狩猟採集民の注意力が都会の住人にくらべてハンパない件
いま一番大事なのは「注意力」
現代人にとっては「注意力」こそがもっとも重要な資産なのだ!って考え方がありまして。
なにせ、人間の注意力ってのは、スマホが目の前にあるだけでも途切れちゃうぐらい繊細なもの。情報にあふれた現代では、注意力こそが最も貴重な能力になっていくわけですな。
ってところで、ロンドン大学が「狩猟採集民」と「現代人」の注意力の違いを調べた、おもしろい研究(1)を発表しておりました。
狩猟採集民の注意力をチェックした
これはナミビアのヒンバ族を対象にした実験で、
- 伝統的な狩猟採集生活をおくるヒンバ族71人
- 若い頃に都市部に移り住んだヒンバ族57人
- 生まれも育ちもロンドンのイギリス人53人
に協力をお願いして、全員にフランカー課題などの認知テストを実行したもの。「現代化」のレベルを3段階にわけて、注意力の違いを調べたわけですね。
生産性を高める能力の違いを調べた
研究者がチェックしたのは、以下の3つのポイントであります。
- 注意力:ひとつの対象に意識を向け続ける能力
- ワーキングメモリ:情報を一時的に頭のなかに保存しておく能力
- 認知コントロール力:不要な情報に気を取られない能力
いずれも生産性を高めるためには必須の能力ばかりですねー。
狩猟採集民は一点集中の能力がやたら高い
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 注意力と認知コントロール力については、伝統的なヒンバ族がもっとも高かった(ロンドンっ子にくらべて40%ぐらい高い)
- 都市部に住むヒンバ族の成績は、ロンドンっ子とあまり変わらなかった(微妙にヒンバ族のほうが高いけど)
- いっぽうで、ワーキングメモリの性能は伝統的なヒンバ族のほうが低かった
みたいな感じ。伝統的なヒンバ族は、とにかく一点集中の能力が非常に高いんだけど、一時的な記憶力は意外と低かったみたい。
都市部に住むと脳の警戒システムがオンに
このような結果が出た理由として、研究者は「都市に住むと扁桃体が過敏になるからじゃない?」と推測しておられます。扁桃体は脳の警戒システムみたいなもので、危険がありそうな状況でスイッチがオンになるんですな。
どういうことかと言いますと、
- 都市部に住む
- 建物や人が多いため脳の警戒システムがオンになる
- いろんな物を警戒するので注意力が分散
- 周囲に何があるのかを覚えなきゃいけないのでワーキングメモリも発動
- 注意力が低下!ワーキングメモリが向上!
みたいな流れです。いっぽうで伝統的な狩猟採集民は、
- サバンナに住む
- 周囲に情報が多くないため、注意を散らす必要がなくなる
- 警戒の対象が少ないのでワーキングメモリを使わない
- 脳はデフォルト状態のまま
- 注意力が上昇!ワーキングメモリは向上せず!
って感じになっていくわけですね。
まとめ
もちろん、これはどっちが良い悪いって話ではないんですが、研究者によれば「都市部に移り住んだヒンバ族は幸福度が下がる傾向があった」とのこと。そりゃあ、脳の警戒システムがオンになりっぱなしの生活って嫌ですもんね。
この問題に対する特効薬はないものの、とりあえず私は「もっと自然の中に出かけねば!」って気分にさせられました。暖かくなったらトレイルランニングでも行くか…。