、長時間労働は、燃え尽きや疲労、不必要なミス、思考の混乱を招く原因となる。国際比較でも、労働時間が長い国ほど、生産性は低いことが多い。
- この問題を解決するには、"チェンジ・エージェント”の考え方が必要となる。これは、現代の働き方の問題を認識し、働きすぎや時間管理に対する意識改革を推進する役割を担う個人や集団を意味する。組織や社会の中で働き方やライフスタイルに変化をもたらし、人々がよりバランスの取れた生活を送れるようにサポートする存在である。
たとえば、旅行代理店のCEOであるアスベル・ヨンソンは、働き方に関する自身の思い込みや長時間労働の傾向について疑問を抱くようになり、会社のチームに、日々の業務を徹底的に見直させた。その結果、長時間労働の文化には無駄な仕事がたくさんあり、肥大化した会議、過剰なメール、非効率的または複雑すぎるシステム、価値の低い作業の長時間化などが存在することに気づいた。
そこで同社は、時間を要するプロセスを自動化し、退屈で重要性の低い作業を排除し、労働時間を短縮しながらも給与を同じレベルに維持し、柔軟性を持たせた。これにより、マーケティングやクリエイティブなプロジェクトに時間を割く余裕ができ、それが成長につながり、より多くの雇用を生み出し、ヨンソンも家族と過ごす時間を増やすことができた。
ここでの基本は、人々に自主性とスケジュールに対するより大きな管理権を与えることである。この介入には不安がともなうが、多くの研究では、自主性と管理権の2つを強めることで、より意欲的な労働力を育成でき、労働時間が短縮されることがわかっている。
- もうひとつの戦略は、定期的に労働を一時停止して、自分の時間と注意を管理することの重要性を思い起こすことである。 常に慌ただしく「仕事!生産!能力!」などと前のめりでいると、"トンネリング"(視野が狭くなり、IQが低下して全体像が見えなくなる現象)に陥り、良いアイデアも浮かびにくくなる。これでは、J.K.ローリングが電車の中で窓の外を眺めている間にハリー・ポッターのプロットを思いついたように、休息と空想の力が発揮できなくなってしまう。
- また、自分が「働けば働くほど良い人材になれる」という考え方を持っていないかどうかもチェックするのが重要である。この考え方が維持されると、実際の生産性やアウトプットの質にかかわらず、「たくさん働いた人が偉い」という考え方を強めてしまうことになる。
しかし、実際には、しっかりと休息を取っている幸福で健康な労働者のほうが、実際に良い仕事をできることを示す研究は非常に多い。ある法律事務所では、有給休暇の取得を従業員に要求するのではなく、「休むほうが偉い」という文化を取り入れたところ、休暇を取得する男性の数が大幅に増加し、最終的に会社の業績も改善した。そのためにも、「愚かな仕事」(組織や個人の仕事の中核的な目的に直接貢献しない仕事)を特定する必要がある。自分自身やチームの仕事を吟味し、中核的な仕事、その周辺の仕事という「同心円」で考えてみると良い。
- 個人レベルでは、遊びや休息、休暇を持つことを自分に許可するのが重要である。「生産性」と「意義」を仕事だけに結びつけてしまうと、無駄な作業や過剰労働のプレッシャーに追い込まれやすくなる。
ギリシャ哲学には、「人生の要諦は、人生の偉大な舞台のための時間を持つことである」という言葉がある。真のワークライフバランスと幸福を得るためには、「if/then」マインドセット、つまり「遊ぶ前にまずすべての仕事を終わらせなければならない」という信念から脱却しなければならない。