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ネガティブな感情をガッツリ改善するかもなトレーニング法「GMT」とは?


 

目標管理トレーニング(GMT)」でメンタルのコントロールが上手くなるよ!って新しい研究(R)が出ておりました。

 

 

GMTってのは、名前のとおり、ゴールを達成する能力を高めるための技法です。定期的にいまやってる行動を止めて、自分のパフォーマンスを監視して、段階的なアプローチで問題を解決していくことを特徴としております。

 

 

ざっくりどんなことをやるのかと言いますと、GMTは5つのステップに分かれていて、以下のようにひとつずつ行っていきます。

 

 

  • 第1段階「止まって考える」:参加者には「GMTでは、いまの状況を理解して評価するのが大事だよー」ってのが教えられます。自分の状況を把握できれば、いまの自分の問題点もわかりやすくなるし、それにもとづいて行動を変えていく方法を考えることもできますからね。GMTではかなり重要なステップで、定期的に作業を止めて、「いま自分はどんな状況だ?問題は?」みたいに考え直す癖をつけるのが大事。

 

  • 第2段階 「定義する」:特定のゴールを決めて、そこに向かうためにはどんな課題をクリアするのかを考えます。第1段階で見つけた自分の問題点、改善点などを使い、具体的な目標を決めるわけですね。

 

  • 第3段階「リスト作り」:第2段階で決めた目標を細かなステップに分解して、実際に行う行動のリストを作ります。「ダイエットをする」みたいに大きな目標だとどうしていいかワケがわからんですが、「体重を測る」「カロリーを計算」みたいに細かいステップに分けていけばモチベーションも上がるし、「どのステップに問題があったか?」もわかりやすいですからね。

 

  • 第4段階「おぼえる」:ゴールと細かいステップを記憶して、実際に行動していきます。目標までのステップが多すぎると実行が難しくなるんで、ここでは自分が記憶できるレベルに抑えておくのが吉。

 

  • 第5段階「チェックする」:最後に、「実際に行った結果がどれぐらいうまくいったか?」を考えます。ここで問題がわかったら、そこを改善して最初からまたはじめます。

 

 

ということで、こうして見てみると、GMTの考え方は、一般の仕事でも使えそうな基本スキルをしっかり鍛えていく感じになってますね。病後のリハビリなどで使われることが多い手法ですけど、普通にスキルアップのガイドラインとしても使えそうであります。

 

 

で、新しいデータはオスロ大学などによるもので、軽度または中等度の大鬱病性障害の診断を受け、日常生活の働きが難しくなってる18~60歳の男女60人が対象。まずはじめに、研究チームはこんなことを言っておられます。 

 

感情のコントロールと認知機能の障害は、鬱病によく見られる問題だが、これらのプロセスは、いままでの治療法では満足に対処ができない。

 

現在、鬱病は世界的な障害・疾病負担の主要な原因であるため、いままでの治療法を改善する可能性を探る必要がある。そのために、認知機能などの根本的な要因を改善とする新しい手法を試すことにした。

 

鬱になるとメンタルに負担があるのはもちろん、それだけでなく、記憶、情報の処理スピード、実行機能の問題など、いろんな認知のトラブルが出てしまうのは有名な話。しかし、これまでの研究によると、認知の機能を改善することで、鬱の重症度を改善できる可能性が示されてまして、「目標管理トレーニング(GMT)」が良いのでは?と考えたんですな。

 

 

実験では、参加者の半数にGMTを受けるようランダムに割り当てまて、上記のようなトレーニングを、1回2時間ずつ9回ほど行うように指示したらしい。でもって、すべての参加者のメンタルを、トレーニング前後と6ヵ月後にチェックしたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 時間が経過していくとともに、ネガティブな思考が頭の中をグルグルと回ってしまう現象が有意に減少した。

 

  • 両グループも時間の経過とともにメンタルが改善したが、GMTをやったグループのみが、感情的の明瞭さ(つまり、個人が経験している感情をどの程度まで識別できるか?ってポイント)が改善していた。

 

ということで、GMTを行った人たちは、より自分の感情をくわしく理解できるようになったんだそうな。言わずもがな、感情の識別はメンタル改善の基礎ですから、これは良い成果と言っていいんじゃないでしょうか。

 

 

ちなみに、「感情の明瞭さの改善」は、トレーニングが終わってから6ヶ月後にも見られたそうで、その効果はわりと長続きするらしい。いったん基礎的な認知スキルを習慣化しちゃえば、自動的に使えるようになるのかもしれんですな。

 

 

研究チームいわく、

 

GMTの中核をなす要素には、マインドフルネス技術の実践や、メタ認知的な「ストップ&シンク」戦略の適用、実生活におけるパフォーマンスのモニタリングなどがある。これらの要素は、GMTによって感情コントロールの長期的な変化をもたらすために不可欠であったことが示唆される。

 

とのこと。GMTにはマインドフルネスやメタ認知などの能力を高める要素があり、これが感情のコントロールに効くのではないか?って感じですね。もちろん、サンプル数が少ない研究なので、もうちょい大規模な研究が行われないとなんとも言えんのですが、今回の研究は「基礎的なスキルが大事!」ってのをあらためて痛感させてくれますね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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