EM菌ってどうよ? 本当に他の微生物より役に立つの?
「EM菌ってどうなんすか?」とのご質問をいただきましたんで、考えてみましょう。
EM菌は琉球大の比嘉博士が命名した「役に立つ微生物」の通称。抗酸化物質を生み出す微生物をブレンドしたもので、生ごみを分解して肥料にしたり、水道水をキレイにしたり、悪臭が消えたりといった効果がうたわれております。AmazonでもEM菌を使った生ごみ処理剤が売ってますね。
ただ、個人的にEM菌にはまったく興味がありませんでした。というのも、生みの親である比嘉博士の発言がどエライことになってまして(1)。
最悪な状況が、逆に力となって最善の結果が現れた場合、それらはすべてEMのおかげであると考えることがスタートです。すなわちEMは神様だと考えることです。
そんな三波春夫みたいな言い方されても…という感じ。さらに、博士が主張するEM菌の効能もすごすぎで、
- 健康になる
- 電気代が減る
- 地震がなくなる
- 人間関係がよくなる
- イジメがなくなる
- 頭が良くなる
などなど、エリクサーを超える万能薬みたいな扱いになっております。この時点で普通はドン引きでしょう。
とはいえ人間にとって微生物が大事なのは間違いなく、いちおうEM菌についても調べてみましょう。
まずは、比嘉博士が1994年に発表した論文(2)から。微生物に関する過去のデータをならべつつ「EM菌は凄いよ!」と主張するレビュー論文なんですが、最後のほうに「結果が一貫して再現できないのが難点だ」と書いてあって面食らいました。博士によれば、土壌の温度や日当たりによって微生物の働きは変わるからしょうがないって話らしい。でも、それだとEM菌が他の微生物資源より優秀だって話にならないんじゃ…。
さらに他の実験も見てみますと、
- ブラジルの果樹園で行われた実験では、土壌にも作物にも何の変化も出なかった(3)
- 中国で行われた実験では田んぼにEMぼかしを使ったが、統計的に有意な差は出なかった(4)
- オランダではDNA分析を使ってEMが肥料にあたえる影響を調べたが、肥料の質には何の影響もなかった(5)
といったところ。どうもEM菌が他より優れてるわけじゃなさそうですね。
もちろん、EM菌で良い結果が出たってデータもいくつかあるんですが(6,7)、
- EM菌と一緒に別の肥料も使っている
- EM製品を売ってる会社が出資してる
ってケースが多いもんで、ちょっと信用しづらい感じ。総合的に見れば、EM菌も普通に役立つ微生物だって結論じゃないでしょうか。
そんなわけで、EM菌に目立ったメリットはなさそうなんで、あんま期待せずにコンポストとして使うぶんにはいいんじゃないでしょうか。そんな高価なもんでもないですし。個人的にはEMを神様と考えたくないので、特に手を出さないつもりですが。