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他人の心を読む能力と自分の幸福度が激増する「インナーパーソナリティ訓練法」

Innner

 

汝自身を知れ! 

昔に「共感力が高いと年収も高い傾向があるよー」なんて話を書いたり、「意志力が強い人は共感力が高い」なんてデータを紹介したりしました。共感力の功罪についてはまだ賛否があるものの、とりあえず対人関係において他人の気持ちがわかる能力が大事なのは間違いないでしょう。

 

 

 ってところで新しい論文(1)では、「共感力を高めるにはまず汝自身を知れ!」って主張が展開されてておもしろいです。

 

 

これはマックス・プランク研究所の実験で、141人の男女を対象にしたもの。全員に対して「自分のパーソナリティについてもっとよく考えてみよう」っていうトレーニングコースを受講してもらったんだそうな。いいですなぁ。

 



インナーパーソナリティトレーニングの方法

その期間は3カ月で、おおよそ以下のようなステップで勧められております。

 

 

1.みんなの共感レベルを計る

初対面の人が過去の体験談を話すのを聞いて、話し手がどんな意図を持っていたか、なにを考えながら話していたか、話し手が伝えたい感情はどのようなものか?を考えてもらう。

 

2.自分のインナーパーソナリティを分類

自分の内側にいる(と思われる)複数のパーソナリティをリストアップしていく。たとえば「優しい自分」「子どものような自分」「傷つきやすい自分」みたいな感じ。自分で「これは間違いない!」という確信があれば、好きなだけパーソナリティを付け足してもOK。あとで修正してもOK。

 

3.1日30分の思考観察瞑想

1日30分ずつだけ、自分の思考を客観的に見つめるタイプの瞑想を行う。例えば「おれはダメだなー」みたいな思考がわいたら、それを以下の分類法に当てはめていけばOK。

 

  • その思考は自分に関することか?他人に関することか?
  • その思考は未来のことか?過去のことか?
  • その思考はポジティブか?ネガティブか?

 

思考がわくたびに、上の6つのどれかにひたすら仕分けしていくだけ。いちいち思考を細かく分析したりしないのがコツ。

 

4.週に合計2時間のインナートーク

誰かとペアを組んで、いっぽうが話し手、もういっぽうが聞き手になって、15〜30分ほど会話する。その際に話し手は、自分が分類したインナーパーソナリティのどれかひとつ選び、その視点から昨日起きた出来事を話す。聞き手は、話し手がどのようなパーソナリティの視点から会話をしているのかを推測する。

 

 

たとえば「傷つきやすい自分」視点だったら、コンビニの店員さんにヘンな目で見られたときは必要以上に「自分が間違ったかも…」と気に病むでしょうし、「子どもの自分」だったら「店員がヘンな顔してた!」で済むでしょうし、そんな感じでパーソナリティを切り替えてくわけですな。

 

 

ヒトの脳はいくつもの役割を持つキャラにわかれている

以上が実験のガイドラインですが、これは「内的家族システム療法」っていうセラピーの理論をベースにしております。要するに、ヒトの脳はいくつもの役割を持つキャラにわかれていて(インナーパーソナリティ)、それぞれに独自の心を持ってるんだ、みたいな考え方ですね。クルツバンのいう「人間の心はモジュールの集まりだ!」って説にちょっと近いですね。

 

 

ちなみに、この実験では、参加者は平均で11のインナーパーソナリティを思いついたとか。そのうち、だいたい44%はネガティブな性質で、56%がポジティブだったとのこと。なかでも多く登場したパーソナリティは、

 

  • 反抗者としての自分
  • 管理者としての自分
  • 喜ぶ自分
  • 内なる批判者としての自分
  • 傷つきやすい自分

 

の5つだったそうな。確かに誰でもこの5つは抱え込んでそうっすな。

 

 

インナーパーソナリティを分類するほど幸せになる

さて、3カ月後の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • トレーニングを受けたものは全体的に共感レベルがアップしていた
  • なかでも、自分のインナーパーソナリティをより多く分類できた人ほど、他人の心を読むのがうまくなっていた
  • さらに、自分のなかのネガティブなインナーパーソナリティを分類した人は、もっとも共感レベルが高まった

 

みたいな違いが出たんですね。他人の心を読む機能を「心の理論」などと呼びますが、インナーパーソナリティの区別と心の理論の向上には相関があったわけですな。うーん、おもしろい。

 

 

ついでに、インナーパーソナリティの分類がうまかった人ほど、あとで幸福度が高くなる傾向もみられたようで、なにやら良いことづくめだった模様。なんでこういうメリットが出たかというと、

 

  1. 自分のなかのいろんなキャラを理解する
  2. ひとつの状況に対し、いろんなキャラの視点から観ることが可能になる
  3. ストレスフルな状況でもさまざまな解釈が可能となる
  4. ストレスに強くなる!

 

といったメカニズムが働くようになったかららしい。つまり、自分の内なるキャラを認識することで、感情のリアプレイザルがしやすくなったわけっすな。なるほどねぇ。

 

 

まとめ

この実験のトレーニング法だと、他人とペアを組んで対話をしなきゃいけないので少し大変ですけども、とりあえずは、1)自分のインナーパーソナリティのリスト化と、2)思考の観察瞑想ぐらいはセルフでやってみてもよさげですね。

 

 

個人的には、あらかじめ思考を6つのカテゴリーにわけておいて、瞑想中に浮かんだことを次々に仕分けしていくって手法は「使える!」と思いましたね。さっそく試してみよう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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