このブログを検索




今週半ばの小ネタ:減量でどこまで中性脂肪は下がる?幸福になれない思考法とは?野菜と果物をもっと食べるには?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

体重が1kg減るごとにコレステロールはどれぐらい改善するの?のメタ分析

コレステロールや中性脂肪が高い人は減量が一番!」ということで、

 

  • それじゃあ具体的に、太りぎみな人が体重を減らしてら、どれぐらいコテステロールの数値は改善するの?

 

ってのを調べたメタ分析(R)が出ておりました。ざっとどんな調査かと言いますと、

 

  • BMIが25以上で18歳以上の男女32,496人を対象にした73のRCTをピックアップ
  • 食事と運動の改善、薬物療法、または肥満手術によって減量した人たちの血中脂質を調べる
  • 体重の減り方と血中脂質(コレステロールと中性脂肪)の関係を割り出す

 

みたいになってます。それでどんな変化が見られたかたと言いますと、

 

  • ライフスタイルを改善すると、体重が1kg減るごとに……

    • 中性脂肪が4.0mg/dL減
    • LDLが1.28mg/dL減
    • HDLが0.46mg/dL増

 

  • 薬物を使うと、体重が1kg減るごとに……

    • 中性脂肪が1.25mg/dL減
    • LDLが1.67mg/dL減
    • HDLが0.37mg/dL増

 

  • 肥満手術を行うと、体重が1kg減るごとに……

    • 中性脂肪が2.47mg/dL減
    • LDLが0.33mg/dL減
    • HDLが0.42mg/dL増

 

みたいな感じだったそうな(全て12ヶ月の時点での数値)。ちなみに、サブグループ分析では、

 

  • 低脂肪食はすべての脂質を改善する
  • 低糖質食は中性脂肪とHDLだけ改善する
  • 運動だけを行っても目立った効果は得られないっぽい

 

って傾向も出てまして、ここらへんはちょっとおもしろいですね。やっぱ運動よりは食事の改善が先ってことでしょうか。

 

 

 

幸福は遺伝だ!と思うほど幸福から遠ざかっちゃう問題

ヒトの幸福は50%が遺伝で決まる」などとよく言いまして、生まれつきの素質によって、日々のポジティブな感情がかなり左右されるのは有名な話。が、新しい研究(R)は、

 

  • そりゃそうかもしれないけど「幸福は遺伝だ!」と思いすぎるのも良くないよねー

 

って結論になってておもしろかったです。これはソウル大学などの研究で、4つの実験を通して「幸福に対する考え方と実際の幸福レベルの違い」みたいなところをチェックしてくれております。

 

 

たとえば、3つめの実験では401人の男女を集め、「幸福はどれぐらい遺伝で決まると思っているか?生まれつきの素質で決まると思っているか?」といったポイントを調査。その上でみんなの普段の活動を調べたら、

 

  • 遺伝を重視する人ほど、日常で自分の幸福感を増やすようなアクティビティをしない傾向があった

 

って結果が見られたそうな。確かに、「どうせ何をやっても遺伝なんでしょ」と思ってたら、あえて積極的な行動を起こそうとは思いませんもんね。

 

 

さらに4つめの研究では、452人の男女を集めて、

 

  1. 幸福は遺伝で決まるよ!と教える
  2. 幸福は後からの努力で決まるよ!と教える
  3. 幸福については何も伝えない

 

って3つのグループに分けたところ、「幸福は遺伝で決まるよ!」と教えられたグループは、やはり積極的な行動を取るモチベーションが低下したとのこと。つまり、幸福への考え方と行動の積極性には因果関係があるんだってことですね。

 

 

まー、この心理傾向が実生活にどこまで影響してるかというと謎ですけど、あんま遺伝を強調しすぎるのもあれかもしんないっすね。

 

 

 

野菜や果物をたくさん食べたいならまず知識が必要?

不老長寿メソッド」にも「とにかく野菜を食べよう!」ってポイントを強調してるわけですが、新たなデータ(R)は、

 

  • そもそも野菜とか果物の知識がないと話にならん!(かも)

 

みたいな結論になってました。言い換えれば、「満足な栄養をとるためには野菜や果物はこれぐらい食べなきゃダメだよー」みたいな知識がない人ほど、野菜や果物を食べない傾向があるんだそうな。

 

 

これはオーストラリアで行われた健康調査のデータを使ったもので、11,247人の男女を対象に、

 

  • 健康を保つためにどれぐらいの野菜と果物を取るべきか知ってるか?
  • 実際に普段の食事でどれぐらい野菜と果物と食べてるか?

 

って2つの要素を調べたうえで、両者の関係性を見たんだそうな。そこでどんな傾向が確認されたかと言いますと、

 

  • 野菜と果物の知識がある人じょどちゃんと健康的な食事をして、学歴があり、お金持ちで、運動もよくしていた
  • ただし、野菜と果物の知識とBMIには相関がなかった
  • 果物の知識がある人は、経済状況が良好で学歴もある傾向があったが、BMIや運動量とは相関しなかった
  • 野菜の知識がある人は、経済状況が良好で心疾患が少ない傾向があったが、BMIや食事の摂取量とは相関しなかった

 

ということで、全体的に見れば知識が少ない人ほど実際に野菜と果物を食べず、12年後の比較では1日94.6gの差が出たらしい。そこそこの違いっすな。

 

 

もちろん、この現象については、たんに「学歴と金がある人は野菜と果物を食べる余裕があるし、ちゃんと知識も学ぶのでは?」って可能性もありそうですが、いちおう研究チームは「野菜と果物の知識を学ぶのが一番大事なのでは?」と推測しておられます。まぁ学んでおいて損はないですもんね。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM