プチ断食にありがちな3つの誤解「筋肉は減る?代謝は下がる?テストステロンは減る?」
こないだ「プチ断食」の種類について書いたところ、質問をいくつかいただきまして。結構みなさん似たような疑問を持つようなので、ここで簡単にまとめておこうかと思います。
疑問1.プチ断食ってテストステロンが下がっちゃうんじゃない?
テストステロンは、筋肉の発達に必要な男性ホルモン。こいつが足りなくなると活力が激減しまして、うつ症状や慢性疲労が起きたりしちゃうね。毎日を楽しく暮らすために必須のホルモンであります。
確かに、カロリー制限をするとテストステロンが減りがちなのは間違いないところ。プチ断食で同じ悪影響が出ても不思議じゃない気がしますね。
が、個人的には特に心配しておりません。プチ断食とテストステロンについては大昔からデータがありまして、たとえば1987年の実験(1)では10名の男性に56時間の断食をしてもらったんですが、ひと晩ぐらいなら特にホルモンの分泌は下がらなかったとか。
さらに参考になるのが2013年の実験で、6名の男性の10日の完全断食をしてもらったんですね(2)。うーん、大変。
その結果は、テストステロンは断食スタートからジワジワと下がり続けて、9日めで急激に減少したんだそうな。プチ断食は長くても24時間がマックスなんで、まずテストステロン減少の心配はなさそうであります。
もうひとつ興味深いのが、イスラム教徒のラマダンを調べた2009年の研究(3)。ご存じのとおりラマダンの期間は日中に何も食べないので、プチ断食に近い変化が起きるわけですね。
すると、ラマダンはホルモン分泌に悪影響をあたえなかったどころか、逆にテストステロンの量が増えたというんですよ。どうやら短期間の断食のおかげで体が男性ホルモンに対して敏感になり、結果としてテストステロンのリバウンドが起きたみたい。
個人的にもプチ断食をすると元気になった気がするんですが、意外とテストステロンの増加が原因のひとつなのかも。
疑問2.プチ断食をすると代謝が下がっちゃうんじゃない?
こちらも定番の質問であります。カロリー制限を続けると脂肪が燃えにくくなっちゃうのは有名な話で、プチ断食でも同じ現象が起きるんじゃないか、と。
当然の疑問ですが、これまた心配はご無用。この問題については1997年の論文(4)が有名で、過去に行われたプチ断食と代謝のデータをまとめたメタ分析になっております。
たとえば1日3,000kcalを食べる人がいたとして、
- 1回500kcalの食事を6回にわけて食べる
- 1回3,000kcalの食事を1日1回だけ食べる
の2パターンで代謝の違いをチェックしたわけですね。
その結果、24時間のあいだにカロリー消費量の違いはなし。食事を分けようが朝食を抜こうが、代謝にはまったく変わりはなかったそうな。
もうひとつ2009年のメタ分析(5)でも結果は同じで、176件の論文を調べても、食事の回数と代謝にはなんの関係もなかったとのこと。本格的に代謝が落ち始めるのは断食をはじめてから72時間後だそうで、プチ断食ぐらいならなんの問題もなさそうであります。
疑問3.プチ断食をすると筋肉が減っちゃうんじゃない?
カロリーが足りないと筋肉が減るのは当然の話。確かに、プチ断食で筋肉が減っちゃうイメージはあるかと思います。
が、ここで参考になるのが2009年の実験(6)。8名の男女に2週間のプチ断食をやってもらったところ、通常の食事パターンとくらべて筋肉の分解量はほぼ同じだったそうな。つまりカロリーの摂取量さえ同じであれば、何時に食事をしようが筋肉への影響は変わらないわけですね。
さらにデンマークのオーフス大が行った実験(7)によれば、そもそも72時間の断食を行っても筋肉の分解スピードは変わらなかったとか。もちろんカロリーは大事ですが、断食中もちゃんと筋トレをしていれば、そこまで極端に筋肉の分解を心配する必要はないみたい。
そんなわけで、プチ断食ぐらいなら筋肉への悪影響はなし。安心して取り組んでいただければと思います。
まとめ
いろいろ見てきましたが、いまのところプチ断食に目立ったデメリットは確認されておりません。もちろん、日常的にストレスが多い人や、ホルモンバランスを崩している女性には悪影響が出ることもありますが、基本的には自由に試していただいて問題はないかと思っております。
Image credit: shutterstock