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「チームはデカければデカいほど成果が出るのか?」って問題を6千万件のデータ分析であきらかにしたぞ!という話

 

大きなことをなすにはチームワークが大事!ってのは当たり前の話で、ショーン・エーカーの「ビッグポテンシャル」なんかでも、共同作業の重要性が強調されておりました。

 

 

ただし、ここで問題になるのが「チームはデカければデカいほどいいのか?」ってポイントでしょう。人数が多ければそれだけ作業も分担できるんだから、当然ながら成果も出しやすくなりそうなもんです。

 

 

ってことで、そのへんの疑問について調べてくれた研究が近ごろ出まして、なかなかおもしろい結論を出してくれております。

 

 

これはシカゴ大学の研究(R)で、3つのデータベースから、チームワークに関する論文や特許の記録を集めまくったものです。参考までにデータベース名と件数を記録しておくと、

 

  • Web of Science=1950年代からの論文4,200万件(メタ分析をふくむ)
  • the United States Patent and Trademark Office=1976年からの特許情報500万件
  • GitHub=2011年からのソフトウエアプロジェクト1,600万件

 

って感じになってまして、過去にない規模のすごい調査だと申せましょう。ここからどんな風に研究を進めていったかというと、

 

  1. 論文の執筆や新発明にかかわった人たちの数を調べる
  2. それぞれの研究や発明が、どれぐらい先行事例をベースにしているかを調べる(つまり、論文や発明のオリジナリティを確認した)
  3. 2つのデータをくらべて、どの人数のときにオリジナリティある結果が生まれるのかをチェック

 

みたいになってます。こりゃあ骨の折れる研究ですねぇ。

 

 

その結果、チームの人数と成果にはハッキリしたパターンが確認されまして、

 

  • チームの数が少なければ少ないほど、創造性が高いアイデアが出る!

 

だったそうです。どうも10人よりは1人で動いたときのほうが、あきらかに新しい発見の数は多いんですよ。

 

 

ちなみに、「グループが大きいか小さいかはどこで判断するの?」ってとこが気になるかもですが、研究チームいわく、

 

「大きなチーム」と「小さなチーム」の定義は、対象となるグループのサイズで決まる。2人よりは1人、20人よりは10人、26人よりは25人のほうが斬新なアイデアは出やすい。

 

とのこと。スティーブ・ウォズニアックさんも「アイデア出しは絶対に1人でやったほうがいい!」と言ってますが、それがデータで裏打ちされた形ですな。

 

 

もちろん、これは科学の世界でも同じでして、

 

物理、心理学、数学、動物学など、どの分野のどのトピックにおいても、斬新な発見の3分の2は個人のアイデアから生まれている。共同作業のメンバーが増えるごとに、新奇なアイデアは出にくくなるのだろう。

 

とのこと。言われてみれば、近年では「大人数が集まってブレストをすると創造性は下がる!」って考え方が普通ですしねぇ。

 

 

 

もっとも、だからといって人数が多いグループが悪いってわけじゃありませんで、以下のようなメリットも確認されてたりします。

 

  • 大きなチームは、既存のエビデンスを固めたり、発展させるのには向いている!

 

ってことなんで、ざっくりまとめると、

 

  • アイデア出しはあくまで個々人が行う
  • 従来の路線を補強したいときは大人数で行う

 

みたいな切り分けが大事ってことになるんでしょうな。おもしろいもんですねぇ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。