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日常としての奴隷制度 |「それでも夜は明ける」感想


それでも夜は明ける」を見ました。



1800年代のアメリカで自由黒人が誘拐され、その後12年間も奴隷として働かされる話。奴隷制をあつかった映画はいろいろありますが、「ジャンゴ」のようなカタルシスとはもちろん無縁だし、「マンディンゴ」のように古典的な悲劇の要素もないので、シンプルな感動を求めると肩すかしを食うかもしれません。


そのかわりに本作がフォーカスするのは、差別が生活の隅々まで浸透しきった末の「日常化した奴隷制度」の光景。主従の役割があたえられるだけで、人間は簡単に他人を虐待するようになることを証明したスタンフォード監獄実験よろしく、いったんシステム化された差別が動き出すと、差別する白人側も差別される黒人側も、どうしていいかわからなくなってしまう様子が延々と描かれていきます。これは怖い。


その典型例ともいえるのが、本作でも最強のインパクトを残す中盤の首吊りシーン。いまにも死にそうな主人公の後ろで、いつものように奴隷たちが農作業を行い、子どもたちが楽しげに遊ぶ様子には、日常としての奴隷制度が象徴されていて衝撃を受けました。


ラストの家族との再開も単純に感動的なシーンでまとめず、主人公が「自分がシステムの外に出ただけで何も解決していない」という呪いを背負ったことを示して終わるあたりも苦い。ともすれば「白人サイテー!黒人かわいそう!」という構図におさまりがちだった旧来の作品には、あまりなかった視点かと思います。


そんなわけで、わかりやすい感動もカタルシスもないうえに邦題もめっさダサいですが、実は「巨大なシステムに組み込まれたら自分だってどうなるかわからない」という非常に現代的な恐怖をあつかった一作。オススメです。


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41才のプロパレオダイエッター/編集者/ライター/NASM®公認パーソナルトレーナー。国内外の学術論文を読み漁るのが好きな人。パレオダイエットの本を書きました。