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今週末の小ネタ:フェイスブックで寿命が伸びる? 断食と癌の関係、寒いと人恋しくなる?問題

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

Facebookで友達が多い人ほど寿命が長い?

SNSは善玉か悪玉か?って議論は今も続いてますが、いまんとこ大体のデータをまとめると、

 

  • SNSによって他人との比較が増えると、メンタルは病みやすくなる

  • SNSを社会的なつながりを維持するために使うと、メンタルは健全になる

 

といったことが言えそうであります。SNSをマウントの道具に使うとヤバいが、普通に友人とうまく付き合うのに使うなら有用なんだってことで、実に穏当な結論じゃないかと。

 

 

で、新しい研究(R)では、さらに「Facebookで寿命が伸びる」って結論になってておもしろかったです。具体的にどんな調査だったかというと、

 

  1. 1945年から1989年の間に生まれたFacebookユーザー1200万人をピックアップ

  2. みんながどのようにFacebookを使っているかを調べる

  3. 6ヶ月の調査期間で死亡した人たちのデータと比べる

 

みたいになってます。Facebookの使い方と死亡率に関係性があるんじゃないか?と、研究チームは考えたわけっすね。

 

 

その結果は思ったとおりでして、

 

  • Facebookをやっている人の方が、やっていない人よりも長生きしていた(死亡率が12%違う)

  • Facebookで大規模なソーシャルネットワークを持つ人々は、下位10%の人々よりも長生きしていた
  • Facebookで友人との写真を多く投稿している人ほど長生きだった
  • ウォールポストやメッセージの書き込みなどが多さは死亡率と無関係だったが、適度な書き込み量は死亡率の低さと相関していた

 

みたいな感じだったらしい。オンライン上でいくら「いいね!」をつけたりコメントをつけたりしても意味はないけど、友人と適度に交流してるなら健康にはいいんじゃないか、と。

 

 

もちろん観察研究なんでどこまで因果関係を認めるべきかはわからんですが、とりあえず、

 

  • もともとリアルで友達とたくさん交流してる人が、その関係性をFacebookで再現してるぶんには寿命が延びそう

 

ぐらいのことは言えるかもですね。逆に言えば、見知らぬフォロワーをたくさん集めてオンラインだけでの付き合いをしてたら意味がないってことで、「そりゃそうだろうなー」みたいな結論じゃないでしょうか。

 

 

 

断食は癌に効くのか?問題

不老長寿メソッド」でもいろんなプチ断食法を紹介してますけど、新しいデータ(R)は「断食って癌に意味あるの?」ってとこを調べてくれておりました。過去に行われた断食と癌に関するデータをまとめたレビューになってて、いまんとこどれぐらいの証拠があるかを見てくれております。

 

 

ここでピックアップされてる知見をざっとまとめると、こんな感じです。

 

  • 断食はインスリンとIGF-1を低下させ、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモン、カテコールアミン、ケトン体などのレベルを上昇させる

 

  • 以上のような代謝変化は、アポトーシス、オートファジー、DNA修復、ゲノムの安定性、発がん物質の解毒、酸化ストレスの減少に関連するため、もしかしたら抗癌効果をもたらすかもしれない

 

  • 化学療法と断食を組み合わせたRCTや動物実験では、断食により症状の進行を減らしたとの報告もあるが、これはおそらく毒性を減少させ、化学療法の有効性を高めたせいかもしれない

 

  • 以上の予備的証拠は有望ではあるものの、特定の癌にどの代謝経路が関与しているのかや、どのような要因が断食の有効性を高めるのかもよくわからないので、治療法として積極的におすすめするわけではない

 

ということで、もちろん現段階で治療法として推奨するわけではないものの、今後の研究によっては見込みが出てくるかもしんないっすねー。

 

 

 

人間は本当に「寒い」と人恋しくなるのか?問題

心理学では「孤独は寒い!」みたいな話が言われてきたわけです。比喩で寒いんじゃなくて、孤独感を募らせた人は、体感として冷たさや寒さを感じやすいというんですな。例えば、孤独感が強い人ほど「体を温めるために入浴の回数が多くなる」なんて報告があったりするんですよ。

 

 

ただ、この説がどこまで正しいかはまだ謎だったんですが、新たなテスト(R)では、「感情と体温はどこまで関係があるか?」ってのを調べてくれておりました。

 

 

これはニューヨーク州立大学などの研究で、78 人の参加者に以下の実験をしてます。

 

  1. バッテリー機器を参加者の腰に装着してもらい、1週間過ごしてもらう

  2. 参加者の半分には機器から軽い熱を送り、残り半分には熱を送らない

  3. 1週間のあいだに「誰かに会ったり連絡をしたいと思いますか?」と何回か尋ねる

  4. 8℃〜28℃の範囲で気温が異なる日を選び、何回か実験をくり返す

 

ってことで、バッテリー機器による暖かさの変化によって、参加者の「社交したい!」と思う気持ちに変化が出るかを調べたわけですね。

 

 

すると、やはり両者には関係がありまして、

 

  • バッテリー機器のスイッチが入っておらず「寒い日」には、参加者が「誰かに会いたい」と答える確率が高くなった

  • 「寒い日」にバッテリー機器のスイッチをオンにすると、参加者の社交欲は普通のレベルにもどった

 

って感じだったそうな。まぁこの手の試験は後でくつがえることも多いので注意は必要ながら、とりあえず「孤独感に困ったら体を温めてみる」って手法を試すぐらいの価値はありそうっすね。

 

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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