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今週半ばの小ネタ:女性は本当に男より感情的なのか? メンタルを改善したきゃ呼吸の変化に気づこう! 勉強の前には筋トレが効く説


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

女性は本当に男より感情的なのか?問題

こないだのニコ生の質疑応答放送をしてたら、「なぜ女性は男性より感情的なのか?」といった質問を女性の方からいただきまして、「いやー、そういう俗説って別にデータで確認されてないっすよ」みたいな話をしたんですよ。そこらへんに興味がある方は「ジェンダーと脳」などをお読みいただければと思いますが、男女の脳って意外なほど差がなかったりするんすよね。

 

 

で、新しいデータ(R)もそのへんの話を調べてくれてまして、非常に参考になりました。

 

 

これは142人の男女を対象にした研究で、

 

  1. その日の感情の動きを記録するオンライン調査を毎日行う

  2. これを75日間続けて男女の違いをチェックする

 

みたいな内容になってます。日々の記録をつけてもらったうえで、男女の感情レベルに差があるかどうかを見たわけっすね。

 

 

で、ここで結論から言っちゃうと、

 

  • 男性と女性が経験する感情の強さには、ほとんど差がなかった

 

だったそうです。感情の変動と強度については男女でほぼ違いがないんだ、と。研究者いわく、

 

感情の高低は、ホルモンだけでなく、さまざまな影響を受けていることが明らかになった。

 

とのことで、かつては「女性ホルモンのバランスのおかげで、女性は感情的になるのだ!」とか言われてたんだけど、実際にはそんなこもともないらしい。

 

 

ただし、これは「男性と女性が同じ感情を経験する」って話ではなく、あくまで感情の変動パターンが似ているってだけなんでご注意ください。過去の研究だと、たとえば女性の脳は感情を喚起する写真に反応しやすいって知見もでてたりしますんで、その点で男性と女性はちょっと異なる方法で感情を経験してる可能性はあったりはします。

 

 

ただ、この研究を見る限り、男女ともに同じような感情の変動と強度を持ってるのかも?って可能性はありそうっすね。

 

 

 

メンタルを改善したきゃ呼吸の変化に気づこうぜ!

たいていの人は、不安になった際に、無意識のうちに自分の肉体の変化をもとにメンタルを調整してたりします。手のひらの汗や心臓のドキドキ、速い呼吸などをベースに、「あ!いま自分はこんなに不安を感じてる!」と認識して、そこから具体的な対処に入っていくわけです。

 

 

これは「無(最高の状態)」でも説明した「自分の肉体の状態を把握する機能はメンタルの改善に欠かせないよー」って話と似たようなポイントです。自然な身体の変化が察知できないと、不安の対策ってやりにくくなっちゃうんですよね。

 

 

ってことで、新しい実験(R)では、不安の少ない健康な男女の30人と、中程度の不安を抱いている男女30人を集めて、こんな調査をしてます。

 

  1. 自分の肉体の変化を察知する能力を測るアンケートに答えてもらいつつ、同時に2つの呼吸法を指示する

  2. さらに脳の活動をfMRIで計測し、ついでに血液の酸素化と流れの変化を評価する

 

みたいな感じで、それぞれの不安のレベルをチェックしたんだそうな。そこでどんな違いが認められたのかと言いますと、

 

  • 不安のレベルが高い人は、不安のレベルが低い人に比べて、呼吸の変化を察知する能力が低く、自分の体の状態を認識する能力も低かった
  • 不安を抱いた人は、呼吸の変化に気づく能力が実際に低下しやすい
  • 不安のせいで呼吸が速くなったり荒くなったことに気づけないと、その後で頭がぼーっとするなど、さらなる症状が出やすくなる

 

って感じだったそうな。事前の予想どおり、「不安を感じやすい人ほど呼吸に気づけない」って傾向があったみたいですね。

 

 

研究チームいわく、

 

このような知識を持っているだけでも、いくつかのことが明確になるだろう。不安を感じているとき、私たちは知らないうちに体の症状から『チューンアウト』している可能性がある。

 

この情報をもとに、人々が自分の体をよりよく理解し、不安がさらに不安を募らせるという負のサイクルを断ち切りやすくなるだろう。

 

ってことでして、不安を抱えている人は「まず自分の呼吸をより正確に認識するぞ!」ってのを意識するだけでも違ってくるかもしれません。私も不安になりがちなんで、これは意識しよう……。

 

 

 

勉強の前には筋トレしといたほうがいいんじゃないか説

運動が脳に良い!ってのはくどいほど言ってますが、近ごろ見たデータ(R)は「1回の筋トレでも長期記憶があがるかもだぞ!」って結論になってておもしろかったです。有酸素運動で記憶力が高まるのはよく知られていますけど、筋トレの効果についてはあまり知られてないからありがたいですね。

 

 

具体的にどんな調査だったかといいますと、

 

  1. 参加者に数枚の写真を見てもらう(「記憶してください」とは指示しない)

  2. その後、半数の参加者に足の筋トレ(レッグエクステンション)を50回やってもらう。残りの半数は筋トレはしない

 

みたいな感じだったそうな。そのうえで2日後に記憶テストをしたところ、

 

  • 運動していない参加者で写真正しく認識したのは50%だったのに対して、筋トレをしたグループは60%だった

 

ってことで、これがどこまで実際の暮らしに影響をおよぼすかはわからないものの、足の筋トレを1回しただけで記憶力があがるってのは、なかなかすごいもんですな。

 

 

なんでこういう結果が出たのかはまだ謎が多いんですけど、いまんとこの推測としては、

 

  • 運動をすることで人間は高揚した状態になり、そのおかげで記憶(特に感情的な記憶)が定着しやすくなるから?

 

ぐらいに考えられてます。個人的にも、運動後に書いた原稿とかはよく覚えてることが多いんで、そこらへんもわかる気がしますなぁ。

 

 

ってことで、今後なんか勉強したいときは、その前にスクワットを50回ぐらいやっとくと良いことがあるかもしれません。ではまたー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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