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太り気味な人は午前より午後に運動した方がいいのでは?説


  

運動するのに最適なタイミングはあるのか?って話題は昔からありまして、

 

 

みたいな話を過去に取り上げたことがありました。個人的には「まぁ運動の成果に差があるとしても大したもんじゃないので、自分の好きな時間にやるのがベストでは?」ぐらいに思っております。

 

が、近ごろ出た文献(R)では、「代謝がヤバい人は午後の運動の方がいいんじゃない?」みたいな結論になってて勉強になりました。「代謝がヤバい」ってのは糖質や脂質をちゃんとエネルギーに変換できない人のことで、メタボなどにありがちな状態っすね。

 

 

そもそも人間の代謝ってのは、体内時計によってコントロールされてる部分が多くて、メインの時計(視床下部)が環境の明るさの影響を受けるのに対して、その他の時計(肝臓、骨格筋、脂肪組織など)は食事や運動のタイミングに影響を受けるんですよ。なので、代謝が不調な人たちは、運動タイミングによって得られるメリットが変わる可能性があるわけっすね。

 

 

さらに、上でも軽く触れたように、いくつかの文献では「運動能力やパフォーマンスは時間帯で変わる!」って報告も多くて、過去には「糖尿病の患者さんは午前中よりも午後の運動の方が血糖値が改善しやすい」なんてデータもあったりするんですな。いろいろまとめると、やっぱ代謝が低下してる人ほど運動の時間帯を気にすべきなのかなーって気がするわけです。

 

 

ってことで本研究では、以下のような調査をしております。

 

  1. 過体重および肥満の男性32人を集める(BMI26以上、平均年齢59歳)

  2. みんなに12週間の有酸素および筋トレを指示し、その際に午前中に運動するグループ(8:00-10:00、12人)と、午後に運動するグループ(15:00-18:00、20人)に分ける

 

参加者には「いつもの食生活を維持するようしてねー」と指示が出てまして、それぞれの運動メニューはこんな感じ。

 

  1. 週に2回エアロバイクで30分間の有酸素運動
  2. 週に1回筋トレ(デカい筋肉を中心に10回3セットずつ)

 

でもって、運動の4日前と48~72時間後インスリン感受性(糖の代謝が正常化どうか)を測定したところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 午後に運動するほうが代謝の改善効果は高かった


  • 空腹時血糖値は、午後のグループでは低下(-0.3 mmol/L)し、午前のグループでは逆に上昇(+0.5 mmol/L)した


  • 末梢のグルコース取り込みとグルコース酸化は、午後のグループで増加し、午前のグループではわずかに減少した(つまり、午後に運動した方が糖をエネルギーに変える能力が上がった)


  • 脂肪組織のインスリン抵抗性も、午後のグループで増加(+5.9%)し、午前のグループで減少(-4.5%)した)

  • さらに、午前に運動したグループに比べて、午後のグループは脂肪量(-1.2kg vs. -0.2kg)および体脂肪率(-1% vs. -0.3%)の減少が大きかった

  • 午前に運動したグループに比べて、午後のグループは最大パワーの増加(+36.6W対+24.4W)

 

ということで、全体的に午後に運動をしたほうが糖の代謝が改善し、体型も改善しやすかったらしい。

 

 

まぁグルコース酸化の結果については、技術的な問題のせいでサンプルサイズが少なくなっちゃってますが、全体としては「代謝が良くない人は午後に運動したほうがいいのかなー」ぐらいに思わせる結果ですね。

 

 

もちろん、男性のみが対象の実験なので女性でも同様の結果を得られるかどうかは不明ですし、標準体型な人でも似たような感じになるかも謎ですが、上記の実験対象に当てはまる人は試してもいいかもっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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