小さな皿で食事をするとダイエットできる!はどこまで正しいのか問題
「皿のサイズを小さくすると食事の量が減る!」って考え方をご存じの方は多いでしょう。大きな皿で食事をするとつい食べすぎちゃうけど、小さな皿だとそこに盛られた量しか食べなくなるって話ですね。
これは心理学の世界で昔からよく言われる説でして、過去にもいくつかのメタ分析(R,R)が行われて「皿のサイズは食事量に影響を与える……かも」みたいな結論が出てたりします。ただしここらへんのデータはまだ判断が難しくて、
- かなりの数の実験はかなり質が低い(というか、そもそもランダム化されてるのかすらわからないケースも多い)
- 参加者がどうにも一般的な人口を代表してない(たとえば子供を使った実験が多かったりとか)
みたいな問題があって、どうにもモニョモニョしてるのが現状なんですよ。
というわけで、この「皿のサイズで食事量はコントロールできるか?」問題については、「もっと良い感じのテストがあるといいなー」って感じだったんですが、近ごろ良い具合のデータ(R)が出てて、まことにありがたいことでした。
これはイギリスに住む136人を対象にした試験で、18〜60歳までの男女が対象。参加者を選ぶにあたっては、意図的に男女比を同じにしたり、いろんな収入レベルの人たちからピックアップしたりと、サンプリングにはかなり気を使った模様。ちなみに、この136人って数字は過去の類似研究のなかでは最大の数でして、これもいいですねー。
で、実験では参加者を2つのグループに分けてます。
- 小さな皿(直径23センチ)で食事する
- 大きな皿(直径29センチ)で食事する
食事の内容はトマトパスタベイクがメインだったそうで、私はよく知らない料理だったんですが、パスタをオーブンで焼いて作るイギリスの定番食なんだそうな。
その上で、参加者には「30分で好きなだけ食事をしてくださいねー」と指示しまして、どれだけ食事量に違いが出るかをチェックしたとのこと。食事の様子は動画で撮影されまして、みんなのカロリー量を調べたそうな。
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 皿のサイズは消費カロリーにほぼ影響を与えない!
だったそうです。もうちょい具体的な数字を挙げると、
- どちらのグループも600kcalちょいのカロリーを摂取していた
- 両グループのカロリー差は19kcalぐらいで、効果量に直すと0.07ぐらいだった
だったそうで、これは確かに「まったく差がない」と言ってもいい結果ですね。うーん、意外。
まぁもちろんこの結果だけをもって「皿のサイズはダイエットに無意味!」とは言えんのですが、今回の実験がいままでで最も良いデザインなのも確かだったりはします。また、あえて「皿のサイズでダイエット」説を擁護するなら、1食の差が19kcalだったとしても、そのまま数年も続ければそれなりの差にはなりますしね。
ちなみに、いちおう過去のデータと比較しておくと、
- 2014年のメタ分析(R)では、皿のサイズは微妙に食事量に影響するが、実験ごとに結果の食い違いが激しいとのこと
- コクランの2015年レビュー(R)では、皿のサイズによって40 〜 225kcalの違いが出るって結論だけど、大半のデータはどうにも質が低いから信頼しづらいなぁ……とのこと
みたいになってまして、「もしかしたら効果はあるかもだけど、全体的に見ればそんな期待しないほうがいいかなー」ぐらいの雰囲気がただよってたりします。
そんなわけで現時点の結論としては、
- 別に悪影響があるわけでもないし、ダイエットに小さな皿を使って見るのも悪くはない
- ただ、そんな劇的な効果は期待しないでね!
ぐらいのところに落ち着きそうですねー。