狩猟採集民は5.7時間の睡眠でも健康に暮らしていけるという衝撃の事実
狩猟採集民の暮らしというと「日の出とともに起き日没とともに眠る!」ってイメージがありまして、さぞやたっぷり寝てるんだろうなーとか思いがち。ところが近ごろ出たリサーチ(1)によれば、狩猟採集民の睡眠時間は意外と短いらしい。
狩猟採集民の睡眠時間は意外と短い
これはUCLAの論文で、3つの狩猟採集民の睡眠パターンを3年にわたって調べたもの。具体的には、タンザニアのハッツァ族、ナミビアのサン族、ボリビアのチマネ族のもとへ研究者がおもむき、寝食をともにしつつ94名の睡眠時間や体温を記録したんだそうな。すごい労作ですね。
その結果は、
- 狩猟採集民の平均睡眠時間は5.7〜7.1時間
- 日没後も3時間20分は起きて活動している
というもの。狩猟採集民の睡眠時間は割と短く、意外と夜中まで起きてるわけですね。研究者いわく、
狩猟採集民の睡眠睡眠は短い。この事実は、現代人は睡眠時間が足りていないという常識に反するものだ。(中略)
健康のためには8〜9時間の睡眠が必要とされている。人工照明やテレビがなければ、睡眠時間はもっと伸びると主張する専門家もいるほどだ。ところが今回の調査は、そういった仮説が事実ではないことを示している。
とのこと。多くの狩猟採集民は6時間ぐらいの睡眠でも不眠にならず、いたって健康な暮らしをしているんだそうな。
狩猟採集民は短眠でも元気。先進国では睡眠不足は致命的
もちろん、だからといって「じゃあ俺も6時間ぐらい眠ればいいんだ!」って話にならないのが睡眠の難しいところ。先進国で行われた調査の多くが、「現代人は6時間睡眠じゃ無理!」って結論になってるんですね。たとえば、
- 24,000人の日本人を調べたところ、睡眠時間が6時間以下の女性は乳がんの発症率がはね上がった (2008年,2)
- 睡眠時間が6時間以下の日が続くと全身の炎症レベルが激しくアップ。7時間以下の睡眠でも心疾患の発症率がはね上がった(2007年,3)
みたいな感じ。つまり、狩猟採集民は短時間の睡眠でも元気でいられるのに、先進国の住人は睡眠が6時間を下回ると一気に健康を崩すわけですね。うーん、面白い。
その原因はいろいろありましょうが、なにせ現代人と狩猟採集民の睡眠環境は違いすぎるんで、「ここさえ改善すれば短時間の睡眠でもOK!」ってポイントはなさそう。ただし、今回の実験を行った研究者は「睡眠時の室温」を重視しておられます。
先進国では、温度が一定に調節された環境で眠りにつくケースが多い。しかし、人類の睡眠を正しくコントロールするには、夜中に温度が下がる環境が必要なのかもしれない。
とのこと。実際、室温が低い部屋で眠ると代謝が上がることがわかってまして、この推測にも納得してしまうところです。一気に睡眠環境を改善するのも難しいですから、まずは室温を下げるところから始めるのもいいかもですな。