一流の政治戦略家「本当に賢くなりたきゃこの本を読むべきでしょ!」
野暮用で「教育と政治的優先順位に関する若干の考察」みたいな論文(R)を読んでおりました。タイトルどおり「政府は教育システムをどう設計するか?」みたいな問題を考えた内容で、著者のドミニク・カミングスさんは、ボリス・ジョンソン元首相の上級顧問を務めた才人らしい。
で、その内容は多岐にわたるんですけど、個人的に気になったポイントとしては「『オデュッセイア』的な哲学が必要だ!」ってところがあります。これがどういうことかと言いますと、
- a) 数学と自然科学、b) 社会科学、c) 人文・芸術に関する知識を大まかにつかみ、統合的に思考しようぜ!
みたいな考え方です。現代社会はどんどん複雑になってるから、いろんな知識を広く浅く知っておいたほうがいいんじゃない?って提案ですね。
カミングス先生いわく、
オデュッセイア的な知識のカリキュラムは、各要素の深い専門的理解を必要とせずに、複数にわたる科目をナビゲートするための基礎と地図を与えるものだ。原題を生きる10代の若者、学生、大人たちにとって、我々が直面する現実の問題を理解し、有効な行動を取れるようになるには、「オデュッセイア的」な教育が必要だろう。
とのこと。もちろん、これは専門知の重要性を否定する話ではないものの、「RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる」と似たような主張でして、個人的にも非常に賛成できるところです。
でもって、カミングス先生は、論文の末尾に「オデュッセイア的な知識に欠かせない読書リスト」をつけてくれていて、これが非常にためになりました。これは、カミングス先生が「この知識は押さえておくべきだ!」と考える分野の推奨文献が示されてまして、ざっと見たところ、確かに一読の価値があるものばかり並んでるんですよ。
ということで、オデュッセイア的な知識を学べるブックリストを、以下に紹介しておきます(邦訳が出てるもののみ)。まー、このリストは2013年に作られたものなので、その後に出た本でも良いものはあると思いますが、いろんな知識を備えたジェネラリストを目指すなら、どの本も押さえておいて損はないんじゃないでしょうか。
数学
- 数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方
- ある数学者の生涯と弁明
- 何のための数学か―数学本来の姿を求めて
- 数は科学の言葉
- シンメトリーの地図帳
- いかにして問題をとくか
- xはたの(も)しい: 魚から無限に至る、数学再発見の旅
- 関数とグラフ (ゲルファント先生の学校に行かずにわかる数学 1)
- 座標 (ゲルファント先生の学校に行くずにわかる数学 2)
- 数学 (〈1冊でわかる〉シリーズ)
- ゲーデルの定理――利用と誤用の不完全ガイド
- 賢く決めるリスク思考:ビジネス・投資から、恋愛・健康・買い物まで
コンピュータ・サイエンス
物理
- ファインマン物理学
- ファインマン流 物理がわかるコツ
- 今この世界を生きているあなたのためのサイエンス 1
- 今この世界を生きているあなたのためのサイエンス 2
- スタンフォード物理学再入門
- Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ
- 世界でもっとも美しい10の物理方程式
- 素粒子物理学をつくった人びと〈上〉
- 素粒子物理学をつくった人びと〈下〉
- 量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯
- デモクリトスと量子計算
遺伝
- 人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上)
- 人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (中)
- 人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下)
- 意識をめぐる冒険
- ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?
- 専門家の政治予測――どれだけ当たるか? どうしたら当てられるか?
- 決断の法則 ――人はどのようにして意思決定するのか?
- 遺伝子医療革命 ゲノム科学がわたしたちを変える
経済学
複雑系
- クォークとジャガー―たゆみなく進化する複雑系
- 知の挑戦
- 新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
- 複雑系―生命現象から政治、経済までを統合する知の革命
- シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」
戦争と国際関係
ってことで、カミングス先生の推奨図書は以上です。こうして見ると、私が学生だったころに流行った書籍が多くて懐かしさを覚えました。なかには専門的なタイトルも出てますが、基本的には、そこまで難易度が高くない本が多いので、気になったものから手にとってみたらよろしいのではないかと。