牛乳でがんになるってホント?#2 女性編
「牛乳でがんになるってホント?」の続き。今回は牛乳が女性にあたえる影響について見ていきましょう。
#1 乳がんと牛乳
よく聞くのが「牛乳を飲むと乳がんになる!」って説です。これのネタ元は2005年の論文(1)で、ハーバード大のダマサンブ博士が40カ国のがん発症率と食品の変化をくらべたら、肉や乳製品の消費が多い女性ほど乳がんの発生率が高かったんだそうな。
博士によれば、近代の牛乳には高濃度の女性ホルモンが入っており、がん発症の原因になっている可能性が高いんだとか。恐らく、牛乳と乳がんの危険性を煽るような本は、だいたいこのデータを使ってるはず。
が、この研究については、その後で「都合のいいデータだけ使ってない?」って疑惑が他の研究者から出まして、いまはさほど相手にされてないのが現状かと思います。具体的なデータとしては、
- 乳がんの発症を調べた26件のデータを精査したところ、乳製品と乳がんの間には影響が見られなかった。ちなみいん、大量の野菜と魚は乳がんの発生率を大きく下げる。(2014年,1)
- 275名の女性に乳がんと牛乳の関係を調査したところ、乳製品の消費量が多くなるほど発症率は86%も下がった。(2013年,2)
- 約9,000人の女性の健康データを統計処理したところ、10代のころに牛乳をたくさん飲んでいた女性は乳がんの発症率が10%下がった。(2013年,3)
といったところ。科学的な信頼性としては2014年のデータが高めで、残りの2つはそこそこな感じであります。
いずれにせよ、全体的には「牛乳は乳がんの予防になる!」ってデータのほうが多く、まぁ問題はなさそうであります。また、多くのデータは大量の野菜とフルーツ、魚を食べる「地中海式」の食事を予防食としてオススメしております。やった野菜はがん予防に必須。
#2 子宮がんと牛乳
続いて子宮がんについて。ここ数年、日本でも増加傾向にある病気ですね。
子宮がんに関しては、正直いって牛乳の旗色は悪い感じでして、たとえば、
- 21件の研究データをまとめてメタ解析したところ、乳製品の量と子宮がんの発症率には関係がみられた。特に乳糖のリスクが高い。(2005年,4)
- 24件の研究データを精査した系統的レビュー。肉、乳脂肪、硝酸塩、ビタミンCなどは子宮がんの増加と関係があった。(2014年,5)
といったところ。ただし、よくデータを見ると明確な結論を出すのは難しくて、
- 乳脂肪で子宮がんが増えないとするデータも意外と多い
- 牛乳とチーズはヤバいがヨーグルトはOKってデータもある
のように結果に食い違いが出てるんですよ。総合的にみれば子宮がんへの悪影響を示したデータのほうが多いんで、この問題についてはイエローカードかと思います。
#3 生理不順と牛乳
がんとは無関係ですが、ついでに牛乳と生理の関係についてもまとめときます。この問題については研究例がとても少なくて、
- 5名の女性に1日500mlの牛乳を21日間つづけて飲んでもらったところ、4人には何の影響もなし。1人だけ生理不順が起きた。(2010年,6)
- 32名の女性に1日55gの粉ミルクを飲んでもらったが、21日が過ぎても何の影響もなかった。(2014年,7)
といった例があるぐらい。データ数が少なすぎて断定できない状況であります。
ただし、ここまでの調査データを見てますと、もともと女性はエストロゲンの量が多いので、牛乳ぐらいのホルモンでは影響がないという意見のほうが多め。いまのところ生理不順については心配しなくてよさそうではあります。
まとめ
以上の話をまとめると、
- 乳がんについては心配無用!
- 子宮がんの可能性はちょっとあるかも
- 生理不順の心配はおそらくない
といったところ。「リスクが増えるのは嫌!」という方は、牛乳を止めて野菜とフルーツの量を増やすほうが良いでしょう。
いっぽうで「どうしても乳製品が好き!」ならば、1日にグラス2杯ぐらいにしとくのが無難かと思います。どうぞよしなに。