アルツハイマーのダメージを防ぐための「1日の歩数」がわかったかもな件
「運動が脳にいい!」って話は何度も書きすぎてて正直飽きてるレベルなんですが、新しいデータ(R)は「アルツハイマーを防ぐためのエクササイズ量はこれだ!」みたいな内容になってまして、取り合げるしかありますまい。
これはサニーブルック研究所の論文で、平均年齢75歳の男女182人が対象。ハーバード脳研究(R)っていう有名なデータを使っていて、
- 参加者に万歩計をわたして7日間の活動量を調べる
- PETを使って脳のアミロイドベータの量を調べる(アルツハイマーの指標ですな)
- みんなの認知機能をテストで調べる
といった要素をチェックしたあと、すべてのデータをひっくるめて分析したんですよ。
で、年齢、性別、収入といった定番の要素を調整したら、こんな傾向が確認されました。
- 全体の25%はアミロイドベータが平均よりも多い状態だった
- どれだけ日常の身体活動が増えても、アミロイドベータの総量には変化がないっぽい
- ただし、普段からよく体を動かしている人は、アミロイドベータによる脳機能の低下が遅くなる (β 0.03, 95% CI 0.02-0.05; P<0.001)
- 同じく、よく体を動かす人は脳細胞が減る量も少ない
- 心疾患リスクを調整しても、運動によるアルツハイマー予防効果は確認された
ってことで、運動はアミロイドベータの量を減らしてくれるわけじゃないものの、脳機能の劣化は防いでくれる可能性が高いらしい。
研究者いわく、
もっとも驚くべき発見は、身体活動が認知機能の低下に良い影響をあたえるだけでなく、アミロイドが蓄積した人の脳組織が減るスピードもブロックしてくれることがわかった点だ。
とのこと。これまでも運動で頭が良くなるのはわかってたけど、アルツハイマーの悪影響も防いでくれるってのは結構すごい発見なんですな。
こうなると、具体的にどれぐらい運動すればいいのかが気になりますが、
身体活動の良い効果は、ひかえめなレベルでも確認されたが、もっとも効果が大きいのは8900歩だ。10000歩よりはやや少ないレベルなので、達成しやすいだろう。
だそうです。1日8,900歩なら、通勤の歩数に加えてちょっと散歩すればどうにかなるレベルじゃないでしょうか。
運動の効果については、まだしっかりと説明できるメカニズムはない。いったいなぜ脳組織が保存されるのかは、いまだオープンクエスチョンだ。
アミロイドベータとタウタンパク質は、まちがいなく認知機能を低下させる。しかし、そのリスクを減らすためにやれることはまだ残されている。すでに脳がダメージを負った人でも、やれることはあるのだ。
まぁハーバード脳研究ってのはちょっとサンプルに偏りがあって、わりと教育レベルが高い人しかふくまれてないって問題はあります。そのせいで結果がゆがんでる可能性もなくはないんですけど、とりあえずの指標として使うのはいいんじゃないでしょうかー。