自分の人生に意味を持たせるための「一般のYou」活用法
自分の人生をうまくストーリー化するには?
こないだ、満足な人生を送るには「物語」が必要だ!みたいなエントリを書きました。ざっくり言うと、自分のアイデンティティをストーリーとして把握できないと、人生から意味が失われちゃうよーといった話です。
自分の物語を組み立てるための方法はいくつかありますが、なかでも研究例が 多いのは「筆記開示」のテクニックでしょう。やり方はシンプルで、精神にキツかった体験を20分だけストーリーとして紙に書きまくるだけで、幸福度や免疫システムが改善したというんですな。それぐらい人間には物語が必要なんだ、と。
で、新しく出たデータ(1)では、この筆記開示の効果をグンと高める方法を検証していておもしろかったです。
「一般のYou」でネガティブ体験をストーリーに
これはミシガン大学の実験で、約600人の男女を以下の3グループにわけたんですね。
- ネガティブな体験を普通に紙に書く
- 「一般のYou」を使ってネガティブ体験を紙に書く
- 普通の体験を紙に書く
「一般のYou」ってのは「あなた」の意味じゃなくて、一般論や大多数の人について語るときに使うやつ。「勝つ時があれば、負ける時もある(You win some, you lose some.)」みたいなパターンですね。
要するに「俺はテストに失敗した」を、「人は誰でもテストに失敗する」と書き換えたようなイメージでしょうか。これでどんな違いが出るかを見たわけですね。
「一般のYou」がネガティブを中和する
すると、結果には明白な差が出まして、「一般のYou」を使うほうが過去のトラウマ体験に意味を感じられるようになったんですな。過去の嫌な経験を、ちゃんと一貫したストーリーとして語れたわけですね。
研究者いわく、
過去のデータを見ても、ネガティブな体験を広くとらえなおすことで、多くの人は、そこに意味を見出そうとするようになる。(中略)
おそらく「一般のYou」には、出来事を遠くから見つめ直させる働きがあり、結果として困難な体験を中和する効果を持つのだろう。「人生は難しい。だから私は大事な物を失う心構えをしなければならない」と表現するよりも、「人生は難しい。だから人は大事な物を失う心構えをしなければならない」と言うことで、その体験が自分だけのものではないことに気づくからだ。
とのこと。これは「自分を壁に止まったハエだと考えると怒りが消える」って話と似ていて、「一般のYou」はネガティブな状況を第三者の視点で見直すテクニックのひとつなわけですね。
日本語ではどうするか?
といっても日本語には「一般のYou」がなくて、翻訳のときは主語を省略して書くのが普通ですからねぇ。あえて「一般のYou」を使うほどの心理的なインパクトがなさそうな気もいたします。
まぁ要はネガティブな体験から心理的な距離を取れればいいので、「人は時にテストに失敗する」みたいに一般論として書き直すか、いっそのこと「彼はテストに失敗した」みたいに別人の話として書いてみるのもアリかもしれません。