「糖質を摂ったほうが頭が働く!」はどこまで本当なのか?
砂糖で頭は良くなるか悪くなるか
昔から「砂糖で頭が良くなるのか悪くなるのか?」 って論争があるんですよ。
たとえば、過去のデータでは、砂糖入りのジュースを飲みまくったマウスの脳は学習能力が崩壊!みたいな 怖い報告があるいっぽうで、「砂糖が脳に与える影響って大したことなくない?」とか「脳は絶対に糖質が必要だから、逆に脳力を上げるには砂糖が必須」みたいな見方もあって、なんだかよく分からない感じ。
糖質制限ダイエット界隈では「砂糖で脳にダメージが!」って説がなかば常識のように語られたりしますが、まだなんとも言えないのが現状であります。
糖質で脳機能が上がるかどうかはサッパリわからない
といったところで、「砂糖を食べると脳の機能は上がるの?」ってところを調べたデータ(1)が新しく出まして、個人的にいろいろと参考になりました。
これはオタゴ大学の実験で、研究チームは次のように申しております。
ブドウ糖を飲むと脳の海馬エリアに影響があり、若者でも高齢者でも、記憶力テストの成績が良くなることはよく知られている。この傾向は、代謝に問題があったり(糖尿病とか)、神経疾患(パーキンソン症候群とか)を抱える者にほど顕著だ。
ところが一部の研究では、ブドウ糖による認知機能への影響については食い違った結果が出ている。なかでも、ワーキングメモリ、反応速度、注意力、顔の認識力といったタスクについては、ブドウ糖の影響はよくわからない。
たとえば、いくつかの実験では、脳の情報処理スピード、注意力、ストロープテストの成績が上がったとの報告が出ている。ところが、その他の実験では、ブドウ糖でまったく変化がなかったか、逆に悪影響が出たとの報告も少なくない。
いろいろ書いてますが、要は「糖質が頭にいいのか悪いのかはサッパリわからん」ってことですね。
この「食い違い問題」が起きる原因については、「認知テストの違いでは?」とか「ブドウ糖とフルクトースの違いか?」とか言われてますが、こちらもよくわからず。とにかく砂糖の擁護派も否定派も、みんな少ないデータをもとに適当なことを言ってるのが現状と申せましょう。
いろんな糖質が認知に与える影響を調べた
では、そんな状況下でこの研究が何を調べたかと言いますと、まずは実験デザインは以下のような感じです。
- 参加者は49人の男女。平均年齢は22.6才でBMIは17.6 – 32.7 kg/m2ぐらい
- 調査に使われた甘味料は、ブドウ糖、果糖、スクロース(砂糖の主成分)、スクラロース(人工甘味料)の4種類
- 4種類の甘味料を飲んだあとで、刺激への反応速度、計算能力、ストループテストをやってもらい、認知機能の変化を調べる
- 実験期間は16週間で、それぞれの甘味料につき4週間にわたってデータを集める
というわけで、いろんなタイプの糖質と認知テストを組み合わせて、どんな変化が出るかを調べたんですね。計算能力やストループテストなどは、いずれも前頭前野の能力を計るテストとしては定評の方法であります。意外と過去にこういう研究ってなかったんですよねー。
砂糖やブドウ糖で一時的に認知テストの点数が下がった
さて、結論がどうだったかを論文から引用しますと、
ブドウ糖とスクロースは、有意に認知テストのパフォーマンスを下げた。いっぽうで、果糖と人工甘味料には、そのような悪影響は見られなかった (p<0.05)。
とのこと。なんと、砂糖やブドウ糖では脳機能が一時的に下がり、果糖と人工甘味料にはなんの問題もないという結果であります。
また、この実験では「空腹時」と「食後」でも効果の違いをくらべてまして、お腹が空いた時間が長くなるほど、ブドウ糖&砂糖による認知テストの低下率は大きかったとのこと。うーん、なるほど。
もちろん、この実験はあくまで短期的な変化しか比べてないんで、長期的な影響は不明であります。ついでに、ブドウ糖と砂糖で認知機能が下がる理由もよくわかってないんですが、とりあえず「脳を働かせるために定期的に何かを食べよう!」みたいなアドバイスには従わないほうがよさげですかねぇ。
そもそも、脳が正常に動くのにそこまで大量の糖質は不要なので、普通に食事をしてれば、あえて追加で補う必要もないんでしょうな。