瞑想をすると逆に仕事のモチベーションが下がっちゃうぞ!というミネソタ大学研究
「瞑想」を取り入れてる企業が増えてきたのは有名な話。近ごろは、GoogleやAppleなんかにも瞑想ルームがあるほどでございます。
ただ、新しい論文(1)では、「瞑想って仕事の生産性アップには向いてなくない?」って結論になってて、ちょっとおもしろいです。
これはミネソタ大学の研究で、5つの実験をとおして「瞑想でモチベーションは上がるか?」って問題を調べております。ここで研究者が何を考えたかと言いますと、
- 瞑想って「いまここ」の不満もありのままに受け入れることだよね?
- でも、仕事のモチベーションを高めるには「いまの不満を改善したいって欲望」が必要じゃない?
- ってことは、瞑想をするとモチベーションが下がるんじゃない?
って感じです。瞑想はストレスの解消にはいいんだけど、現在の不満も消しちゃうから、生産性アップには結びつかないのでは?って仮説を立てたわけです。なんだか一理ある気がしますな。
実験はだいたい100人前後の男女を対象にしていて、たとえばひとつめの実験はこんな感じです。
- 109人の男女を集め、そのうち半分には15分の瞑想ガイド音声を聞いてもらう(呼吸や体の感覚に集中するタイプの瞑想)
- 残りの半分には、「好きなことをなんでも考えてね!」と指示して15分を過ごしてもらう
- その後、アナグラムやクロスワードパズルをやってもらい、それぞれのグループの達成度を測る
ってことで、瞑想をしたら「面倒なタスクをやり抜くモチベーションは上がるか?」ってところを調べたわけっすね。
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 瞑想をした人は、瞑想をしなかった人に比べて大幅にモチベーションが下がった!(M = −0.41 vs 0.37)
だったそうな。瞑想をしちゃうと、細かくて複雑なものへのモチベーションは下がるのではないか?ってことですな。ほかにも4つの実験が行われてますが、だいたいの手順と結論は同じです。
研究者いわく、
「マインドフルネスは、本質的にあらゆる障害の治療薬になり得る」と言われることもあるが (North, 2014, p. 1; see also Grant, 2015; Joiner, 2017)、今回のデータはより複雑な結論をあきらかにしている。
確かに、マインドフルネスは精神的なメリットをもたらすかもしれない。たとえば、日々のストレスや不安からの開放などだ。ところが、そのプロセスのなかで、マインドフルネスは日常の問題に取り組む欲望も下げてしまう。
とのこと。仏教の研究なんかでも、「悟った人って欲望が消えるから何もしなくなるんじゃない?」って問題定義がされることがあるんですけど、実際にそれと似た現象が確認されたわけですな。
とはいっても、個人的には、この結果を現実の世界に適用できるかなーって気持ちもあるわけです。というのも、この実験では、アナグラムみたいに「本人にとって無意味なタスク」を使ってるんですよね。
当然ながら、現実の仕事では、無意味なタスクばかりやらねばならないケースはそこまでありませんからねぇ。そう考えますと、「価値観とか意義をベースにしたタスクなら別に問題なくないか?」と言えるのではないかと。いわゆる内的報酬にもとづくモチベーションですな。
一方で、ストレスや不安が生産性を下げるのは間違いないわけで、そこらへんを加味すれば結局はマインドフルネスのほうがメリットは大きいような気もいたします。つまりは、
- 瞑想は「いやいやながら行う仕事」に対するモチベーションを下げる作用がある
- なので、瞑想を生産性アップに使いたいなら、まずは「仕事の意味」をハッキリさせたほうがいいよ!
ってのが、この論文から得られる教訓ではないかと。ちなみに、「仕事の意味」のハッキリさせ方については「最高の体調」の第6章にくわしく書いてますんで、そこらへんを合わせてご参照ください(最後は宣伝)。