豆を食べれば運動の能力が上がるかも?という実験のお話(ただし偽陽性の可能性大きめ)
「豆で運動のパフォーマンスが上がるかもだ!」というおもしろデータ(R)が出ておりました。
なんかあんま聞かない話のようにも思えますが、「豆で運動能力アップ」ってのは根も葉もないことではなくて、実は昔から「豆が血流を上げるのでは?」みたいな考え方はあったりします。というのも、豆にふくまれてるイソフラボンには一酸化窒素を生み出す働きがありまして、血管を広げてくれるんですよ。血流が上がれば当然エクササイズでパワーを発揮しやすくなるわけっすね。「一酸化窒素?なにそれ?」という方は、「よいこのための『一酸化窒素』入門」をご参照ください。
で、これがどんな実験だったかと言いますと、参加者は普通より身体能力が高い25人の男性(平均年齢31歳)です。まずは全員のVO2peak(ざっくり言えば体力の指標)やサイクリング能力などを計測したあとで、
- 豆を発酵させたサプリを飲みつつ20kmのサイクリングをする
- プラシーボサプリを飲みつつ20kmのサイクリングをする
って2種類のテストをランダムで2回ずつやっております。各テストの間は48時間を開けたそうで、Fermalifeっていう豆系サプリを使ったみたい(サイクリングの1時間前に服用)。
でもって、どんな結果が出たのかと言いますと、
- 豆サプリを使った場合、サイクリングのタイムが0.22分だけ改善した
- 同様に、豆サプリを飲んだら平均の心拍数が下がり、パワーアウトプットとスピードも増した(7 W (+/- 3 W) と0.42 km/h (0.42 +/- 0.16))
- この効果は、もともとフィットネスレベルが高い人ほど大きく確認された(フィットネスレベルがそこそこな人への効果はいまいちよくわからない感じ)
だったそうな。そんな劇的な変化ではないものの、やはり豆は運動に良いのかも?と思わせる結果が出てますね。
なんだけど、これで「運動の前に豆を食べよう!」って話になるかと言えばやや微妙で、データを見てみますと、
- タイムトライアルの変化に関するp値が0.04(かなりボーダーライン)
- 95%信頼区間が-0.43 to -0.01分
- いろんな要素を比べすぎ(比べる要素が多いと偽の結果が出やすくなる)
- 豆系のプロダクトを作ってる会社がスポンサーになってる
みたいな問題がありまして、どうも偽陽性の可能性が捨てきれんなーという印象ではあります。
そんなわけで、手ばなしにスポーツサプリとして豆を推奨するのは難しいんですけど、いちおう前提の仮説はおもしろいんで、イソフラボンの一酸化窒素アップ作用については今後の展開を期待したいところ。もし可能性にかけてみたいという方がいれば、運動の1時間前にイソフラボンを飲んでみるのもアリかもしれません。