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怒りがわいたときは心のなかで10まで数えろ!ってアドバイスを実践すると、逆に怒りが増しちゃう場合もあるよーという話

Fist 114

 

 「怒りがわいたときは心のなかで10まで数えろ!」ってアドバイスがありますが、その効果は時と場合によりけりだって論文(1)が出ておりました。

 

 

これはニューヨーク州立大の実験で、312名の学生を対象にしたもの。まずは全員に「子ども時代に好きだったテレビ番組」ってお題でエッセイを書いてもらい、研究者に提出してもらったんですね。

 

 

その後、エッセイのクオリティとは無関係に、すべての参加者へ以下のコメントを返したらしい。

 

いままで読んだなかでも最低のエッセイだ。こんな意見を書くのはバカだけだろう。こんなバカが大学に入れたとは信じがたい。

 

こうして学生たちの怒りをかき立てたところで、全員に「ヒドいコメントをした研究者に復讐するチャンスをあげます」と提案。具体的には、自分を怒らせた研究者に対し、好きな時間だけ爆音のノイズを聴かせる罰ゲームをやらせあげるよ、と申し出たんだそうな。

 

 

その際、参加者を以下の4グループにわけたんですよ。

 

  1. 罰ゲームの時間を決める前に1から10までゆっくり数える
  2. 何も考えず、すぐに罰ゲームの時間を決める
  3. 罰ゲームの時間を決める前に1から10までゆっくり数える。ただし「相手に罰ゲームをさせた場合、自分も罰ゲームをさせられる可能性があります」と言われる
  4. 何も考えず、すぐに罰ゲームの時間を決める。ただし「相手に罰ゲームをさせた場合、自分も罰ゲームをさせられる可能性があります」と言われる

 

半分のグループは復讐のチャンスを与えられたいっぽうで、相手から報復されてしまう可能性も出てきたわけですね。



その結果はと言いますと、

 

  • 「自分も罰ゲームを受ける可能性がある」と言われたグループは…
    • 1から10まで数えたグループは怒りのレベルが低く、復讐罰ゲームの時間を短く設定した(平均で3.9分)
    • すぐに罰ゲームの時間を決めたグループは、平均で6.6分の罰ゲームを設定した
 
  • 「罰ゲームを受けるのは相手だけ」と言われたグループは…
    • 1から10まで数えたグループは怒りのレベルが逆に上がり、復讐罰ゲームの時間を長く設定した(平均で8分)
    • すぐに罰ゲームの時間を決めたグループは、平均で5.7分の罰ゲームを設定した

 

といった感じ。つまり、1から10まで数えれば冷静な判断ができるようになるんだけど、決してネガティブな感情が収まったわけじゃないんだ、と。自分が報復される可能性がない場合は、相手をさらに苦しめるような選択もしちゃうんですね。なんとも人間的であります。

 

 

そんなわけで、1から10まで数えるテクニックの効果は時と場合によるっぽい。もっとも現実の世界では、相手から絶対に報復されない状況なんてまずないので、だいたいの場面では有効だと考えてよさそうですが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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