今週半ばの小ネタ:ポリフェノールで脳の劣化が防げる? フラボノイドでアレルギーがやわらぐ? プロバイオティクスで人生のストレスは減る?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ポリフェノールって脳の劣化を守ってくれるの?
ポリフェノールの重要性はつとに知られるところ。ポリフェノールは腸にもいいしアンチエイジングにも有効だしで、ぜひ積極的に摂取していただきたいわけです。
でもって、新しい叙述的レビュー(R)では、ポリフェノールの神経保護作用に関するエビデンスを要約してくれてて勉強になりました。要するに、ポリフェノールは脳の働きに良いメリットがあるのかどうかをまとめてくれたんですね。ポリフェノールが体に良いのは間違いないものの、脳を守る働きについてはまだ謎も多いんで、非常にありがたいっすな。
ここでは、カフェイン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェルラ酸、桂皮アルデヒドなど、合計16種類のポリフェノールが検討されてまして、以下のようなメリットが提示されております。
- 悪名高いタウタンパク質(アルツハイマーのリスク因子)のように、悪いタンパク質を減らしてくれる
- アポトーシス(細胞が死ぬ現象)が減る
- 生存シグナル伝達経路の改善
- 酸化ストレスおよび炎症の減少
- 神経栄養因子の増加(つまり、細胞の増殖および分化が改善する)
- 反応性アストロサイトおよびミクログリアの活性の減少
みたいになってます。わかりにくいところもありますが、要するにポリフェノールは脳のダメージをいろんな方向から守ってくれるってことで、あらためてポリフェノールを摂取するモチベーションが高まるわけです。
ただ、ここらへんの知見はちょっと判断が難しいところもありまして、
- ポリフェノールが脳に効くメカニズムのほとんどは、細胞培養または動物モデルなので、本当にヒトに良いのかはまだ未知数なとこも多い
- 研究によってポリフェノールの用量や期間、測定方法がバラバラなんで、まだ統一された見解が出しづらい
って感じなんですよね。個人的には、「まぁポリフェノールで脳を守れる可能性は高そうだよなー」と思ってますけど、そこまで信頼度が高い話でもないので、そこらへんは念頭に置いていただけると幸いです。
フラボノイドはアレルギー症状をやわらげてくれるの?
上に続いて、今度はフラボノイドのお話です。言わずとしれたポリフェノールの一種で、リンゴ、タマネギ、大豆など、いろんな食品にはいっております。
で、新しく出た系統的レビュー(R)では、「フラボノイドがアレルギー性鼻炎(花粉症)と喘息に効くのか?」ってあたりを調べてくれてまして、幼稚園のころからアレルギー性鼻炎に悩まされてきた私には、まことに気になってしまうわけです。
そもそも、フラボノイドってのは昔からアレルギーに効く可能性が指摘されてまして、アレルギーの原因となる免疫細胞(マスト細胞など)を抑制するんじゃない?とか言われてきたんですよ。ただし、フラボノイドを摂取することでアレルギー症状が改善されるかどうかは不明だったんで、今回のレビューは非常にありがたいっすね。
これは、15のRCTを対象とした系統的レビューで、いろんなアレルギー症状に対するフラボノイドの効果をチェック。試験期間は3日から24週間で、6歳から69歳までの合計990人の参加者を対象にしております。試験の対象になったアレルギーは、花粉症が10試験、喘息が3試験、アトピー性皮膚炎が2試験だったそうな。
また、ここで効果を調べたフラボノイドは、リンゴポリフェノール、イソクエルシトリン、ピクノジェノール、大豆イソフラボン、シリマリン、トマトエキス、パッションフルーツエキス、エシャロットエキスなど、かなりバリエーション豊かなラインナップになっております。すごいですねぇ。
では、結論を見てみましょうー。
- アレルギー症状に対するフラボノイドのポジティブな効果は……
- アレルギー性鼻炎に関する10試験中9試験(エビデンスは低品質)、喘息に関する3試験中2試験(エビデンスは中品質)、アトピー性皮膚炎に関する2試験中1試験(エビデンスは中品質)で効果が確認された。
- さらに、4試験中1試験で、QOLの改善が認められた。
ということで、「おー、これは、私のようなアレルギー人間は、フラボノイドを積極的にとるべきなのでは!」と思わせるに十分な結果と言えるんじゃないでしょうか。
まー、そうは言っても。一部の研究ではフラボノイドの効果を単独で評価してるわけでもないので、正味な実力についてはさらに研究を見るしかないんだけど、今後もフラボノイドは取り入れていきたい所存です。
プロバイオティクスで人生のストレスは減るの?
プロバイオティクスもこのブログで頻出なサプリのひとつですが、新たなデータ(R)では、プロバイオティクスで脳のストレス反応が減るかどうかを調べてくれてていい感じでした。
プロバイオティクスとストレスの関係は昔から言われてまして、動物研究などでは、ビフィズス菌や乳酸菌などを服用したマウスのストレス反応が下がったって報告があるんですよ。ただし、プロバイオティクスがヒトのストレス反応を改善できるかどうかは明らかにされていないので、ここらへんを調べてくれたのは実にありがたいことです。
さて、今回の研究は、クロスオーバー・ランダム化比較試験で、健康な成人22人(20~28歳)を集めて「プロバイオティクスがストレス反応を改善するか?」をチェック。みんなにB. longum、L. helveticus、L. plantarumって菌を含むサプリを摂取してもらい、脳にストレスがかかる作業をしてもらいつつ、脳機能イメージングを用いてストレス関連の脳反応を測定した。
実験期間は4週間で、みんなの脳をプラセボと比べたところ、
- プロバイオティクスを飲んだグループは、プラセボと比較して、ストレステスト中の特定の脳反応が弱くなった
- たとえば、ストレスの反応に関連する2つの脳エリア(外側眼窩回と腹側帯状回)の活性化が低下した。しかし、ストレス反応に関与する他の脳領域(扁桃体、海馬、大脳辺縁系など)には影響がなかった。
って感じだったそうな。もちろん、めちゃくちゃ小規模な試験だし、これが本当に現実世界のストレスに適用できるのかも謎だしで、これをもって「プロバイオティクスでストレスが改善!」と言うのは不可能であります。
ただし、プロバイオティクスがストレス反応を弱めるかも?って可能性は示されましたんで、より大規模なテストの結果を待ちたいところですねー。