パートナーとのトラブルを乗り越えるための『許し』と愛着スタイル:最新研究に基づくガイド
パートナーとコミュニケーションを取る中で「ちょっとした失敗」や「言い過ぎたこと」を経験したことは誰にでもあるはず。
たとえば、パートナーが記念日を忘れてしまったり、最近の買い物について嘘をつかれたと感じたり、逆に自分がうっかり約束を破ってしまったり、相手の気に入っているものをバカにしてしまったり……みたいなことですな(私も定期的に「やっちゃったなー」と思うことがあります)。こうしたトラブルが発生するのは人間関係において避けられないことなんだけど、できるだけ速く解決はしたいもんです。
ということで参考になるのが、新たにオーバーン大学などのチームが行ってくれた研究であります(R)。これは「パートナーとのトラブルを乗り越えるためにはどうすりゃいいの?」って問題にフォーカスした研究で、「許し」と「愛着スタイル」という2つの要素を掘り下げて、役立つ知見を提案してくれてるんですよ。
愛着スタイルは、このブログの頻出ワードのひとつですが、簡単におさらいしておきましょう。愛着スタイルってのは幼少期に形成される「自分」と「他者」に対する基本的な認識のことで、例えば「自分は大切にされる存在だ」と思える人は自分の認識がポジティブなので、他者に対しても「この人は信頼できる」と感じやすい傾向があったりします。これが「安定型」と呼ばれる愛着スタイルっすね。
逆に、不安や疑念が強い人は、自分や他者に対して否定的な認識を持つので、「不安型」や「回避型」と呼ばれる愛着スタイルにハマりがち。詳しくは「〇〇〇」などをお読みいただければ幸いですが、「不安型」や「回避型」は対人トラブルが起きやすいので、できるだけ安定型に近づけておきたいところではあります。ちなみに、私はゴリゴリの回避型です。
さて、オーバーン大学の研究では、このような愛着スタイルが「許し」のプロセスにも大きく影響を与えることを示してまして、両者の関係には2つの側面があると指摘しておられます。
- インターパーソナル(他者への許し):安定型の愛着スタイルを持つ人は、パートナーのミスに対して寛容であり、執拗に責め続けようとしない。一方で、「不安型」や「回避型」は、相手のミスをいつまでも引きずり、執拗に考えてしまう傾向が強く、関係の修復が難しくなることがあります。
- イントラパーソナル(自分への許し):安定型の愛着スタイルを持つ人は、自分がミスを犯しても「仕方がない」「次は気をつけよう」と自分を許せるため、罪悪感に囚われず前向きに関係修復に取り組める。一方で「不安型」や「回避型」は、自分のミスを過度に責めてしまい、それがさらに関係の悪化を引き起こす原因になりやすい。
要するに、愛着スタイルによってパートナーと自分のミスを許せるかが左右され、そのせいで相手との関係が修復できるかどうかも決まってくるって話です。そりゃそうでしょうなぁ……。
ということで、この研究では、302人の男女を対象に、パートナーとの関係におけるトラブルと、それぞれの愛着スタイル、「許し」の気持ちがどのように関連するかを調査。その結果、以下のことを明らかにしております。
- パートナーとの対人トラブルとして報告された内容には、以下のようなものがあった。
- 無礼や軽視:37%
- 関係の放置や誤解:33%
- 信頼の裏切り:27%
- 身体的または精神的な虐待:2%
- 上述の問題に対して、どのように反応するかが関係の長期的な健康に影響を与える。特に「許し」のプロセスが進むことで、関係は修復され、さらに強固になることが多い。
- 「許し」のプロセスを左右する要素はいくつかあるが、特に影響が大きいのは「不安型」と「回避型」にありがちな“反芻思考”(くよくよ考え続けること)だった。
つまり、「不安型」や「回避型」は、自分や他人のやらかしを後から必要以上に考え込んでしまい、それによって「許し」のプロセスがうまく進ます、最後には関係をこじらせてしまうんだ、と。これは心当たりしかないぜ……。
ちなみに、ここで言う反芻思考がどんなものかと言いますと、
「パートナーにされたひどいことが頭から離れない」
「その人の悪い行動のせいで、生活の楽しみが制限されていると思う」
「なぜこの人が自分を傷つけたのかを、ずっと考えてしまう」
みたいな感じです。このように考える頻度が高いほど、他者を許すことが難しくなりやすいのは当然でしょう。同じように、自分のミスを引きずりやすい場合も、イントラパーソナルの許しが進まず、関係修復が遅れるのも間違いないっすね。
では、自分の人間関係における反芻思考のレベルを判断するにはどうすればいいのか? この研究では、簡単なテストを使って測定を行っています。以下の質問に対して、最近のパートナーの過ちについて、自分がどのように反応したかを思い出し、1〜5の尺度で自分を評価してみてください(1が「全く当てはまらない」、5が「非常に当てはまる」)。
- 「この人にされたことについて考え続けてしまう」
- 「この人の悪い行いを思い出すと、生活の楽しみが制限されてしまう」
- 「自分がされたひどいことが、頭から離れない」
- 「この人がなぜ自分を傷つけたのか、理由を考え続けてしまう」
- 「自分が受けた被害が、心の中で常にくすぶっている」
- 「その出来事を何度も何度も頭の中で繰り返してしまう」
採点が終わったら全ての質問項目のスコアを合計して、反芻傾向の強さを評価します。当然、スコアが高いほど、パートナーの過ちに対して反芻を起こしやすく、関係の修復が難しくなる可能性があるわけですね。
「何点よりも上だったら大丈夫!」みたいな基準はないんですが、とりあえず16点を超えたあたりから「過ちをある程度気にしやすい傾向がある」と考えたほうがよいかもしれません。さらに21点を超えてくるようだと、パートナーの過ちをよく反芻し、気持ちを整理するのに時間がかかるタイプなんじゃないでしょうか。
もし点数が高かった場合は、自分の反芻を引き起こすトリガーを探してみる必要があるでしょう。そのためには、このブログではおなじみの「自動思考キャッチトレーニング」などをお使いくださいませ。自分の愛着スタイルを改善するのは容易じゃないんですが、私と同じ問題にお悩みの方は、一緒にがんばっていきましょう。